2022.12.26
不動産の売却
【いくら?】不動産売却にかかる登記費用の種類と金額の相場|誰が負担するかも詳しく解説
不動産を売却すると「住所・氏名変更」「抵当権抹消」「所有権移転」に関する登記費用がかかります。売主が払うのは、基本的に住所・氏名変更と抵当権抹消の分だけですが、売主がすべての登記費用を負担するケースもあります。
この記事の目的は、そうした不動産売却に伴う登記費用がいくらかかるかを紹介することです。必要書類や費用負担をできるだけ和らげるコツについてもお伝えするので参考にしてください。
不動産売却にかかる登記費用は3つ
不動産売却にかかる登記費用は、以下3つの登記に関する登録免許税および司法書士手数料です。前2つは売主、後ろ1つは買主の負担となるのが通例ですが、場合によってはすべて売主が払うこともあります。
以下では、不動産の売却時に必要な3つの登記についてそれぞれ解説するので参考にしてください。
住所・氏名変更登記(売主が負担)
前回の登記後に転居している場合など、登記簿にある住所と現住所が異なる場合には、住所・氏名変更登記が必要になります。
なぜなら買主が所有権移転登記をする際に、売主の印鑑証明書を添付しなければならないからです。印鑑証明書にある現住所が登記簿に載っているものと異なれば、申請が受理されないので、登記簿の更新は必須です。
抵当権抹消登記(売主が負担)
抵当権抹消登記とは、住宅ローンにかかる担保として金融機関が設定していた抵当権を抹消するための登記です。不動産売却では、売却益によってローンが完済されるため、売却のタイミングで抵当権を抹消するのが慣習となっています。
抵当権は自然消滅するわけではないため、不動産売却の時点で手続きをしてしまうのが良いでしょう。
所有権移転登記(買主が負担)
所有権移転登記とは、土地・建物の所有者が移ったときに、所有権の所在を明確にするための登記です。所有権移転登記は通常、買主の負担で行うのが商慣習となっています。
しかし、売主に対して買主の立場が強い場合は、所有権移転登記にかかる費用も売主負担となることがあります。例えば、状態の悪い不動産や買主が本来必要のない隣地を無理言って買ってもらうようなケースです。
なお、それぞれの登記費用を誰が払うかは、契約書に明記されているので、わからなくなった場合はまず契約書をご確認ください。
不動産売却にかかる登記費用の相場
不動産売却にかかる登記費用は、3万円前後が相場といえます。ただし、所有権移転登記の費用まで売主が負担する場合は、20万円を超えてくるでしょう。詳しくは以下をお読みください。
住所・氏名変更登記の費用は14,000円前後
土地・建物1つずつの住所・氏名変更登記にかかる費用は、合計で14,000円程度です。費用の内訳は以下をご覧ください。
<住所・氏名変更登記にかかる費用の内訳>
- 登録免許税 – 2,000円
- 司法書士手数料 – 12,000円
- 必要書類の取得手数料 – 1,300円
- 合計 – 14,300円
登録免許税は、不動産1つにつき1,000円です。よって、土地1筆と建物1棟について変更する場合は、2,000円かかります。
加えて、登記手続きを司法書士に代行してもらう場合には、司法書士への報酬(司法書士手数料)が必要です。住所・氏名変更登記にかかる司法書士手数料の相場は、12,000円前後とされています。詳しくは以下のデータをご確認ください。
[有効回答数:1,088]
低額者10%の平均 | 全体の平均値 | 高額者10%の平均 | |
北海道地区 | 7,000円 | 12,271円 | 23,414円 |
東北地区 | 7,158円 | 10,836円 | 16,162円 |
関東地区 | 8,083円 | 12,123円 | 19,069円 |
中部地区 | 8,660円 | 12,933円 | 29,882円 |
近畿地区 | 7,809円 | 13,196円 | 21,353円 |
中国地区 | 7,487円 | 11,816円 | 17,720円 |
四国地区 | 7,517円 | 11,232円 | 16,773円 |
九州地区 | 7,630円 | 11,233円 | 16,752円 |
出典:日本司法書士会連合会「報酬アンケート結果(2018年1月実施)」
