2022.11.23
不動産の購入
不動産売買で必要な印紙代はいくら?どのようなケースで必要?
不動産売買を行うときには、印紙代を支払わないといけない書類と支払わなくてもよい書類があります。
なぜ同じ書類なのにもかかわらず、印紙代が必要なときと必要ないときがあるのでしょうか。
それは印紙税法という法律の内容を知ることで分かります。
本記事では、印紙税とは何か、なぜ印紙代が必要な書類とそうでない書類があるのか、印紙税はいくらなのかなど印紙代・印紙税について徹底解説します。
印紙代(印紙税)とは
印紙代は、印紙税法に定められた書類を作成するときに必要です。
印紙税法では作成時に印紙税が課税される書類のことを課税文書と呼んでいます。
不動産売買を行うときには、いくつかの課税文書を作成する必要があります。
不動産売買で印紙代が必要な書類は何?
不動産売買を行うには多くの書類を作成することになります。
そのうち、課税文書にあたる書類がいくつかあります。
不動産売買を行うときに作成する課税文書は次のとおりです。
・不動産売買契約書
・不動産売買契約の変更の覚書や合意書
・建物工事請負契約書
・土地の実測清算確認書
・不動産購入申込書(ただし、別途不動産売買契約書を作成する旨の記載があれば非課税)
・金銭消費貸借契約書(住宅ローンを借り入れるときに金融機関と締結する契約書)
・領収証(個人の場合は非課税)
一方、不動産売買を行うときに作成する書類で非課税になるものは次のとおりです。
・媒介契約書(不動産仲介会社に不動産売却活動を依頼するときの契約書)
・重要事項説明書
・設備表
・物件状況報告書
このように不動産売買を行うときにはさまざまな書類を作成しますが、印紙代が必要な書類と必要ない書類に分かれます。
そのため、どの書類を作成するときに印紙税が課税されるのか把握することが必要です。
どの書類に印紙税が課税されるのか知っておけば、印紙税の納税し忘れを防ぐことができます。
印紙税額はいくら?
印紙税は作成する書類により税額が変わったり、減税が認められている書類があったりします。
ここからはどの書類にいくら課税されるのかを紹介していきます。
不動産売買契約書や工事建築請負契約書
不動産売買契約書や建築・リフォーム請負契約書の作成には減税措置があるため、減税された税額の印紙税を納税します。
なお、印紙税の減税措置が適用されるのは期限があり、平成26年4月1日から令和6年3月31日までです。
表.不動産売買契約書売買金税率
売買金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円以下 | 非課税 |
1万円を超え50万円以下 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下 | 6万円 |
5億円を超え10億円以下 | 16万円 |
1億円を超え50億円以下 | 32万円 |
50億円超え | 48万円 |
表.建築工事請負金税率
建築工事請負金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円以下 | 非課税 |
1万円を超え200万円以下 | 200円 |
200万円を超え300万円以下 | 500円 |
300万円を超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下 | 6万円 |
5億円を超え10億円以下 | 16万円 |
1億円を超え50億円以下 | 32万円 |
50億円超え | 48万円 |
金銭消費貸借契約書や減税措置のない不動産譲渡に関わる書類
金銭消費貸借契約書(住宅ローンを借りるために金融機関と締結する契約書)や減税措置のない不動産譲渡に関わる書類の印紙税額は次のとおりです。
売買金額、ローン借入金額 | 印紙税額 |
---|---|
10万円以下 | 200円 |
10万円を超え50万円以下 | 400円 |
50万円を超え100万円以下 | 1,000円 |
100万円を超え500万円以下 | 2,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 6万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 |
1億円を超え50億円以下 | 40万円 |
50億円超え | 60万円 |
領収証
手付金の領収証の印紙税額は次のとおりです。
なお、個人が発行する領収証は課税文書ではありません。
売主が法人で課税業者の場合は課税文書に該当します。
領収金額 | 印紙税額 |
---|---|
100万円以下 | 200円 |
100万円を超え200万円以下 | 400円 |
200万円を超え300万円以下 | 600円 |
300万円を超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 2,000円 |
1,000万円を超え2,000万円以下 | 4,000円 |
2,000万円を超え3,000万円以下 | 6,000円 |
3,000万円を超え5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 2万円 |
※この後も領収金額が上がることにより税額も上がっていき、10億円まで規定があります。
印紙税の納税方法
印紙税を納税するときには課税文書に収入印紙を貼付し、割り印を押したり、署名をしたりして消印をします。
