2023.03.21
不動産の購入
令和5年度も継続!東京ゼロエミ住宅助成事業を解説
東京都内で注文住宅の建築を検討している人は「東京ゼロエミ住宅」というフレーズを耳にしたことがあると思います。
ゼロエミ住宅は省エネルギー性を追求した基準の住宅であることは伝わりますが、具体的にはどのようなものなのでしょうか。
本記事では以下の内容について解説します。
●東京ゼロエミ住宅助成事業
●ゼロエミ住宅とは?
●ゼロエミ住宅の技術的要件
●ゼロエミ住宅事業の手続き
これから省エネ住宅の建築を建てる人は、ぜひ補助制度を利用したうえで理想の住まいづくりを進めていかれてはいかがでしょうか。
東京ゼロエミ住宅助成事業とは?
東京都内で利用されているエネルギーの3割が家庭で消費されています。
その家庭部門の省エネルギー対策と断熱性能の高い家を普及させるために、東京都は東京ゼロエミ住宅助成事業に取り組んでいます。
具体的にはどのような事業なのでしょうか。
家庭レベルからの環境対策を目指すゼロエミ住宅助成事業
東京都が都内の温室効果ガス排出量の約3割を占める家庭からの排出量を減らすために、省エネルギー性能を高めた住宅建築を推進する事業がゼロエミ住宅助成事業です。
東京都独自の基準を定め、高い断熱性や省エネルギー性能を取り入れた住宅は、省エネルギー性に優れていて、断熱性にも優れている快適な住まいです。温度変化の少ない住環境を実現することで、体への負担も減らせて、ヒートショック予防にもつながる健康住宅を増やす目的でもあります。
しかしながら、こうした住宅は高性能ゆえに高額になるため、ゼロエミ住宅を普及したい東京都としては、助成金を交付して少しでも金銭的な負担を減らせるように努力しています。
最大で210万円の助成金を受け取れる
東京ゼロエミ住宅では建物の断熱性能、省エネルギー対策の度合いにより、3つの水準を設けています。
令和4年度の実績ですが、水準1では1戸あたり30万円、水準2では1戸あたり50万円、水準3では210万円の助成金を受け取れます。
東京ゼロエミ住宅では太陽光発電システムの導入や蓄電池の設置などは建物の技術的な基準には含めていませんが、これらには別枠の助成金が存在しているのです。そのおかげで、太陽光や蓄電池を設置したゼロエミ住宅ならば、より高額な助成金を受け取れます。
これから令和4年度のゼロエミ住宅に申し込むことは難しいですが、令和5年度も同様の予算枠が組まれているということで、今年度も利用できる助成金制度です。
対象となる住宅
東京ゼロエミ住宅の対象となる住宅は以下になります。
●東京都内で新築された一戸建て住宅やマンション
●住戸および共用部分の床面積合計が2,000㎡未満
●東京ゼロエミ住宅の認証を受けた新築住宅
本記事では注文住宅に着目して解説していますが、分譲マンションも技術的な基準や諸条件を満たせば対象です。
また、数は少ないながらも東京ゼロエミ住宅の基準を満たした新築建売住宅もあります。東京ゼロエミ住宅の対象になった住宅を新築、購入し、申請して審査に通ることで助成金を受け取れます。
そもそもゼロエミ住宅とは?
ゼロエミ住宅は省エネ住宅なのか、ということは伝わりますが具体的にどのようなものなのかイメージがしづらいものです。
ゼロエミ住宅とはどういうものなのか、ZEH(ゼロエネルギーハウス)との違いについて解説します。
ゼロエミッションとはどういう意味?