なお、司法書士に依頼すれば、住民票の写しの交付請求と登記申請を代理してもらえます。それらの手続きはあまり難しくないため、費用の負担を抑えたいなら、自分で申請しても良いでしょう。自分で申請すれば、登記費用は4,000円くらいで済みます。
抵当権抹消登記の費用は17,000円前後
抵当権抹消登記には、登録免許税と司法書士手数料を合わせて17,000円前後がかかります。費用の内訳は以下の通りです。
<抵当権抹消登記にかかる費用の内訳>
- 登録免許税 – 2,000円
- 司法書士手数料 – 15,000円
- 合計 – 17,000円
登録免許税は先ほどと同様、不動産1つにつき1,000円なので、土地1筆と建物1棟なら2,000円が必要になります。
また一般的に抵当権抹消登記の手続きは、司法書士に依頼します。自力でやろうとすると銀行が難色を示すため、不動産会社が司法書士を手配して、登記申請を任せるのが普通です。
土地1筆および建物1棟の抵当権抹消登記の場合、司法書士に支払う報酬は平均15,000円前後といわれています。詳しいデータは以下をご確認ください。
[有効回答数:1,085]
低額者10%の平均 | 全体の平均値 | 高額者10%の平均 | |
北海道地区 | 8,358円 | 15,532円 | 30,120円 |
東北地区 | 8,307円 | 13,863円 | 22,091円 |
関東地区 | 9,536円 | 15,613円 | 26,001円 |
中部地区 | 9,839円 | 16,638円 | 35,220円 |
近畿地区 | 9,933円 | 18,795円 | 32,444円 |
中国地区 | 9,471円 | 15,289円 | 26,682円 |
四国地区 | 9,917円 | 14,409円 | 21,562円 |
九州地区 | 9,737円 | 13,821円 | 22,676円 |
出典:日本司法書士会連合会「報酬アンケート結果(2018年1月実施)」
所有権移転登記の費用は23万円前後
売却する土地・建物の固定資産税評価額がそれぞれ500万円ずつの場合、所有権移転登記の費用は23万円程度です。当費用を負担するのは基本的に買主ですが、売却する不動産の状態等によっては売主負担になることもあるのでご注意ください。
登記費用の内訳は以下の通りです。
<所有権移転登記にかかる費用の内訳>
- 登録免許税 – 175,000円
- 司法書士手数料 – 52,000円
- 登記事項証明書2部- 1,000円
- 合計 – 228,000円
所有権移転登記の登録免許税は、「固定資産税評価額×1.5%(土地※)ないし2.0%(建物)」で求めます。よって、土地・建物それぞれ500万円ずつにかかる登録免許税は、175,000円(75,000円+100,000万円)です。
※2023年4月1日以降は、土地にかかる税率も2.0%になる予定
また所有権移転登記を司法書士に依頼する場合の手数料は、以下のように52,000円前後が相場とされています。なお、手間はかかりますが、司法書士を使わず、自分で所有者移転登記をすることも可能です。
[有効回答数:1,091]
低額者10%の平均 | 全体の平均値 | 高額者10%の平均 | |
北海道地区 | 22,320円 | 42,999円 | 70,527円 |
東北地区 | 27,901円 | 42,585円 | 77,483円 |
関東地区 | 31,105円 | 51,909円 | 83,795円 |
中部地区 | 32,131円 | 51,065円 | 89,414円 |
近畿地区 | 36,042円 | 64,090円 | 114,279円 |
中国地区 | 28,897円 | 48,035円 | 79,344円 |
四国地区 | 30,380円 | 51,369円 | 77,528円 |
九州地区 | 27,672円 | 45,729円 | 74,880円 |
出典:日本司法書士会連合会「報酬アンケート結果(2018年1月実施)」
不動産売却にかかる登記の必要書類と申請の流れ
不動産売却の登記をする際は、以下に列挙する必要書類をご準備ください。登記申請の流れについては、司法書士に任せておいて、適宜指示に従うのが基本です。
住所・氏名変更登記の必要書類と申請の流れ
- 登記事項証明書 – 不動産1個につき500円オンライン請求の場合
- 住民票もしくは戸籍附票 – 1通300円程度
- 戸籍謄本(氏名変更を伴う場合) – 1通450円
