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2023.01.17

不動産の購入

セットバックの費用はいくら?土地はどうなる?

土地を購入する際に「要セットバック」という言葉を目にしたことはないでしょうか。セットバックは、英語で「後退」という意味があります。要セットバックの土地に家を建てる場合、土地に接している道路から一定の距離を離さなければなりません。

要セットバックの土地にはデメリットがあるため、慎重な判断が必要です。

この記事では、以下のポイントを詳しく解説します。

・そもそもセットバックとは何か?
・要セットバックの土地を利用する場合の注意点
・セットバックにかかる費用や手続き方法
・よくある質問

要セットバックの土地が気になっている人は、是非この記事を参考にしてください。

そもそもセットバックとは何か?

セットバック費用

セットバックとは、建物を前面道路から後退させて建てることです。前面道路とは、土地に接している道路のことを指します。

宅地は建築基準法により、4m以上の幅がある道路に2m以上接していなければなりません。これを「接道義務」といいます。土地に接する道路の幅が4m未満の場合、接道義務を果たすために、土地を後ろに下げて幅を広げる必要があるのです。

要セットバックの土地で家を建てたり、建て替えたりする場合は、法律に沿って土地を後退させなければなりません。使える土地面積が減ってしまうというデメリットがあるため、実際に使える部分を計算したうえで購入を検討する必要があります。

地域安全・環境保全のために必要とされている

セットバックが必要な理由は、主に火災や災害時に救急車や消防車、パトカーなどの緊急車両の通行を妨げないようにするためです。

建築基準法による接道義務は、1950年に施行されました。そのため1950年より前の旧市街地や集合住宅には、幅が4m未満の道路が多く見られます。車両の通行が困難な狭い道路をなくして災害に備えるために、セットバックは必要なのです。

また斜線制限を緩和するために、セットバックが行われるケースもあります。斜線制限とは、建物の高さに対する制限のことです。隣の家や道路への日当たりと、風通しの確保を目的としています。

建物の前の道路が狭いと、日当たりや風通しが悪くなるため、制限される高さが厳しくなってしまいます。そこで、セットバックによって斜線制限を緩和するのです。

建築物以外の使い方もNGになる

セットバックした部分は、建物を建てられないうえに、以下のような利用も禁じられています。

・塀や門を建てる
・駐車場にする

セットバックの主な目的が「道路の幅を確保すること」であるためです。自分の土地であっても、自由に使うことはできません。

既存の建物はそのまま利用できる

要セットバックの土地であっても、既存の建物は撤去する必要がなく、そのまま利用できます。

ただ、建て替えたり新たに建物を建てたりする場合は、セットバックしなければなりません。リフォームの場合でも、内容によってはセットバックの対象となります。

要セットバックの土地を購入する場合の注意点

要セットバックの土地を購入する場合、以下の3点に注意しましょう。

・希望の家を建てられない可能性がある
・使い方に制限がある
・固定資産税が非課税となる

それぞれについて、詳しく解説します。

希望の家を建てられない可能性がある

セットバックを行うと、建築可能な土地の面積が減るため、希望する大きさの家を建てられない可能性があります。セットバックは法律で定められた義務であるため、無視はできません。

家を新築したり建て替えたりする場合は、市区町村に建築確認申請を行い、建築許可を受ける必要があります。建築確認申請時に提出した設計図が建築基準法の基準を満たしていない場合、建築許可が下りないのです。

使い方に制限がある

セットバックする部分の土地は道路として利用されるため、使い方に制限があります。交通の妨げとなる使い方はできません。

たとえば駐車場として使ったり、庭のように物を置いたりすることは禁じられています。

「何も建てなければ大丈夫」というわけではなく、セットバックした土地は舗装し、道路として利用できる状態にしておく必要があるのです。

固定資産税が非課税となる

土地のうちセットバックした部分は、所有者以外にも多くの人が使うことになるため、固定資産税が非課税となります。

固定資産税は、土地などの不動産を所有している人が毎年納める税金です。ただ、自動的に非課税になるわけではなく、セットバック後に申告する必要があります。

セットバックにかかる費用は?

セットバックを行う際には、さまざまな調査や工事が必要になるため、費用がかかります。

この章では、セットバックにかかる費用の相場や負担者、費用項目などについて詳しく解説します。

セットバック費用の相場

セットバックにかかる総費用の相場は、30万円〜80万円ほどです。

以下の2点によって、費用が変わります。

・隣の土地との境界が明確になっているかどうか
・自治体に譲渡するかどうか

隣の土地との境界が明確になっていない場合や、セットバックした土地を自治体に譲渡する場合、境界の確認作業が必要になります。そのため費用が高くなりやすいです。

セットバックにかかる費用の負担者

セットバックにかかる費用の負担者は、自治体によって異なります。
考えられるパターンは、以下のとおりです。

・土地の所有者が全額負担
・自治体が全額負担
・自治体が補助金として一部費用を負担

セットバックした部分を自治体に譲渡する場合、維持管理費は自治体の全額負担となるケースが一般的です。セットバックを行う際には、費用の負担者について、事前に自治体に確認しておきましょう。

