2023.01.06
不動産の購入
不動産の買い替えに使える「住み替えローン」とは?メリットや注意点、流れなどを解説
住宅ローンを返済中の人でも、「住み替えローン」を活用すれば住居を買い替えられます。たとえ旧居を売って売却損が出ても、売却損の分を含めて借り入れることが可能です。
今回はそんな住み替えローンについて、メリットや特徴、利用の流れ、返済シミュレーションなどを解説します。急いで住み替えが必要な人を含め、不動産の買い替えに関心のある人は、ぜひ参考にしてください。
不動産の買い替えには「住み替えローン」
住み替えローンとは、今住んでいる家のローン完済と新しい家の購入資金に使えるローン商品です。「買い替えローン」とも呼ばれます。
例えば、2000万円のローンを組んだ家を1,800万円で売却した場合、200万円の残債が残ります。この時にローン完済のための200万円と、新しい家の購入資金2,000万円の計2,200万円を借り入れるのが住み替えローンです。
ちなみにローンを完済しなければ、基本的に住宅は売却できません。その住宅にはローン完済まで抵当権が設定されているからです。自己資金ないし住み替えローンで残債を貸せば、抵当権を抹消して旧居を売却できます。
住み替えローンを扱う主な金融機関
メガバンクから地方銀行、その他金庫や企業まで、住み替えローンはさまざまな金融機関によって提供されています。それぞれで融資限度額や特徴が異なるため、複数を比較して、自分に合ったものを選ぶのがおすすめです。以下では、住み替えローンを提供する代表的な金融機関10種類をピックアップしたので参考にしてください。
金融機関・商品 | 融資金額 | 特徴 |
三井住友銀行・WEB申込専用住み替えローン | 100万円以上1億円以内(10万円単位) | 8大疾病や死亡により残高が0円に。自然災害による被害でも返済を一部免除。 |
みずほ銀行・みずほ買い替えローン | 50万円以上3億円以内(1万円単位) | 初期費用を抑えるプランあり。産前・産後休業、子供の進学、リフォームなど、ライフイベントに応じた返済額の変更も可能。 |
りそな銀行・りそな住みかえローン | 50万円以上1億円以内(1万円単位) | 「新規住宅の担保評価額+最高1,000万円」まで借入可能。 |
北海道銀行・道銀住宅ローン (住まい建て替えプラン) |
200万円以上1億円以内(1万円単位) | 新築価格の150%以内で借りられる。融資金額の50%以内の金額まで、ボーナス加算返済も可能。 |
横浜銀行・住宅ローン (お住み替え) |
1億円以内(超える場合は要相談) | 新居の新築・購入資金+最大2,000万円まで利用可能。取引内容に応じた金利の引き下げもある。 |
千葉銀行・住み替えコース | 1億円以内(10万円単位) | 買い替えに伴う事務手数料や火災保険料、登記費用なども含めて借入可能。すでに千葉銀行の住宅ローンを利用している場合も申し込める。 |
関西みらい銀行・住みかえ住宅ローン | 50万円以上1億円以内(1万円単位) | 住み替え資金+売却損、もしくは担保評価額の300%のいずれか低いほうまで借りられる。 |
福岡銀行・住み替えローン | 50万円以上1億円以内(1万円単位) | 旧居売却の含み損最大1,000万円まで利用できる。 |
中央労働金庫・ろうきん借換・買替ローン | 30 万円以上 1 億円以内(1 万円単位) | 変動金利と固定金利をミックスすることで年0.05%金利が下がる。 |
アルヒ株式会社・ARUHI住み替え実現ローン | アルヒ株式会社物件評価額の90%以内(10万円単位) | 旧居の売却が成立しなかった場合、事前に取り決めた金額でアルヒに買い取ってもらえる買取保証制度がある。 |
住み替え(買い替え)ローンを使うメリット
住み替えローンを利用すれば、資金繰りや引越しの負担が大きく軽減されます。具体的には以下3つのメリットが挙げられるので、魅力を感じる人でぜひ利用を検討してみてください。
ローンの残債があっても買い替えができる
住み替えローンを使えば、旧居の売却金でローンを完済できなくても、新居を購入できます。言い換えれば、自己資金が少ない状態でも家の買い替えができるということです。
通常、不動産を売却してもローンが完済できない場合は、残債を自己資金で返済しなければなりません。そのため、新居の購入資金が減ってしまうほか、自己資金が足りない場合は貯まるまで待つ必要が生じます。
