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2022.08.05

不動産の売却

不動産の資産価値って何?計算方法と評価の基準について詳しく解説

資産価値の高い不動産を所有していると、売却時に多くの利益を得られたり、賃貸に出して安定した収入を得られたりします。そのため不動産の資産価値は、所有する不動産を手放すべきか、気になる不動産を購入すべきかの判断材料になります。

不動産の正確な資産価値を知る方法としては、不動産会社などに査定してもらうのが最も確実です。
しかし「不動産の売却や購入を考え始めた段階で、資産価値を簡単に計算してみたい」という人もいるでしょう。

本記事では、不動産の資産価値の概要と計算方法について解説します。
資産価値の評価基準を知ることで、適切な売却価格の設定や、資産価値の高い物件の購入ができるようになります。

「査定価格」「売却価格」と「資産価値」の違い

不動産の「資産価値」は、似たような「査定価格」や「売却価格」と混同されることがあります。
しかし、これらは厳密には異なる価格を示しています。

それぞれの特徴について、詳しく見ていきましょう。

査定価格

査定価格とは「土地や建物がいくらくらいで売れそうか」を計算した価格のことです。
不動産を売却しようと思ったときに、不動産会社に依頼して計算してもらう価格のほとんどが、査定価格にあたります。

不動産会社が査定を行う際に考慮する条件は、以下のとおりです。

・土地や建物の状態・条件
・周辺エリアで売買されている不動産の価格
・売買される時期
・経済状況

同じ条件の物件でも、不動産業界の繁忙期にあたる1〜3月に売り出す場合、査定額が上がる傾向にあります。反対に、中古住宅の売買が少ない時期は、査定額が低くなりやすいです。

売却価格

売却価格は名前のとおり、不動産が売却される際の契約金額のことです。

不動産の所有者は、不動産会社に計算してもらった査定金額を基に、売り出し条件を決定します。
不動産の購入を希望する人は売り出し条件から、さらに金額の交渉をするのが一般的です。

売主と買主の間で価格交渉をし、最終的に契約締結に至ったときの金額を、売却金額と呼びます。
つまり査定価格と売却金額には、不動産会社や買主の主観が含まれるということです。

資産価値

資産価値は「不動産がどれだけの価値を持っているか」を指す言葉です。
査定価格や売却価格とは異なり、売買にかかわる人たちの主観は含まれません。

このように、不動産の資産価値・査定価格・売却価格は、異なる意味を持つことを知っておきましょう。

資産価値の計算方法

不動産の資産価値は、不動産会社などの専門家でなくても、概算であれば求められます。
資産価値の計算には、決まった計算式が用いられるためです。

資産価値を求める際には、土地と建物の資産価値をそれぞれ計算する必要があります。

土地の資産価値の計算方法

土地の資産価値は、以下の価格のうち、いずれかをもとに計算します。

(1)路線価
(2)固定資産税評価額
(3)公示価格・基準地標準価格
(4)実勢価格

1つずつ詳しく解説します。

路線価

路線価は、正式名称を「相続税路線価」といい、相続税や贈与税などの額を決定する際に基準となる価格です。土地が接している道路に対して定められているため、道路の価格から土地の価格を計算します。

路線価から土地の資産価値を求める場合は、以下のような計算式になります。

土地の資産価値=相続税路線価÷0.8

路線価は、国税庁のホームページにある「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」から確認が可能です。

角地などで複数の道路に接している土地の場合は、最も高い路線価を用いて計算します。
道路に接していない土地の場合、この方法は使えないため、ほかの方法で資産価値を求めましょう。

固定資産税評価額

土地を所有する人には、市町村(東京23区は東京都)から毎年「固定資産税納税通知書」という書類が送付されます。

固定資産税納税通知書には、所有する土地の「固定資産税評価額」が記載されており、そこから土地の資産価値を計算できます。

計算式は以下のとおりです。

土地の資産価値=固定資産税評価額÷0.7

固定資産税評価額は、土地の所有者に課される「固定資産税」の額を決める際に基準となる価格です。

土地が所在する市区町村が調査して決定しているため、周囲の開発度や需要と供給のバランスなどは考慮されていません。そのため、取引価格の相場ではなく「土地そのものの資産価値」を調べることができるのです。