セットバックにかかる費用項目

セットバックにかかる費用の項目は、以下のとおりです。

・土地測量費
・分筆登記費用
・道路整備費用
・既存建築物の撤去費用

それぞれの費用について詳しく解説します。

土地測量費

土地測量は、現況測量と確定測量があります。

現況測量とは、土地の状況をそのまま調査することです。対象地におけるおおよその寸法や面積を、1週間ほどかけて測ります。費用相場は10万円〜30万円ほどです。

確定測量とは、隣地との正しい境界を測り、確定することです。土地家屋調査士に依頼するのが一般的で、隣接地の所有者に立ち会ってもらう必要があります。

図面などを基に、境界を正確に測って確定するため、完了するまでに3ヶ月ほどかかります。費用相場は40万円〜80万円ほどです。

分筆登記費用

分筆登記は、土地を分割して登記するための手続きです。

土地は「1筆」「2筆」と数えることから、土地を分割することを「分筆」といいます。分筆登記は、土地測量とセットで行います。

分筆登記を行っていないと、固定資産税の免税申請ができない可能性があるため注意が必要です。分筆登記の申請は、土地家屋調査士に依頼するのが一般的で、5万円〜7万円ほどの費用がかかります。

道路整備費用

セットバックした部分は、道路として利用できるように舗装をする必要があります。

舗装にかかる費用の相場は、1㎡あたり5,000円ほどです。セットバックする土地の面積が広くなるほど、費用も高くなります。

舗装費用に加えて、重機の搬入出費用や諸経費で5万円ほどの費用負担が必要です。

既存建築物の撤去費用

セットバックする部分に建物が建っている場合、撤去のための費用もかかります。撤去の範囲によって費用に幅があるため、専門業者に見積もりを依頼しましょう。

建物以外にも、フェンスや水道管なども撤去する必要があります。

自治体から補助金が出るケースもある

セットバックは地域の防災に貢献することになるため、自治体から補助金が出るケースがあります。

東京都世田谷区では、2つ以上の道路に接した土地をセットバックして寄付すると、最大200万円の補助金が支給されます。

補助金の有無や条件は自治体によって異なるため、事前に確認しておきましょう。

非課税申請を忘れずに

土地のセットバックした部分は、申請さえすれば固定資産税が非課税になります。自動的に非課税になるわけではないため、忘れずに申請しましょう。

また、分筆登記をしないと、セットバックした部分にも固定資産税がかかるため注意が必要です。

セットバックの手続き方法

セットバックの手続きの流れは、以下のとおりです。

①現地調査
②事前協議書提出
③測量
④事前協議
⑤建築確認申請
⑥工事開始
⑦補助金申請

それぞれの手続き方法について、詳しく説明します。

現地調査

はじめに現地調査によって「土地が接道義務を果たしているか」を確認します。目視ではなく、図面を見て判断しなければなりません。道路に接しているように見えても、土地と道路の間に別の土地がある場合もあるため、注意が必要です。

図面は、自治体の建築指導を担当する部署で取得できます。その際に、セットバックの補助金についても確認しておきましょう。

事前協議書提出

現地調査の結果、セットバックの対象となった場合は、自治体に「事前協議書」を提出します。事前協議書は、自治体の窓口やホームページで取得できます。建築確認申請の30日前までに提出するのが一般的です。

スムーズに提出するため、事前に自治体のホームページで必要書類などを確認しておきましょう。

測量・事前協議

事前協議書を提出し受理されると、自治体によって現地や図面が確認されます。測量の結果や図面などを基に、事前協議が行われるのです。

事前協議では、セットバック後の道路区間における管理についても協議されます。

建築確認申請・工事開始

事前協議が完了したら、建築確認申請へと移ります。建築確認申請では、建築確認申請書や同意書などの提出が必要です。

建築確認に合格すると確認済証が発行され、セットバック工事に着手できます。

補助金申請

セットバックにおいて、補助金の条件を満たしている場合は申請が必要です。補助金の条件や必要書類は、自治体によって異なります。

工事を始める前に申請が必要な場合もあるため、事前に確認しておきましょう。

セットバックに関するよくある質問

セットバックに関するよくある質問は、以下のとおりです。

・セットバックした土地の所有権は?
・セットバックした部分に地下室を作れる?
・セットバック部分を私的に利用しても大丈夫?

1つずつ回答していきます。

セットバックした土地の所有権は?

セットバックした土地の所有権は、自治体によって異なります。
基本的には、以下のパターンが多く見られます。

・所有権はそのままで、私有地として所有し続ける
・セットバックした土地を自治体に寄付し、所有権も譲渡する

自治体に状況や希望を伝え、相談してみましょう。

セットバックした部分に地下室を作れる?

セットバックした部分の土地には、基本的に地下室を作ることはできません。地下の部分もセットバックの対象になるためです。

所有権を持っている、もしくは交通の邪魔にならないという理由があっても、基本的に地下室を作ることは禁止されています。

セットバック部分を私的に利用しても大丈夫?

セットバック部分を私的に利用することはできません。救急車や消防車などの通行を妨げないようにすることが、セットバックの主な目的であるためです。

いつでも通れる状態にしておく必要があるため、以下のような利用はできません。

・花壇や植木鉢を置く
・駐車場や駐輪場として利用する
・倉庫を設置する

セットバック部分は、自由に使える土地ではないことを頭に入れておきましょう。

セットバックのまとめ

セットバックの主な目的は、緊急車両の通行を妨げないようにするためです。

セットバックが必要な土地は、自由に使える面積が小さくなってしまうというデメリットがあります。一方でメリットとして、道路へのアクセスが改善され不動産の価値が高まるという点が挙げられます。

セットバックには多くの費用がかかり、その負担者は自治体によって異なるため注意が必要です。要セットバックの土地を購入する場合は、自治体の補助金制度や土地の取り扱い方法について、事前に確認しておきましょう。

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