しかし、住み替えローンでは、ローンの完済分と新居の購入資金の両方を借りることが可能です。よって、自己資金を減らすことなく、すぐに買い替えへと進めます。貯金は多くないが、仕事や子供の学業などの都合で、どうしてもすぐに引っ越さないといけない場合に便利です。
ダブルローンを組まなくて済む
住み替えローンを使うことで、旧居と新居の住宅ローンが重複し、返済がキツくなることを防げます。住み替えローンだと旧居のローンを完済し、ローンを1本化できるからです。
古いローンを返しながら新たにローンを組むダブルローンだと、月々の返済額が増えるので資金繰りが大変になります。また借入金額が大きくなることから、ダブルローンは審査に通るのが難しいです。一定以上の安定した年収がなければ、そもそも利用できないこともあるでしょう。
その点、住み替えローンなら、買い替え後もローンは一つなので、月々の返済額を抑えられます。審査はそれなりに厳しいですが、ダブルローンに比べると利用しやすいでしょう。
新居購入までの仮住まいが必要ない
住み替えローンでは、旧居の売却と新居の購入をセットで考えるので、旧居から新居へ直接引越しできるのが基本です。そのため、新居に移るまでの仮住まいの確保にかかる手間や費用をなくせます。
住み替えローンを使わない場合、まず旧居を売却してローンを完済し、次に新居の購入とローンに申し込むという流れになります。旧居を売ってから新居を買うまでにラグがあるので、仮住まいを探さなければなりません。
以上より、住宅の買い替えをできるだけスムーズに進めたい場合にも、住み替えローンはおすすめです。
住み替え(買い替え)ローンのデメリット・注意点
住み替えローンの利用にあたっては、返済と事前の手続きについて、いくつか気をつけなければならない点があります。詳しくは以下で紹介するデメリットおよび注意点をご覧ください。
住宅ローンより金利が高い
一般的に住み替えローンは、住宅ローンより金利が高い傾向にあります。住宅ローンの金利が0.4〜2.0%ほどなのに対し、住み替えローンの金利は1.5〜4.5%前後です。
場合によっては金利が住宅ローンより3〜4ポイントほど上がるため、月々の支払額やトータルの返済額がかなり多くなる可能性があります。
残債の分だけ返済の負担が大きくなる
住み替えローンでは、新居の購入費用だけでなく旧居のローン残債にもローンを組むため、借入金額が相対的に大きくなります。購入費用よりもローンが多い「オーバーローン」の状態となるため、利用の是非については慎重に判断しなければなりません。
例えば、収入が落ちたときに返済が苦しくなることのほか、返済ができなくなって新居を売るとき、ローンの残債が高額になることも想定されます。そのため、必要に応じて専門家にも相談しつつ、綿密な資金計画を立てたうえで、利用するかを決めるのがおすすめです。
特例によって税金は安くなる可能性がある
マイホームを住宅ローンの残高を下回る金額で売却した場合、損失分をその年の給与所得や事業所得などから控除(損益通算)できることがあります。さらに損益通算でも控除しきれなかった損失額については、翌年以降3年間で控除することが可能です。
そのため、住み替えローンを利用することで金利を含めた返済の負担は大きくなりますが、所得税や住民税はかなり安くなる可能性が考えられます。マイホームで売却損が出たときは、忘れずに確定申告を行いましょう。
審査が厳しいといわれている
住み替えローンは、オーバーローンになることもあって、通常の住宅ローンよりも審査が厳しいといわれています。年収や勤務先、借入履歴などによっては、審査に通らず借入ができない恐れもあるので注意しましょう。
ちなみにクレジットカードのキャッシングを含め、ローン以外に借金が多いと、審査ではマイナスになります。そのため、住み替えローンの審査前は、安易な借り入れを控えるようにしてください。
旧居が売れない可能性もある
家を買い替える際の注意点は、旧居に買い手がつかない可能性もあることです。元の家が売れないと住宅ローンが残ったままになるため、住み替えローンを使うのが難しくなります。
立地条件が悪い物件や二世帯住宅のような特殊な物件などは、売れないケースも十分にあるので気をつけましょう。ちなみに売れないことが不安であれば、不動産会社の「買取保証(売却保証)」を利用するのも手です。買取保証では、期日が過ぎると所定の金額で不動産会社に物件を買い取ってもらえます。
売買のスケジュール調整が難しい