固定資産納税通知書が手元にない場合は、以下の方法でも固定資産税評価額を確認できます。

・土地を管轄する役所に保管されている「固定資産税課税台帳」を閲覧する
・「固定資産税評価証明書」という書類を取り寄せる

公示価格・基準地標準価格

「公示価格」または「基準値標準価格」を調べて、土地の資産価値を知る方法もあります。

公示価格は、国土交通省が指定した、日本各地にある基準地ごとの土地の価格です。
基準値標準価格(基準地価)は、都道府県が発表している土地の価格で、公示価格を補足する役割を担っています。

土地の価格は素人にはわかりにくいため、ある程度の基準がないと、不正な金額で売買される可能性があります。

そのため、国や都道府県が「公示価格」や「基準地標準価格」を取引額の目安として公表することで、公正な土地取引が行われるように導いているのです。

公示価格は毎年1月1日時点、基準値標準価格は毎年7月1日時点の価格を発表しています。
どちらも国土交通省が運営する「土地総合情報システム」で調べることができます。

実勢価格

実勢価格を基に、土地の資産価値を知る方法もあります。

実勢価格とは、土地が実際に取引された際に決まる価格のことです。
売主と買主の交渉などによって価格が変動するため、公示価格よりも大幅に高くなったり安くなったりすることもあります。

実勢価格は、公示価格や基準地標準価格と同様に、国土交通省が運営する「土地総合情報システム」で調べることが可能です。ただ、売買が長い間行われていない土地の場合、実勢価格がわからないこともあります。

建物の資産価値の計算方法

土地付きの一戸建てやマンションの資産価値は、以下いずれかの方法で計算します。

・原価法
・取引事例比較法
・収益還元法

それぞれ詳しく見ていきましょう。

原価法

原価法とは、現在所有している土地と建物すべてにおいて「もう一度取得するためにはいくらかかるか」という視点から資産価値を計算する方法です。

原価法を利用する場合の計算式は、以下のとおりです。

資産価値=単価×総面積×残存年数(耐用年数-築年数)÷耐用年数

原価法の特徴としては、築年数の経過による価値の減少を考慮している点が挙げられます。
つまり「同じものを新築する場合の価格」ではなく「同じ築年数の不動産を入手する場合の価格」を計算しているのです。

これを「減価修正」と呼び、建物の構造ごとに定められた法定耐用年数を用いて計算します。

建物の構造 法定耐用年数
木造 22年
鉄骨造(骨格材の厚さ:3mm以下) 19年
鉄骨造(骨格材の厚さ:3mm超~4mm) 27年
鉄骨造(骨格材の厚さ:4mm超) 34年
鉄筋コンクリート造 47年

原価法では、ほかの不動産と比較せずに資産価値を計算できるため、以下のような場合に用いられることが多いです。

・建物周辺に類似した取引事例がない場合
・購入者の希望に応じて間取りや構造などを決める、注文住宅の資産価値を計算する場合

取引事例比較法

取引事例比較法は、不動産会社が査定を行う際によく用いる方法です。
周辺にある類似物件が過去に売買された事例を基にして、対象の土地や建物の資産価値を計算します。

取引事例比較法で使用する計算式は、以下のとおりです。

資産価値=比較物件の1㎡あたりの価格×(査定物件の評点÷比例物件の評点)×査定物件の面積(㎡)×現在の流動性比率

不動産の資産価値は、経済状況や周辺環境にあわせて変化します。そのため、比較物件と同じような不動産を所有していても、まったく同じ条件で比較することはできません。

取引事例比較法で資産価値を調べる際には「流動性比率(流通性比率)」を用います。流動性比率は、不動産の売れやすさを表したものです。100%を基準として、売れやすい(需要が高い)不動産ほど、数値が高くなります。

収益還元法

収益還元法は、賃貸マンションのような収益物件の資産価値を計算するために用いられます。
不動産を所有することで将来的に発生する収益を求めるのです。

収益還元法には2つの種類があり、それぞれ以下のような計算式を使用します。

・直接還元法:(年間総収入-諸経費)÷還元利回り
・DCF法:(X年後の合計収益)÷(1+年間割引率のX乗)