ゼロエミッションとは廃棄物の排出(エミッション)をゼロにするという考え方です。
「ある産業から出た廃棄物を別の産業が再利用する」ことで、具体的には廃棄生ゴミを使ったバイオマス発電やプラスチックのリサイクルなどが挙げられます。廃棄物の有効活用ができ最終処分場の埋立量も減るので、再利用によっていくつかの業界にメリットが生まれるのです。
住宅業界でのゼロエミには明確な定義こそありませんが、エネルギー源や消費、施行材料や施工法を工夫することで二酸化炭素の排出や廃棄物の量を抑制します。
東京ゼロエミ住宅で活用されている技術
総合的な環境負荷の削減を目指している東京ゼロエミ住宅では、以下の技術や設備を取り入れています。
建物・躯体
●屋根、天井、床の断熱性能向上
●外壁の断熱性能向上
●高断熱ドア、高断熱窓の採用
●維持管理し易い配管方式
設備
●節湯水栓
●高断熱浴槽
●高効率給湯器
●LED証明
●高効率エアコン
●太陽光発電システム(必須項目ではない)
これらの技術や設備により、水道光熱費の削減や高断熱性による快適性などの実益を享受できるので、快適な生活を送れます。
もちろん、より高性能な設備や断熱性の高い建物や仕様になるので建築費用が高額になりますが、増えたぶんは助成金で補填できます。
ZEH(ゼロエネルギーハウス)との違い
高断熱、省エネルギーに特化した住宅といえば数年前から話題になっているZEH(ゼロエネルギーハウス)がありますが、ゼロエミ住宅との違いは目的です。
省エネルギーを突き詰めたZEHに対して、ゼロエミ住宅はエネルギーの消費や二酸化炭素排出量を減らすなど総合的な環境負荷の削減を目的にしています。
なお、ZEHも国土交通省と経済産業省が連携して、ZEH支援事業として補助金制度を設けています。東京ゼロエミ住宅の助成事業とZEH支援事業は併用して申し込むことはできないので注意しましょう。
東京ゼロエミ住宅の技術的要件
東京ゼロエミ住宅で助成金を交付されるためには、東京都が定めた建物の規定を満たさなければなりません。
その規定は3つの水準に分けられていて、全部の水準で満たさなければならない条件と、水準ごとで異なる条件があるので、それぞれを解説します。
必ず満たさなければならない技術的要件
東京ゼロエミ住宅にて必ず満たさなければならない項目は以下の内容です。
部位 | 主な仕様 | |
---|---|---|
開口部の断熱性能 | 窓 | 熱貫流率2.33W/㎡・K以下 |
ドア | 熱貫流率3.49W/㎡・K以下 | |
設備の省エネルギー性能 | 照明設備 | 全室LED(玄関・トイレ・洗面・廊下・階段は人感センサー付) |
冷暖房設備 | 省エネラベル4★または5★以上の高効率エアコン (リビングや主たる居室に必ず設置) |
|
給湯設備 | 高効率給湯器 | |
太陽光発電システム | 可能な限り設置 |
出典:東京都環境局(「東京ゼロエミ住宅」基準の多段階化について)
熱貫流率とは、空間を壁で隔てて1℃の温度差を付けたときに、1時間あたりに1㎡を通過する熱量のことです。
数値が小さければ小さいほど断熱性能が高いため、窓やドアには表記の仕様より優れた熱貫流率の商品を使う必要があります。
高効率給湯器とは具体的にはオール電化住宅で用いられるエコキュートのようなヒートポンプ型給湯器や、ガス給湯器のエコジョーズのような潜熱回収型給湯器が該当します。
太陽光発電システムの設置は条件ではありませんが、できるだけ設置して省エネだけではなく創エネについても取り組んでほしいという要請です。
水準ごとの性能値
東京ゼロエミ住宅では水準によって基準になる性能値が異なり、それにより助成金の金額が増減します。
その内容を以下にまとめました。
外皮計算熱貫流率 | 国が定める省エネルギー基準からの削減率 | 助成金額 | |
---|---|---|---|
水準1 | 0.70W/㎡K | 30%以上 | 30万円 |
水準2 | 0.60 W/㎡K | 35%以上 | 50万円 |
水準3 | 0.46 W/㎡K | 40%以上 | 210万円 |
外皮計算とは外壁、窓、天井、床から逃げる熱損失を合計して、外皮面積で割って求める計算方法です。
外皮とは建物の内部と外部の境界になっている壁、床、天井のことです。
この計算では換気による熱損失は考えていないため、東京ゼロエミ住宅では換気扇に指定がなく、熱交換型など高性能な換気扇を利用する必要がありません。
この水準を言葉で表現すると、水準1では木造住宅の仕様規定、水準2ではZEHの断熱性能、水準3では北海道相当の断熱性能ということになります。
