2022.12.30
不動産の購入
地価が上がりそうな地域とは?地価の変動に影響を与える要素も解説
「地価が上がりそうな地域はどこだろう?」
「今後売買するならどの地域の土地が良さそう?」
「地価はどんなときに変動するんだろう?」
このように、地価の変動について疑問を持っている人が多いようです。
特にコロナショック以降は、ライフスタイルやワークスタイルが大きく変化したことで人々のニーズも変わり、地価の予測が立てづらくなっています。
本記事では、公開されている統計データなどを基に、過去10年における地価の変動を読み解きつつ、2023年以降の傾向について予測しました。
また、そもそも地価はどのような出来事に影響を受けるかという要素についても解説します。
なお、本記事はあくまでデータに基づいた予測であり、必ずしも結果を保証するものではありませんのでご了承ください。
【結論】地価が上がりそうな地域
要点を押さえてデータなどを見ていただいたほうが理解しやすいと思うので、先に結論からお伝えします。
- ・今後地価が上がりそうな地域は「地方四市>首都圏>大阪・名古屋」
- ・今後地価が微増、または横ばいの地域は「郊外エリア」
- ・今後地価が下落する可能性があるのは「その他の地方圏」
各種データを読み解いていくと、意外にも首都圏を含む三大都市圏よりも、地方都市のほうが大きく地価が上昇していることがわかりました。
とはいえ、地価は様々な要因で上下するうえ、あくまでこれは平均値から割り出した傾向であるという点には注意が必要です。
備考:地価変動の歴史要約
地価の変動を理解するためには、これまでの大きな流れも理解しておく必要があります。
バブル期から現在までの推移を要約すると、以下のようになります。
- ・1980年代後期〜1991年までは大幅に上昇、「土地神話」と呼ばれた時代
- ・1992年にバブルが崩壊、2006年まで大幅な下落が続いた
- ・2007年、15年ぶりに上昇に転じるも、リーマンショックにより再び下落
- ・2014年にようやく上昇に転じ、現在に至るまで上昇傾向が続く
このような過去の流れがあり、現在は全国的に上昇傾向にあるという状況です。
データから見る地価変動の傾向
地価の変動については、毎年国土交通省が調査結果をまとめた「地価公示」というものを公開しています。
上記の結論を踏まえつつ、実際のデータを見ていきましょう。
過去10年間の地価の推移
ここでは住宅地の「平均地価変動率」という、前年比で何%地価が変動したかを表すデータを10年分抜粋してまとめてみました。
年 | 全国 | 三大都市 | 地方四市 | 地方圏 | 東京圏 | 大阪圏 | 名古屋圏 |
2013 | -1.6 | -0.6 | -0.2 | -2.5 | -0.7 | -0.9 | ±0 |
2014 | -0.6 | 0.5 | 1.4 | 1.5 | 0.7 | -0.1 | 1.1 |
2015 | -0.4 | 0.4 | 1.5 | 1.1 | 0.5 | 0 | 0.8 |
2016 | -0.2 | 0.5 | 2.3 | 0.7 | 0.6 | 0.1 | 0.8 |
2017 | ±0 | 0.5 | 2.8 | 0.4 | 0.7 | 0 | 0.6 |
2018 | 0.3 | 0.7 | 3.3 | -0.1 | 1.0 | 0.1 | 0.8 |
2019 | 0.6 | 1.0 | 4.4 | 0.2 | 1.3 | 0.3 | 1.2 |
2020 | 0.8 | 1.1 | 5.9 | 0.5 | 1.4 | 0.4 | 1.1 |
2021 | -0.4 | -0.6 | 2.7 | -0.3 | -0.5 | -0.5 | -1.0 |
2022 | 0.5 | 0.5 | 5.8 | 0.5 | 0.6 | 0.1 | 1.0 |
データ引用元:国土交通省「地価公示」
※「三大都市」は東京、大阪、名古屋の平均
※「地方四市」は札幌市、仙台市、広島市、福岡市の四市で、公示独特の呼び名
※「地方圏」は地方四市を除くその他のエリアの平均
過去10年間の傾向|地方都市が続伸
上記のデータから読み取れる傾向をまとめると、以下のとおりです。
- ・全国平均は低い水準で横ばい
- ・2013年以降、アベノミクスと低金利政策の影響で大都市圏は概ね上昇傾向
- ・なかでも地方四市は9年連続で地価が上がり続けており、上昇幅も大きい
- ・三大都市は緩やかながらも上昇傾向
- ・2021年はコロナショックで一時下落するも、翌年には回復傾向が見られる
