2022.11.30
不動産の売却
自宅不動産を売却し住み替えるときには多くの税金がかかる?課税される税金と減税措置を解説!
自宅不動産を売却して新居を購入する、いわゆる住み替えのときには多くの種類の税金が課税されます。
そのため、住み替えるときには税金の種類や、どの程度の金額が課税されるのかを知っておく必要があります。
また、税金には減税措置と呼ばれる制度があり、一定条件を満たすことで税額を抑えることができます。
住み替えるときの税金やその税金の減税措置を知っておくと、住み替えにかかる費用を減らすことが可能です。
本記事では、自宅不動産を売却し新居を購入する住み替えに課税される税金の種類や税金の特例・減税措置などを解説します。
自宅不動産を売却し住み替えに課税される税金
不動産は自宅を売却するときにも、新居を購入するときにも税金が課税されます。
また、売却するときと購入するときに共通して課税される税金もあります。
ここからは、売却時と購入時に共通で課税される税金、売却時に課税される税金、購入時に課税される税金ごとに解説していきます。
自宅不動産売却時にも新居購入時にも課税される共通の税金
自宅不動産売却時と新居購入時に共通して課税される税金は、印紙税と登録免許税、消費税です。
ただし、登録免許税は売却時と購入時で内容が大きく異なるため、売却・購入するとき共に課税されますが売却時と購入時に分けて説明します。
印紙税は不動産売買契約書などの課税文書を作成するときに課税されます。
印紙税の課税金額は、不動産売買金額で変動します。
印紙税の課税金額の主な範囲は次のとおりです。
印紙税の主な課税金額(軽減税率適用後)
売買金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円以下 | 0円(非課税) |
1万円を超え50万円以下 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下 | 6万円 |
5億円を超え10億円以下 | 16万円 |
1億円を超え50億円以下 | 32万円 |
50億円超え | 48万円 |
※軽減税は2024年3月末まで適用予定
消費税は次の項目の支払のときに課税されます。
・仲介手数料
・登記費用の内訳にある司法書士への報酬
・住宅ローン手数料
・課税業者が売主の不動産の購入
これら項目の金額に10%の消費税が課税されます。
自宅不動産の売却のときに課税される税金
自宅不動産の売却のときに課税される税金は次のとおりです。
・登録免許税
・譲渡所得税(復興特別所得税と住民税含む)
ここからは登録免許税と譲渡所得税に分け、それぞれの税金について解説します。
登録免許税(売却時)
登録免許税とは、登記をするときに課税される税金です。
自宅不動産を売却するときに登録免許税が課税されるケースは、抵当権の抹消登記を行うときです。
抵当権抹消登記に課税される登録免許税は、1件抹消するごとに1,000円課税されます。
住宅ローンを借りると通常、建物と土地の両方に抵当権を設定するため、建物1件、土地1件、合計2件の抵当権設定をします。
この場合、2件の抵当権抹消が必要になるため、2,000円の登録免許税が課税されます。
譲渡所得税
譲渡所得税とは、不動産を売却したときに売却益(譲渡所得)が出た場合、譲渡所得に対して課税される税金です。
譲渡所得税が課税される場合は住民税もあわせて課税され、なおかつ2013年1月1日~2037年12月31日までは復興特別所得税もあわせて課税されます。
譲渡所得税を計算するときには、まず譲渡所得を計算します。
譲渡所得の計算方法は、次のとおりです。
譲渡所得 = 自宅不動産売却代金 – 取得費(自宅を購入した金額と購入諸経費の合計) – 自宅売却費用
譲渡所得が計算できたら譲渡所得税を算出します。
譲渡所得税 = 譲渡所得 × 税率
税率は不動産の所有期間が5年を超えるか超えないかで大きく異なります。
・短期譲渡所得(5年以下)は税率39.63%(復興特別所得税と住民税を含む)
・長期譲渡所得(5年超え)は税率20.315%(復興特別所得税と住民税を含む)
新居購入のときに課税される税金
新居購入のときに課税される税金は次のとおりです。
・登録免許税
・不動産取得税
ここからは登録免許税と不動産取得税に分け、それぞれの税金について解説します。
登録免許税(購入時)