- 登記申請書 – 法務局HPにて無料でダウンロード可
- 収入印紙(登録免許税)- 不動産1個につき1,000円
上記の書類をそろえたら、法務局ホームページの記載例を参考に登記申請書を作成し、ほかの書類とともに法務局の窓口に転出します。収入印紙はA4の用紙に貼り付けて書類一式に同封してください。
抵当権抹消登記の必要書類と申請の流れ
- 金融機関から届く書類 – 弁済証書、登記済証または登記識別情報、登記事項証明書、委任状
- 登記申請書 – 法務局HPにて無料でダウンロード可
抵当権抹消登記の場合、必要書類はすべて金融機関から送られてくるので、自分で準備するものはとくにありません。登記済証または登記識別情報については、ローンを組んだ時に金融機関から受け取っているはずなのでお探しください。
なお、抵当権抹消登記申請書類の作成や書類の提出は、司法書士が代行するので、基本的には何もしなくて大丈夫です。
所有権移転登記の必要書類と申請の流れ
<売主が用意するもの>
- 登記済証または登記識別情報 – 金融機関から受け取り済み
- 印鑑証明書(3ヶ月以内)- 1通400円程度
- 固定資産評価証明書 – 1件400円程度
- 司法書士への委任状 – 司法書士に頼む場合
- 身分証明書 – 司法書士に頼む場合、本人確認のため
- 売買契約書 – 司法書士に頼む場合
- 会社登記簿謄本または代表者事項証明書 – 法人の場合
<買主が用意するもの>
- 印鑑証明書(3ヶ月以内)- 取得した不動産に担保を設定する場合
- 司法書士への委任状
- 身分証明書
- 住民票の写し
上記の通り、所有権移転登記では、売主・買主それぞれが書類をそろえる必要があります。申請の流れについては、司法書士に依頼するのが一般的なので、すべて任せておけば問題ありません。
自分たちで登記をする場合は、法務局のホームページで所有権移転登記申請書をダウンロードして必要事項を記入し、ほかの書類と一緒に提出するという流れになります。
登記費用をできるだけ安くするためのコツ
不動産売却にかかる登記費用をできるだけ抑えたい場合は、以下3つの方法をお試しください。数万円の減額を実現できる可能性があります。
手数料の安い司法書士に依頼する
司法書士が受け取る報酬は、それぞれの司法書士が自由に決めることになっているため、かなり安いところも存在します。例えば、東京都で抵当権抹消登記を依頼する場合、高いところでは3万円近くかかる一方、安いところなら1万円未満でも利用可能です。
そのため、費用負担を抑えたい場合は、できるだけ安い司法書士に頼むと良いでしょう。
司法書士を使わず自分で登記をする
自分で登記をすれば、司法書士手数料を払わなくてよいため、1〜5万円程度の節約になります。
抵当権抹消登記については金融機関との関係で難しいですが、住所・氏名変更登記と所有権移転登記は自分ですることが可能です。とくに住所・氏名変更については、手続きが複雑でないため、事前に自分で済ませておくのもよいでしょう。
登録免許税の軽減措置の期限内に登記を済ませる
2022年12月現在、土地の売買に伴う移転登記にかかる登録免許税の減税が行われています。本来、固定資産税評価額に2.0%を乗じるところ、1.5%で計算することが可能です。
この軽減措置の適用期限は、2023年3月31日までの予定になっています。そのため、できれば期限内に登記を完了させるのが望ましいです。
例えば、評価額が500万円の場合、軽減措置の有無によって25,000円の違いが出ます。
不動産売却の登記費用は譲渡費用にならない
不動産売却にかかる登記費用は、基本的に譲渡費用にならないとされています。そのため、登記費用を確定申告の際に経費計上し、節税に役立てることはできません。
つまり登記費用は100%負担になるということなので、できるだけ安く済ませるのが望ましいです。
まとめ:不動産売却にかかる登記費用は3万円くらい
不動産売却に伴う登記費用は、住所・氏名変更と抵当権抹消をあわせて3万円強といったところです。所有権移転登記にかかる費用まで売主が負担する場合は、20万円を超えてくることもあります。
いずれにせよ、登記のルールや仕組みは一般人にはやや難しく、契約の状況によって事情が変わることも珍しくありません。そのため、まずは不動産会社や司法書士事務所などで、専門家に話を聞くのがおすすめです。