住み替えローンでは、旧居の売却と新居の購入を同時に行う必要があります。抵当権の抹消および設定や、新しい融資金での旧ローンの完済など、手続き上の関係で二つの決済日をそろえなければなりません。
しかし、決済日をそろえるスケジュール調整は比較的大変です。旧居を売ることに関しては、急いで買い主を見つけなければならず、買い手がつかなければ大幅な値下げも考えなければなりません。また売却が早々に決まってしまった場合、今度は新居の購入を急ぐ必要があり、妥協点の多い物件を買わざるを得ないケースもあります。
売買のスケジュール調整が不安な場合は、一つの不動産会社に売却も購入も頼むのがおすすめです。また住み替えのサポートに実績のある業者や専門家に相談するのも良いでしょう。
「買い替え特約」をつけるという対策もある
新居購入の売買契約に「買い替え特約」をつければ、余裕を持って旧居の売却が進められます。買い替え特約とは、「指定の年月日までに旧居を売却できない場合は、購入契約を白紙にする」という条項です。
買い替え特約があることで、旧居売却までに期日が迫り、仕方なく安値で売却する事態を避けられます。しかし、買い替え特約は新居の売主にとってはリスクがあることなので、必ずしもつけられるとは限りません。
そのため、スケジュール調整に不安がある場合は、買い替え特約のことも含めてまずは専門業者に相談するのが無難です。
住み替え(買い替え)ローンを使う流れ
住み替えローンを利用して住居を買い替える際の流れは、以下のようになることが多いです。
- 1.ローン残債を確認する
- 2.不動産会社に売却および購入の相談をする
- 3.資金計画を考え、ローン利用の是非を判断する
- 4.金融機関に住み替えローンを申し込む
- 5.事前審査および本審査を受ける
- 6.融資を受けて、売却と購入を実行する
上記のうち、最も重要なのは「3. 資金計画を考え、ローン利用の是非を判断する」です。
住み替えローンの利用には、金利を含めて返済額が大きくなるというデメリットがあるため、綿密な資金計画が欠かせません。資金計画を考えたり、住み替えローンを使って良いか判断したりするのに自信がない人は、ぜひ一度専門業者にご相談ください。
住み替えのサポートに強い業者なら、売却先や借入先、買い替え特約などを含めて相談に乗ってもらえるため、安心できます。
買い替えローンの返済シミュレーション
例えば、旧居を売却すると300万円の残債が残る状態で、新たに2,000万円の物件を購入するとしましょう。この場合、売却と購入にかかる諸費用を含めて、2,480円ほどの借入が必要です。費用の内訳については以下をご覧ください。
<2,000万円の物件に住み替える際の費用>
- ●旧居のローン完済分 – 300万円 売却時諸費用 – 80万円
- ●新居購入分 – 2,000万円
- ●購入時諸費用 – 100万円
- ●合計 – 2,480万円
※諸費用は概算
さて、住み替えローンを2,480万円借りる場合の返済シミュレーションは以下の通りです。
<2,480万円の返済しミューション>
- ●月々の返済額 – 136,753円
- ●年間の返済額 – 1,641,036円
- ●ローン返済/年収 – 29.84%
※金利は2.5%、返済期間は20年、年収は550万円と仮定
上記の通り、2,480万円を20年で借りた場合、月々の返済額は13万円強、年間では160万円強となります。年収を550万円と仮定すると、年収に対するローンの返済負担率は30%弱です。
一般的に返済負担率は20%以下が望ましいといわれるので、上記のシミュレーションは、無理ではないものの若干きついといえるでしょう。同じ条件で年収が800万円強あれば、返済負担率が20%ほどまで下がるので、現実的なローンの組み方だと考えられます。
ただし、各人の年齢や職業、家族構成など、さまざまな状況によって妥当な資金計画は変わってきます。健全なローンを組んで無理のない買い替えを実現したい人は、一度プロに相談するのがおすすめです。
買い替えローンの組み方や手続きはプロに相談するのがおすすめ
住み替えローンは、住居を買い替えたい場合に便利ですが、資金計画や契約、スケジュール調整などに難しい点も多いです。正しい知識を持って行わないと、あとで返済がキツくなったり、金額面で損をしたりするリスクがあります。
そのため、住み替えローンを利用する際は、住み替えのサポートに優れた不動産業者などに相談するのがおすすめです。適宜プロと話し合うことで疑問や不安を解消しながら、安心して手続きを進めるのが良いでしょう。