あくまで過去の傾向ではありますが、日本中三大都市よりも、地方四市のほうが地価が大きく上昇していることがわかります。
住宅も上昇傾向のため、建物の経年劣化を加味したとしても、地方都市では購入時よりも不動産全体の価値が上がっているというケースも珍しくなさそうです。
2022年における関東圏の変動率ランキング
少し範囲を絞り、関東圏の地価変動率を抜粋します。
なお、ここで言う関東地方は「東京都」「神奈川県」「埼玉県」「千葉県」「群馬県」「栃木県」「茨城県」の1都65県を指しています。
順位 | 都道府県 | 前年比 |
1位 | 東京都 | 1.72% |
2位 | 千葉県 | 1.24% |
3位 | 神奈川県 | 1.21% |
4位 | 埼玉県 | 0.96% |
5位 | 茨城県 | 0.11% |
6位 | 栃木県 | -0.72% |
7位 | 群馬県 | -0.93% |
※データ引用元:土地データ
2022年における首都圏の地価変動率TOP10
さらに範囲を絞り、首都圏の住宅地に絞った2022年のデータが以下となります。
順位 | 住所 | 前年比 |
1位 | 渋谷区恵比寿西2-20-7 | 5.9% |
2位 | 港区赤1-14-11 | 3.3% |
3位 | 千代田区六番町6番1 | 2.5% |
4位 | 港区南麻布1-5-11 | 2.5% |
5位 | 千代田区三番町6番25 | 2.5% |
6位 | 港区南麻布4-9-34 | 2.2% |
7位 | 港区赤坂6-19-23 | 2.2% |
8位 | 港区白金台3-16-10 | 1.8% |
9位 | 千代田区一番町16番3 | 1.7% |
10位 | 千代田区九段北2-3-25 | 1.7% |
上昇率1位は渋谷区恵比寿ですが、TOP10のほとんどが「千代田区」と「港区」であることがわかります。
2023年以降の地価動向をエリアごとに予測
過去10年のデータと経済情勢などを基に、2023年以降の動向を「大都市圏」「地方四市」「郊外圏」「地方圏」の4つのエリアに区分して予測してみました。
一定の傾向はあるものの、リーマンショックやコロナショックのような世界恐慌レベルの不測の事態もあり得るので、あくまで参考程度として捉えてください。
大都市圏の地価
2013年以降は全国的に上昇傾向にありますが、特に大都市圏の地価は今後も上がり続けるものと考えて良さそうです。その根拠は次のとおりです。
- 一都三県は人口が増え続けており、不動産需要も高止まりしている
- 仕事を求めて、地方から大都市圏に移住する人が常に存在する
- コロナショックの影響で、利便性の高い都市圏の人気が高まっている
- 歴史的な円安の影響で、海外投資機関の動きが活発化している
このような要因が重なり、実際の経済状況とはあまり連動せずに地価が変動しているという事実があります。
地価も建物も、需要とともに価格が上昇するというのが鉄則なので、しばらくは上昇傾向が継続すると考えられます。
地方四市の地価
過去のデータで一番顕著な上昇を見せているのがこのエリアで、2023年以降も伸び続けると考えられます。
「四市」とひと括りにされてはいるものの、内訳を見ると札幌・仙台・福岡の上昇率が大きく、広島は一段低い上昇幅となっています。
なかでも札幌市周辺の地価上昇は凄まじい勢いで、2022年における住宅地の変動率ベスト10のうち、実に7つが札幌市周辺という結果になっています。
ビッグボスが世を賑わせているボールパークの建造や、札幌市中心部の再開発などが後押ししているものと考えられます。
福岡市でも「天神ビッグバン」と呼ばれる再開発計画が次々と実行されており、地方都市の注目度が高まっているようです。
郊外圏の地価
一方の郊外は横ばいか微増と考えられます。
現在の日本国内は都市集中型の傾向が加速していますが、中心部よりはリーズナブルな郊外にはベッドタウンとして一定の需要があります。
これまでになかった例として、コロナの影響による在宅ワークの活発化が挙げられます。
これによって通勤における交通アクセスの優先度が下がり、住みやすい郊外に転居する人たちも少なからず増えています。
また、中心部の需要が高まることで地価が上がると解説しましたが、一定の水準を超えて割高になってくると、郊外に人が流れて需要が高まることも予想されます。
地方圏の地価
地方圏の地価は上昇よりも下落のリスクのほうが高いと考えるべきでしょう。
前述のとおり、人の流れは各都市の中心部に向かう傾向が強く、地方の人口は減少傾向が続いています。