不動産の資産価値の評価基準

不動産の資産価値は、さまざまな要素によって評価されます。
なかでも重要視されるポイントは、以下のとおりです。

・土地の形
・築年数
・機能性
・地盤の強度
・立地
・災害リスク

1つずつ詳しく見ていきましょう。

土地の形

土地に住宅を新築する場合「どれだけ使いやすい形状の土地か」は重要なポイントです。

正方形や長方形といった「成形地」の場合、その上に建てる住宅の形や方角の自由度が高いため、資産価値も高まります。

三角形や旗竿地の場合は、全体の敷地面積に対して有効活用できる部分が少ないため、資産価値が低くなりやすいです。

旗竿地とは、入口が細長く、メインの土地が奥まったところにある土地のことを指します。

築年数

建物における築年数も重要です。
建てられてから月日が経つほど、建物は劣化するため、資産価値が下がります。

建物における劣化の例は、以下のとおりです。

・床や壁が日焼けして色が変わる
・外壁の塗装が剥がれる
・屋根の瓦がひび割れ、雨漏りが発生する

また築年数が古い建物は、劣化による欠陥がなくても、近いうちにメンテナンスが必要になることが明らかです。

木造の一戸建ての場合、建てられてから25年ほどで資産価値がほぼ無くなると言われています。

機能性

建物の機能性も、資産価値を決める要素の1つです。
機能性が高いほど、資産価値も高くなります。

機能性が高い建物の例は、以下のとおりです。

・断熱性能や気密性が高く、夏は涼しく冬は暖かい
・耐震性能が高く、地震による被害を抑えられる
・省エネ性能が高く、光熱費が抑えられる

地盤の強度

地盤の強度が低いと、地震などの自然災害で被害が出るリスクが高まるため、資産価値が低くなります。

「宅地」として登記されている土地であっても、地盤の強度が高いとは限りません。
川や沼だったところを埋め立てている場合、周辺と比較すると地盤が緩い可能性があります。

立地

立地は、土地や建物の資産価値を大きく左右すると言っても過言ではありません。
主要都市へのアクセスのよさだけでなく、駅やバス停までの距離、電車やバスの運行本数なども資産価値に影響します。

さらに、不動産の周辺環境も重要です。
買い物がしやすく、医療施設・教育施設などが充実しているエリアは、生活環境のよさから資産価値も高く評価されます。

反対にゴミ処理施設や火葬場など、いわゆる「嫌悪施設」が近くにあるような立地の場合、資産価値が低くなりやすいです。

災害リスク

地震や台風、水害が多い日本において、災害リスクが小さい土地は資産価値が高いです。

近年は、記録的な豪雨による河川の氾濫や土砂災害、洪水の被害が日本全国で多発しています。
そのため河川や海の近くの土地は、過去に大きな災害が起きたことがなくても、資産価値が低くなりやすいです。

地域の災害リスクは、各自治体が公表しているハザードマップで確認しましょう。

戸建て住宅は資産価値が下がりやすい

原価法について解説した際に、建物には法定耐用年数が定められている点に触れました。
マンションによく見られる鉄筋コンクリート造は、法定耐用年数が47年です。
一方で、一戸建ての住宅によく見られる木造は、法定耐用年数が22年と短いです。

法定耐用年数は、建物の価値を公平に計算するために定められています。
そのため、法定耐用年数を超えたからといって、建物が使用できなくなるわけではありません。しかし新築から法定耐用年数を超えるまでの間、建物の価値は一定の割合ずつ減少していくとされています。

