2022.11.24
不動産の売却
不動産売却時に課税される税金の計算方法を徹底解説!!【シミュレーション例あり】
不動産を売却するときには、多くの種類の税金が課税されることはご存知でしょうか。
印紙税、譲渡所得税、復興特別所得税、住民税、登録免許税、消費税などが課税されます。
不動産売却するときには、こんなにも多くの税金が関係してきます。
不動産売却時に課税される税金についてすべてを把握することは困難ですが、税金の概要を知っておかないと損をしてしまうことがあります。
本記事では、不動産売却時に課税される税金、売却時に課税される税金の減税措置、各税金のシミュレーションを紹介していきます。
この記事を読み終わったときには、不動産売却時にどのような税金が課税されるのか把握できることでしょう。
不動産売却時には多くの種類の税金が課税される
不動産売却時には多くの種類の税金が課税されます。
まずは不動産売却時にどのような税金が課税されるのか紹介していきます。
印紙税
印紙税は課税文書作成時に課税される税金です。
不動産売却のときに作成する課税文書は不動産売買契約書が該当します。
印紙税は売買代金により、次の表のような金額が課税されます。
印紙税額一覧(軽減税適用後)
売買金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円以下 | 0円(非課税) |
1万円を超え50万円以下 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下 | 6万円 |
5億円を超え10億円以下 | 16万円 |
1億円を超え50億円以下 | 32万円 |
50億円超え | 48万円 |
※軽減税は2024年3月末まで適用予定
印紙税は収入印紙を課税文書に貼ることで納税します。
収入印紙は郵便局や法務局で購入することが可能です。
消費税
消費税は、物品やサービスの消費に対して課税される税金です。
不動産売却で消費税が課税されるのは、不動産仲介会社に支払う仲介手数料や司法書士に支払う司法書士報酬、建物を解体するときの解体費用などがあります。
消費税の税額は、原則、購入した物品価格やサービス価格の10%です。
例えば、不動産仲介会社へ仲介手数料として税抜き100万円を支払う場合
100万円(仲介手数料) × 10%(税率) = 10万円(消費税)課税されます。
そのため、税抜き仲介手数料100万円に10万円の消費税を上乗せした、合計110万円を支払う必要があります。
譲渡所得税(復興特別所得税・住民税)
譲渡所得税とは、不動産を売却したときに譲渡所得が出た場合、譲渡所得に対して課税される税金です。
譲渡所得とは不動産を売却したときに出た利益のことを言います。
譲渡所得税が課税される場合、同時に復興特別所得税と住民税も納税しなければなりません。
なお、復興特別所得税は2013年1月1日~2037年12月31日までの間に譲渡所得税が課税される時限的な税金です。
譲渡所得税を計算するときには、まず譲渡所得を計算する必要があります。
譲渡所得の計算方法は次のとおりです。
①譲渡所得 = ②不動産売却金額 – ③売却する不動産を購入したときの取得費 – ④不動産売却にかかった諸費用
例えば、②不動産を5,000万円で売却、③売却する不動産を購入した金額3,000万円、購入諸費用200万円、④売却するのにかかった諸費用150万円とした場合
②5,000万円 – ③(3,000万円 + 200万円) – ④150万円 = ①1,650万円(譲渡所得)となります。
譲渡所得を計算したのち、譲渡所得税の税率を掛けます。
譲渡所得税の税率は、売却する不動産を何年所有していたかにより変わります。
具体的には次のように変わります。
譲渡所得の税率
・短期譲渡所得(5年以下)は税率39.63%(復興特別所得税と住民税を含む)
・長期譲渡所得(5年超え)は税率20.315%(復興特別所得税と住民税を含む)
譲渡所得税の計算方法は次のとおりです。
①譲渡所得税 = ②譲渡所得 × ③税率
先ほど計算したケースをもとに短期譲渡所得の譲渡所得税を計算してみましょう。
②譲渡所得は1,650万円、③短期譲渡所得の税率は39.63%
②1,650万円 × ③39.63% = ①約653万円(譲渡所得税・復興特別所得税・住民税合計税額)