東京ゼロエミ住宅の助成を最大限受けるためには、寒冷地でも最北の北海道の基準が求められ、建物の断熱性能をとても高くする必要があります。夏は涼しく冬は暖かい快適な住居で生活できることが大きなメリットと言えます。
ゼロエミ住宅助成事業の手続き
条件に適合した住宅を建てるだけでは東京ゼロエミ住宅助成事業を利用して助成金を受けることはできません。
合計3回の申請手続きを進め、正しい手順を踏んで申請や着工することで交付を受けられます。
ゼロエミ住宅の手続きの流れや、申請に必要な書類について流れとともに解説します。
事前申請
事前申請は東京ゼロエミ住宅の助成金を受けるための最初の申請で、建築確認申請前に申請するものです。
一般的に新築住宅の検討では、ハウスメーカーを決め、間取りや仕様を決定し、金額が確定したところで建築請負契約を締結します。
同時進行か、建築請負契約が完了したら建築・設計図書の作成を進めます。
建築施工を進めるための設計図書と、建物建築の許認可を取得するための確認申請書、ならびに確認申請図面を作成する流れです。
このタイミングで事前申請を行い、以下の書類が必要です。
●提出書類チェックリスト(原本)
●助成金事前申請書1面・2面(原本)
●事前審査結果通知用郵便はがき(原本)
●建築工事請負契約書の写し
●その他必要と認められる書類
事前申請のポイントは形式が整っている建築請負契約書を提出することです。
契約書に必須の情報は以下の内容です。
●注文者が申請者と同一で、注文者の押印があること
●請負契約者の押印があること
●建築地の地番の明記があること
●契約日の明記があり、事前申請書提出期限の最終日以前であること
●印紙が貼り付けてあり、消印してあること
契約書としては記載されていて当たり前の内容ですが、1つでも抜けていると事前申請の対象外になるので注意が必要です。
また、同時に「東京ゼロエミ住宅確認審査申請書」を提出し審査機関の許可を得て「東京ゼロエミ住宅設計確認書」を取得する必要があります。
これは、建築物の建物の要件が東京ゼロエミ住宅の基準を満たしているかどうかを確認するものです。
交付申請
2回目の申請である交付申請は確認済証が取得したタイミングで申請します。
一般的には確認済証の取得ができればその後着工ですが、東京ゼロエミ住宅の助成金を申請するのならば、ここで申請しなければなりません。
このときは以下の書類が必要です。
●提出書類チェックリスト(原本)
●助成金交付申請書兼実施計画書1面~4面(原本)
●確認済証(写し)
●東京ゼロエミ住宅設計確認書(写し)
●納税証明書(未納税金がないと分かるものの原本)
交付申請書の審査に通過すると「交付決定通知書」が発行され、受領したのならば建物を着工します。
もし、建築中に変更が生じた場合には、設計変更確認書を審査機関に提出し、「東京ゼロエミ住宅設計変更確認書」を取得しなければなりません。
実施報告兼請求書
工事完了して検査済証の取得ができれば3回目となる最後の申請をしますが、その前に「東京ゼロエミ住宅工事完了検査申請」をしなければなりません。
完了検査と同じように、東京ゼロエミ住宅でも完了検査が必要で、審査機関による審査と現地調査がおこなわれます。この審査に通過すれば「東京ゼロエミ住宅証書」を受領でき、これを最後の申請に添付します。
最後の申請に必要な書類は以下になります。
●提出書類チェックリスト(原本)
●助成事業実績報告書兼助成金交付請求書(原本)
●検査済証(写し)
●東京ゼロエミ住宅認証書(写し)
●東京ゼロエミ住宅設計変更確認書(設計変更があれば写しを提出)
●助成金振込口座番号などが分かる通帳などの書類(写し)
以上の書類を提出し、不備がなければ「助成金確定通知書」が発行され、指定口座に助成金が入金されます。
以上の流れになりますが、詳細の書類内容や要件について細かく知りたい場合には東京都地球温暖化防止活動推進センターが発行している東京ゼロエミ住宅導入促進事業「助成金申請の手引」を確認しましょう。
なお、この流れで取得した助成金は、「固定資産の取得または改良に充てるための国または地方公共団体の補助金」に該当します。
住宅ローンを組んでいれば住宅ローン控除のために取得した翌年に確定申告しますが、助成金は総収入金額に算入しないことに気を付けましょう。
まとめ
東京ゼロエミ住宅導入促進事業は省エネルギーで断熱性能も高い、健康にも優しい住宅を普及するために東京都が推進している制度です。
東京ゼロエミ住宅の要件を満たした住宅を建築した場合、申請することで助成金を受け取れます。手続きに必要な申請は3回、加えて2回の審査が必要です。
書類の不備があるだけでも申請が通らなくなってしまうので、丁寧に書類を作成して提出するようにしましょう。
※申請に関するお問合せは、直接、所轄官庁等にお問合せ下さい。