ただ単に課税文書に収入印紙を貼るだけでは納税したと認められず、収入印紙を貼ったうえで消印まで行う必要があります。
なお、収入印紙は郵便局や法務局で購入することができます。
収入印紙は200円~10万円までありますが、法務局や郵便局ですべての種類の収入印紙を購入できます。
また、200円の収入印紙であればコンビニエンスストアでも購入が可能です。
印紙を貼り忘れたときの罰則
課税文書に印紙を貼り、消印をしなかった場合には罰則が設けられています。
印紙税の罰則は3つのタイプに分けられるため、タイプごとに解説していきます。
なお、課税文書に収入印紙を貼り忘れていたとしても契約自体の効力は発生します。
契約の効力発生と印紙税の納付は別問題です。
課税文書に収入印紙を貼っていないことが税務署調査で発覚した場合
課税文書に収入印紙を貼っていないことが税務署の調査で発覚した場合には、本来納めるべきだった印紙税額の収入印紙を契約書に貼ったうえで、納めるべきだった印紙税額の2倍の金額の過怠税が課税されます。
例えば、2万円の収入印紙を貼らないといけないケースで、収入印紙を貼っていないことが税務署調査で発覚すると、2万円の収入印紙を課税文書に貼ったうえで、4万円の過怠税を納税する必要があります。
課税文書に収入印紙を貼っていないことを税務署に自己申告した場合
課税文書に収入印紙を貼っていなかったことを税務署に自己申告した場合は、本来納付すべき印紙税額の1.1倍の過怠税を納税する必要があります。
なお、収入印紙を課税文書に貼っていないことを自己申告するときには、税務署に対して「印紙税不納付事実申出書」を提出します。
印紙税不納付事実申出書を提出することで、過怠税を本来納税するはずだった印紙税の1.1倍に抑えることができます。
例えば、2万円の収入印紙を貼らないといけないケースで、収入印紙を貼っていないことを税務署に自己申告した場合、2万円の収入印紙を課税文書に貼ったうえで、2万2,000円の過怠税が課税されます。
収入印紙は貼ってあったが消印がしていない場合
課税文書に規定の収入印紙が貼ってあったとしても、消印をしていなければ罰則の対象となります。
収入印紙に消印をしていない場合は、消印をしていない印紙税額分の金額が過怠税として課税されます。
なお、この場合の消印とは、収入印紙と課税文書にまたがって割り印をしたり、署名をしたりすることを言います。
収入印紙だけに消印をしたり、課税文書だけに消印をしても印紙税法の消印とはなりません。
消印をするのは収入印紙を再利用して他の課税文書に利用することを防止する目的です。
印紙税の金額を間違えてしまった場合
印紙税の金額を間違えてしまい、規定の収入印紙を貼ったが納税額が多くなった、少なくなったということも起こりえます。
そのときの対処法を解説していきます。
また、契約がキャンセルになり、契約自体がなかったことになった場合のケースも紹介します。
印紙税を少なく納税してしまった場合
規定の印紙税額よりも少ない収入印紙だけを課税文書に貼ってそのままにしてしまった場合、すぐに規定の納税額になるように追加で収入印紙を課税文章に貼るようにしましょう。
もちろん、この場合も追加した収入印紙に消印をしておかなければなりません。
印紙税を多く納税してしまった場合
規定の印紙税額よりも多い収入印紙を課税文書に貼ってしまった場合は、税額を超過した分の還付を受けることができます。
税務署からの還付を受けるためには「印紙税過誤納確認申請兼充当請求書」を税務署に提出します。
この請求書は各税務署で書式が違うケースがあるため注意してください。
なお、印紙税を多く納税した場合の還付には時効があり、印紙貼付から5年を経過してしまうと印紙税の還付を受けることができなくなります。
契約自体がなくなった場合
不動産売買契約が成立し収入印紙も貼付し消印もした後、当事者の都合により契約解除となった場合では印紙税の還付は受けることができません。
契約は一度成立しており、その時点で印紙税の納税義務は発生しているとみなされます。
また、契約解除をしたのは当事者の合意によるもので、印紙税を納税するかどうかには影響しないという考え方もあるためです。
電子契約の場合は印紙代不要
2022年5月より宅地建物取引業法が改正され、不動産売買契約書や重要事項説明書、媒介契約書は電子契約書で契約することが可能となりました。
印紙税は紙で作成する課税文書に課税されるため、電子契約書には印紙税は課税されません。
そのため、何十億という不動産の売買契約をしても電子契約書で契約した場合、印紙税は非課税です。
まとめ
不動産売買を行うときに一部の書類は印紙税法の課税文書に当たるため、書類作成時に印紙税を納税する必要があります。
不動産売買に関連する主な課税文書は、不動産売買契約書です。
そのほかにも、実測清算確認書や金銭消費貸借契約書も課税文書に該当します。
また、印紙税は課税文書により減税措置があったり、課税額が異なっていたりします。
そのため、どの課税文書にいくら印紙税が課税されるのか知っておかないと、納税額を間違えてしまうことが起きます。
印紙税額を多く納税してしまっても還付手続きを受けることはできますが、税務署に行き還付のための書類を提出するなど面倒な作業をしなくてはいけなくなります。
印紙税額は大きくないものの、納税する必要がある課税文書なのか分からなかったり、納税額を間違えやすかったりします。
そのような間違えを起こさないよう印紙税の知識を持ち、不動産売買を行っていきましょう。