登録免許税
登録免許税は、登記をするときに課税される税金です。
不動産売却をするときに登録免許税が課税されるケースは、抵当権抹消をするときです。
抵当権抹消するときには、抹消1件ごとに1,000円の登録免許税が課税されます。
例えば、住宅に付いた抵当権を1件抹消、土地に付いた抵当権を1件抹消、合計2件の抵当権を抹消する場合、登録免許税が2,000円が課税されます。
固定資産税の清算
固定資産税は不動産を保有している事に対して課税される税金のため、不動産売却で課税される税金ではありません。
しかし、不動産売却のときに関わる税金のため、この項目で解説します。
固定資産税は1月1日現在の不動産所有者に対して1年分課税されます。
そのため、不動産取引を年の途中で行うと、買主の所有する期間も売主が固定資産税を負担するという状態になってしまいます。
この状態を解消するため、不動産の引き渡しを行うときには固定資産税の清算を行います。
例えば、固定資産税10万円課税される不動産の引き渡しを10月10日に行った場合(1月1日を清算基準とします)
10万円 × 282日(1月1日から10月9日までの日数) ÷ 365(1年) = 7万7,260円
このケースだと売主の固定資産税負担額は7万7,260円となります。
この場合、引き渡し日に買主から残りの2万2,740円を受け取り、固定資産税の清算をすることとなります。
譲渡所得税には減税措置がある
税金には減税措置が用意されていることが多く、売主が利用できる減税措置は譲渡所得税に関するものが用意されています。
ここからは譲渡所得税に関する減税措置を紹介していきます。
居住用不動産の3,000万円特別控除
居住用不動産の3,000万円特別控除とは、不動産売却で出た譲渡所得から3,000万円を控除することができる減税措置です。
自宅を売却するときにほとんどの売主が適用できる減税措置です。
ただし、条件は細かく規定されているため、適用要件を知っておく必要があります。
居住用不動産の3,000万円特別控除の適用要件は次のとおりです。
・自宅である建物だけの売却か自宅とその敷地を同時に売却すること
・自宅を売却した年の前年か前々年に居住用不動産の3,000万円特別控除を利用していないこと
・自宅の買主が配偶者や親戚、同族会社など特別の関係にある者への売却ではないこと
・ほかの特例を適用していないこと(併用できる特例と併用できない特例がある)
・【自宅から転居などをして現在自宅ではない場合】
・居住しなくなった日から3年を経過する日の年の12月31日までに自宅を売却すること
・【自宅を解体し自宅の敷地のみ売却する場合】
自宅を解体した日から1年以内に自宅の不動産売買契約が締結され、自宅に居住しなくなった日から3年が経過した日の年の12月31日までの売却であること
自宅を解体してから自宅の不動産売買契約を締結した日まで、自宅の敷地を貸したり、事業利用していないこと
・【災害により自宅がなくなってしまった場合】
災害により住めなくなった日から3年を経過する日の年の12月31日までに自宅の敷地を売却すること
先ほど譲渡所得税の税額をシミュレーションしましたが、同じ条件で居住用不動産の3,000万円特別控除を利用すると
計算条件:①不動産を5,000万円で売却、②売却する不動産を購入した金額3,000万円、購入諸費用200万円、③売却するのにかかった諸費用150万円とした場合
①5,000万円 – ②(3,000万円 + 200万円) – ③150万円 = 1,650万円(譲渡所得)となります。
居住用不動産の3,000万円特別控除を利用すると譲渡所得から3,000万円差し引くことができるため
1,650万円(譲渡所得) – 3,000万円 = -1,350万円 つまり、この場合は譲渡所得税は課税されないということになります。
譲渡所得1,650万円を短期譲渡所得の税率で計算した場合、約653万円譲渡所得税が課税されます。
しかし、居住用不動産の3,000万円特別控除を利用すると課税されません。
空き家の3,000万円特別控除
空き家の3,000万円特別控除とは、相続で取得した空き家を売却するときに利用できる減税措置です。
空き家の3,000万円特別控除を利用することにより、譲渡所得税(復興特別所得税と住民税を含む)が減税されます。