不動産購入時に課税される登録免許税は、所有権移転登記や保存登記、抵当権設定登記を行うときに課税されます。
登録免許税の計算式一覧
登記の種類登録 | 免許税の税率 |
---|---|
所有権移転登記(土地) | 固定資産税評価額 × 2.0% |
所有権保存登記(新築建物) | 固定資産税評価額 × 0.4% |
所有権移転登記(中古建物) | 固定資産税評価額 × 2.0% |
抵当権設定登記 | 住宅ローン借入額 × 0.4% |
※この一覧表は本則の税率です。一定条件を満たした場合、減税措置を受けることができます。
不動産取得税
不動産取得税とは、不動産を所有したときに1度だけ課税される税金です。
不動産取得税は不動産の引き渡しをした後、1ヶ月~3ヶ月後くらいに納税通知書が届きます。
不動産取得税の計算方法は、次のとおりです。
(建物)
不動産取得税 = 固定資産税評価額 × 3%(2024令和6年3月31日までに住宅を購入した場合)
(土地)
不動産取得税 = 固定資産税評価額 ÷2 × 3%(2024令和6年3月31日までに購入した場合)
一戸建てを購入した場合は、建物と土地の不動産取得税を合計した金額が納税額です。
住み替えるときに利用可能な税金の特例
不動産の住み替えをするときには、多くの税金が課税されます。
しかし、税金には特例という減税を受けることができる制度が用意されています。
ここからは、住み替えしたときに利用できる特例の一例を紹介していきます。
居住用不動産の3,000万円特別控除
居住用不動産の3,000万円特別控除は、譲渡所得税の課税額を抑えることができる特例です。
一定条件を満たすと、自宅を売却したときに出た譲渡所得から3,000万円を控除することができます。
居住用不動産の3,000万円特別控除の主な適用条件は次のとおりです。
・自宅である建物の売却か自宅とその敷地を同時に売却すること
・自宅を売却した年の前年か前々年に居住用不動産の3,000万円特別控除を利用していないこと
・自宅の買主が配偶者や親戚、同族会社など特別の関係にある者への売却ではないこと
・他の特例を適用していないこと(併用できる特例と併用できない特例がある)
・【自宅から転居などをして現在自宅ではない場合】
居住しなくなった日から3年を経過する日の年の12月31日までに自宅を売却すること
・【自宅を解体し自宅の敷地のみ売却する場合】
自宅を解体した日から1年以内に自宅の不動産売買契約が締結され、自宅に居住しなくなった日から3年が経過した日の年の12月31日までの売却であること
自宅を解体してから自宅の不動産売買契約を締結した日まで、自宅の敷地を貸したり、事業利用していないこと
・【災害により自宅がなくなってしまった場合】
災害により住めなくなった日から3年を経過する日の年の12月31日までに自宅の敷地を売却すること
軽減税率の特例
軽減税率の特例とは、譲渡所得税の課税額を抑えることができる特例です。
一定条件を満たした自宅を売却すると、譲渡所得税率が低くなります。
不動産売却した場合は、所有している年数により税率が変わります。
軽減税率を適用しない場合は、短期譲渡所得(所有期間5年以下)と長期譲渡所得(所有期間5年超え)に分けられます。
短期譲渡所得と長期譲渡所得の税率の違いは次のとおりです。
・短期譲渡所得:税率39.63%(復興特別所得税と住民税含む税率)
・長期譲渡所得:税率20.315%(復興特別所得税と住民税含む税率)
軽減税率の特例を適用すると、長期譲渡所得より低い税率になります。
軽減税率の特例で適用される税率は次のとおりです。
・譲渡所得が6,000万円以下の部分:税率14.21%(復興特別所得税と住民税含む税率)
・譲渡所得が6,000万円超えの部分:税率20.315%(復興特別所得税と住民税含む税率)
軽減税率の特例は譲渡所得の金額により税率が変わります。
例えば、軽減税率の特例が適用される条件を満たし譲渡所得が7,000万円ある場合
6,000万円(6,000万円以下の部分の譲渡所得) × 14.21% = 約852万円
1,000万円(6,000万円超えた部分の譲渡所得) × 20.315% = 約203万円
約852万円 + 約203万円 = 約1,055万円が譲渡所得税額になります。
なお、軽減税率の特例を適用するための条件は次のとおりです。
・日本国内にある自宅を売却するか自宅と共に自宅の敷地を売却すること