マンションは以下の理由から、一戸建ての住宅と比較すると資産価値が下がりにくい傾向にあります。

・法定耐用年数が長い
・交通アクセスや周辺環境が整ったエリアに建てられることが多い

一戸建ての住宅は、どんなに管理が行き届いていたとしても、20年ほどで資産価値がないものとして判断されてしまうのが難点です。

土地には法定耐用年数の定めがないため、経済状況の急な変動がない限り、資産価値が大きく変動することはありません。

一戸建ての売却時に価値が低い・価値がないものと評価された場合には、取り壊して更地にし、土地だけを売却するという方法もあります。

資産価値が下がりにくい不動産の特徴

この章では、資産価値が下がりにくい不動産の特徴について解説します。
一戸建て住宅とマンションに分けて、詳しく見ていきましょう。

一戸建ての場合

以下のような特徴を持つ一戸建て住宅は、資産価値が下がりにくいとされています。

・人気のエリア
・立地がよい
・土地の形状がよい
・高性能な住宅

人気のエリア

人気のエリアとは「住みたい街ランキング」で上位に入るようなエリアのことです。
以下のような理由から、人気エリアとなるケースがみられます。

・憧れの街である
・行政サービスが充実している
・交通の便がよい
・商業施設が充実している

人気のエリアは需要が高いため、資産価値が下がりにくいのです。

立地がよい

建物の立地がよいと、資産価値が下がりにくくなります。
立地がよいとされる条件は、以下のとおりです。

・駅が近い
・スーパーや病院など、生活に必要な施設が近くに揃っている
・学校が近い
・周りの騒音が少なく、快適に過ごせる

また子供が成長したり、自身が年を取ったりしても、快適に過ごし続けられるような環境であることもポイントです。

土地の形状がよい

正方形や長方形などの形状がよい土地は、資産価値が下がりにくいです。
形状がよい土地には、以下のようなメリットがあります。

・ハウスメーカーの規格に合いやすく、建物を建てやすい
・土地を最大限に活用できる(デッドスペースができにくい)
・売却する際に買い手が付きやすい

高性能な住宅

資産価値が下がりにくい住宅のポイントとして、省エネ性能や断熱性能に優れていることも挙げられます。性能が高いほど、建築費用も高くなりやすいですが、以下のようなメリットがあります。

・災害に強い
・光熱費が安くなる
・環境に優しい
・ヒートショックなどの健康被害が減る

資産価値の下がりにくさに加えて、災害時の被害や日々の光熱費を考えると、高性能な住宅はコスパが高いのです。

マンションの場合

資産価値が下がりにくいマンションの特徴は、以下のとおりです。

・人気のエリア
・立地がよい
・高層階
・メンテナンスが行き届いている

人気のエリア

一戸建てと同様に、人気のエリアに建っているマンションは資産価値が下がりにくいです。

再開発で人気が急上昇しているエリアには、多くのマンションが新築される傾向にあります。
そのため、地域の将来性の高さからマンションを購入する人も少なくありません。

人気のエリアにある不動産を購入したい場合、一戸建てよりもマンションのほうが手に入りやすいと言えます。

立地がよい

立地のよさも、一戸建てと同様に重要なポイントです。

駅までの距離は、一戸建てよりもマンションのほうが近い傾向にあります。
都市計画により、駅の近くには大型の商業施設やマンションが建てられることが多いためです。

駅の近くには、スーパーやドラッグストアなどの生活に必要な施設も揃っていることが多く、さらに需要が高くなります。

高層階

マンションの高層階にある部屋は、資産価値が下がりにくいです。
高層階にある部屋には、以下のようなメリットがあります。

・日当たりがよい
・眺めがよい
・防犯性が高い
・虫が入りにくい

同じマンションでも、低層階にある部屋よりも高層階にある部屋のほうが、需要が高いのです。

メンテナンスが行き届いている

メンテナンスの状況も、資産価値における重要なポイントです。

設備の定期的なメンテナンスや、日々の清掃によって、資産価値を維持できます。
設備に不調が出たり、床や壁に傷が付いたりした場合、すぐに直すことも大切です。

廊下やエントランスなどの共用部分は、マンションの管理会社によってメンテナンスが行われます。

不動産の資産価値|まとめ

不動産の資産価値は、さまざまな要素によって評価されます。
そのため、決められた計算式を用いても、おおよその価格しか計算できません。

不動産の売却や購入に向けて具体的に動き出す場合、できる限り正確な資産価値を把握しておいたほうが、資金計画や投資計画を立てやすいです。

正確な資産価値を知るには、売買を専門にする不動産会社に依頼するのがおすすめです。
不動産売買は一度に大きな金額が動くため、親身になって相談に乗ってくれる不動産会社を探すようにしましょう。

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