地方圏では高齢化が止まらず空き家問題も年々深刻化しています。これは土地や建物が余ることを意味しており、一層地価の下落に拍車がかかると考えられます。
また、若い世代も雇用の多い中心部に出ていく傾向が強く、地方圏の人口減少の一因となっています。
需要が下がれば当然地価も下がるので、今後の上昇はあまり期待できません。
2023年以降の地価予測まとめ
ここまでの話を要約すると、以下の5点に集約されます。
- ・ウィズコロナの浸透で需要が増加、従来の人気エリアは上昇傾向
- ・都市部はどの地域も上昇傾向
- ・特に地方都市の地価上昇率は三大都市以上
- ・郊外圏は概ね横ばい
- ・地方圏はどの地域も下落傾向
ここで冒頭でお伝えした結論をもう一度見てみましょう。
- ・今後地価が上がりそうな地域は「地方四市>首都圏>大阪・名古屋」
- ・今後地価が微増または横ばいの地域は「郊外エリア」
- ・今後地価が下落する可能性があるのは「その他の地方圏」
地方四市をさらに分解すると「札幌>仙台=福岡>広島」です。
過去10年と2022年の最新データを基に考察すると、以上の結果となりました。
地価変動を読み解くポイント
ここまでに解説したとおり、地価変動は様々な外的要因によって起こります。
裏を返せば、この要因を理解しておくことで、ある程度その後の地価変動の予測が立てられるということでもあります。
最後に、地価変動に影響を与える要因について、過去の事例を交えて解説します。
地価に影響を与える経済的要因
- ・災害により明らかになった地質
大きな災害の後、地盤沈下や液状化といった地質の脆弱さが露呈したことで、地価が大幅に下落した例が多々あります。
防災意識が高まることで、引っ越しの際にハザードマップを確認する機会も増え、地質に問題があるとわかった土地は人気が無くなり、地価が下落する要因となっています。
- ・海外投資家・投資機関による買い占め
元々、海外から見た日本の不動産は「ローリスク・ハイリターン」のお買い得物件として注目を集めてきました。
為替が円安方向に傾くとさらにお得感が増し、海外の投資家や投資機関の動きが活発化する(買い手がつきやすくなる)ため、地価が上昇する要因となります。
- ・金融緩和政策
2013年に始まった「異次元金融緩和」により住宅ローンの金利が大幅に引き下げられました。
この政策により、これまで金銭的な理由でマイホーム購入を控えていた層が住宅を購入するようになり、地価も上昇するという連鎖が起こりました。
逆に金融緩和が終了すると買い控えの状態に戻るため、地価が下落することもあります。
地価に影響を与える社会的要因
- ・地域の再開発
前述した札幌の再開発や、天神ビッグバンなど、再開発計画が発表された直後から地価が上昇するというケースは決して珍しくありません。
景観が良くなり利便性も向上する場合が多く、周辺エリア全体の人気が上昇するためです。
- ・大企業の参入
大企業が参入すると、周辺地域に引っ越してくる従業員が増えます。
このため周辺の不動産が一時的な特需となり、地価が上昇する要因になります。
- ・大企業の移転や倒産
こちらは参入の逆パターンです。
大企業がその土地から無くなることで、周辺に住んでいた従業員もその土地を離れていき、不動産が供給過多となって地価が下落する場合があります。
- ・大型施設の建設
基本的には大企業の参入と近い現象が起こります。
大型商業施設やショッピングモールが建設される場合も、同じ理由で地価が上昇する傾向があります。
近年では北海道北広島市のボールパークが顕著で、全国的に見てもトップクラスの上昇率を誇っています。
- ・地域のブランディング
駅や市街地から遠く、利便性が悪いにもかかわらず地価が上昇する例もあります。
たとえば「セレブの街」といったブランディングが認知されてくると、「いつかは住みたい憧れの街」として人気が高まっていきます。
都内であれば二子玉川や武蔵小杉といったエリアがこのパターンと言えるでしょう。
- ・人口増加
大企業の参入でも触れましたが、何らかの理由で人口が増加すると需要に対して供給が追いつかなくなり、地価は高騰します。
建設物だけでなく、自治体の移住支援といった地域のルール変更などによっても人口増加が見込まれます。
地価が上がりそうな地域まとめ
地価の変動を理解するためには、全体の大きな流れと、エリアごとの特性、個別で起こる細かな事象などを総合的に分析する必要があります。
また、地価に影響する要素を理解しておくことで、ある程度先の予測を立てることも可能です。
インターネットから様々な資料やデータも手に入るので、色々と考察してみてはいかがでしょうか。