・自宅を購入する買主が配偶者や親戚、同族会社など特別な関係でないこと
・自宅を売却した年の1月1日時点で売却した自宅やその敷地の所有期間が両方10年を超えていること
・【災害で自宅が無くなった場合】
自宅が災害でなくなった敷地を住まなくなった日から3年を経過した日の12月31日までに売却すること
・【自宅を解体して売却する場合】
次の条件を満たすこと
自宅の敷地の不動産売買契約が自宅を解体した日から1年以内に締結されていること
自宅に住まなくなった日から3年経過した年の12月31日までに売却すること
自宅を解体した後に自宅の敷地を貸したり事業用地として利用していないこと
・一定条件の特例を利用していないこと
なお、居住用不動産の3,000万円特別控除と軽減税率の特例は併用可能です。
併用できる条件を満たしている場合は両特例を申請するようにしましょう。
住宅ローン控除
住宅ローン控除とは、住宅ローンを借り自宅を購入すると所得税や住民税などを控除することができる特例です。
住宅ローン控除を利用することにより、最長13年間、年末の住宅ローン残高の0.7%の金額が所得税(所得税から引き切れない場合は住民税)から引かれます。
住宅ローン控除は購入する不動産や入居時期により、適用される内容が違います。
この内容の違いを表にまとめました。
住宅ローン控除の適用内容
住宅新旧等 | 住宅環境性能等 | 借入限度額 | 控除期間 | 控除割合 | |
令和4・5年入居 | 令和6・7年入居 | ||||
新築住宅 買取再販 |
長期優良住宅 低炭素住宅 |
5,000万円 | 4,500万円 | 13年間 | 0.7% |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 | |||
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 | |||
その他住宅 | 3,000万円 | 0円 | |||
既存住宅 | 長期優良住宅 低炭素住宅 ZEH水準省エネ住宅 省エネ基準適合住宅 |
3,000万円 | 10年間 | ||
その他住宅 | 2,000万円 |
住宅ローン控除の適用要件は、購入する住宅が新築住宅、既存住宅、買取再販住宅により異なります。
ここでは、新築住宅と既存住宅の適用要件を紹介します。
(新築住宅の適用要件)
・住宅ローン控除を受けようとする人が、住宅の引渡し日か住宅工事の完了から6ヶ月以内に住み始めること
・住宅ローン控除を受ける人の年の合計所得金額が2,000万円以下であること
・対象となる住宅の床面積が50㎡以上で、床面積の2分の1以上が自身の居住用であること
※合計所得金額1,000万円以下で、2023年末までに建築確認を受けた新築住宅の場合に関しては住宅の床面積が40平㎡以上50㎡未満でも適用可能
・対象となる住宅に対して10年以上借入期間がある住宅ローンがあること
・自宅として住み始めた年とその年前後2年を合わせた計5年の間に、居住用財産の譲渡による長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けていないこと
(既存住宅の適用要件)
新築住宅の適用要件に加え、次の要件を満たす必要があります。
・1982年1月1日以降の築年数の既存住宅であること
・1981年12月31日以前の既存住宅の場合耐震基準に適合していること
その他にも不動産購入するときには減税措置がある
不動産購入をした場合、登録免許税や不動産取得税が課税されます。
この2つの税金は購入した不動産の築年数が新しい場合、税額が下がる減税措置が用意されています。
どちらの税金も築年数以外の適用要件があるため、減税されるのかは購入するときに不動産会社へ確認すると良いでしょう。
まとめ
自宅不動産を売却して新居を購入するときにはさまざまな税金が課税されます。
売却のときは印紙税や譲渡所得税、登録免許税など、購入するときには印紙税や不動産取得税、登録免許税などが課税されます。
ほとんどの税金には減税措置が用意されているため、どのような減税措置があるのか知っておく必要があります。
居住用不動産の3,000万円控除など特例によっては、税額が百万円単位で変わることもあります。
自宅不動産を売却し住み替える場合には、不動産会社などに税金のことをしっかりと相談し抑えられる税金は抑えていくことが重要です。