空き家の3,000万円特別控除は時限措置でもあり、令和9年12月31日までに対象となる空き家の売却を済まさなければ適用できません。
なお、居住用不動産の3,000万円特別控除を受けるには確定申告が必要になります。
空き家の3,000万円控除の適用要件は次のとおりです。
・相続で取得した空き家は被相続人が1人で住んでいた住宅であること、もしくは要介護などになった被相続人が老人ホームに入居後亡くなったこと
・空き家の築年数は昭和56年5月31日以前であること
・空き家のまま売却する場合、耐震補強をするなど一定の耐震基準を満たすこと
・空き家を解体して売却すること
・相続開始から3年目が経過する日の年の12月31日までに売却すること
・相続で取得した空き家の売却額は1億円以下であること
・買主が配偶者や親戚、同族会社など特殊な関係でないこと
・相続から売却までに空き家を貸したりしていないこと、また誰も住んだりしていないこと
・空き家を解体した場合売却までに新たな建物を建築していないこと
・売却した空き家に対して特定の特例を受けていないこと
・同じ被相続人から取得したほかの空き家に対して空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除を利用していないこと
空き家の3,000万円特別控除は適用要件がかなり多く、内容も複雑なため適用できるかは税理士などの専門家に確認すると良いでしょう。
また、空き家の3,000万円特別控除を適用したときの税金計算方法は、居住用不動産の3,000万円特別控除の計算方法とまったく同じです。
なお、空き家の3,000万円特別控除を受けるためには確定申告が必要になります。
不動産売却に関わる税金についての注意点
不動産売却をするときには多くの税金が課税されます。
この税金についていくつかの注意点があります。
ここからは不動産売却時に課税される税金の注意点について解説します。
建物面積には注意
減税措置の適用要件の中に、建物面積に言及しているものがあります。
この建物面積は全部事項証明書(登記簿謄本)に記載されている面積で、物件概要やパンフレットに記載された面積とは違います。
全部事項証明書に記載されている面積は「内法面積」で、物件概要やパンフレットに掲載されている面積は「壁芯面積」です。
内法面積は6%~8%ほど壁芯面積より小さくなります。
そのため、壁芯面積で減税措置要件の面積をクリアしていても、内法面積は減税措置面積を下回っているということが起こりえます。
そのため、減税措置の面積を満たしているかは全部事項証明書の面積である内法面積で確認する必要があります。
納税時期に注意
税金はそれぞれ納税するタイミングが違います。
印紙税は不動産売買契約締結時、譲渡所得税は確定申告後、住民税は6月以降などと納税する時期が違います。
そのため、納税通知がなかなか来ないから課税されないと思い込み、不動産を売却し得た金銭を使ってしまう人がいます。
そのようなことにならないよう各税金の納税時期は把握しておくようにしましょう。
確定申告が必要な減税措置には注意
税金によって自動的に減税されるものと、確定申告をしないと減税されない税金があります。
印紙税や固定資産税は納税のタイミングで自動的に減税された税額を収めます。
しかし、譲渡所得税(復興特別所得税と住民税を含む)は減税措置の利用を申請しないと減税措置が受けられません。
すべての税金が自動的に減税されるわけではないので、確定申告が必要な減税措置はどの税金なのかを知っておかなければなりません。
まとめ
不動産を売却するときには多くの税金が課税されます。
そして不動産を売却するときに課税される税金のほとんどに減税措置が設けられており、一定条件を満たしていると税額を減らすことが可能です。
そのため、不動産売却にかかる税金の種類だけではなく減税措置があることを知っておく必要があります。
また、各税金はすべて同時期に納税するわけではないこと、確定申告をしなければ減税措置が受けられないことなどがあることも知っておかなければなりません。
税金は内容が複雑で、減税措置を利用しないだけで数百万円の損をしてしまうことがあります。
税金については知識を得たうえで、不動産会社や税理士などの専門家のアドバイスを受け、減税措置の申告などをすることをおすすめします。