2022.11.13
不動産の購入
買い替えローンの審査が厳しいのはなぜ?通りやすくするコツと利用時の注意点
不動産の売却金額でローンを完済できない場合に、不足分を上乗せして借り入れることで、住宅ローンの返済中でも、新しく不動産を購入できる「買い替えローン」。
手持ち資金の持ち出しを抑えながら、不動産の買い替えが叶うこの住宅ローンは、上手に活用すれば、転勤や家族構成・ライフスタイルの変化などにより、引越しを余儀なくされた場合でも、すぐにまとまった資金を確保できるという大きなメリットがあります。
しかしその一方で、買い替えローンは一般的な住宅ローンと比較して、審査が厳しいだけでなく、利用するにあたって注意しなくてはならないポイントがいくつかあります。
本記事では、買い替えローンの審査に通るためのポイントと、買い替えローンを利用する際の注意点について徹底解説します。
1.買い替えローンの審査が厳しい理由
買い替えローンは通常の住宅ローンと比較して、審査が厳しく通りにくいと言われています。その理由は、借入金額が大きくなるためです。
冒頭でも述べたとおり、買い替えローンでは新居の購入費用に加えて、返済中の住宅ローンの残債のうち、旧居の売却金額で返済できない部分を上乗せして借入を行います。
通常の住宅ローンよりも借入金額が多くなるということは、融資を行う金融機関にとっては、ローン契約者が返済不能に陥ることにより、資金回収ができなくなる可能性も高まるということです。そのため、金融機関が買い替えローンの審査を行う際、勤務先や勤続年数、収入や過去のローン返済履歴などを、より厳しく審査するのです。
2.買い替えローンで審査に通りやすくするポイント
審査に通らなければ買い替えローンを利用できず、新しい住居を購入することも難しくなります。ここでは、買い替えローンの審査に通りやすくするポイントを紹介します。
1)夫婦2人で買い替えローンを借りる
申込者1人分の収入や資産状況に不安がある場合には、夫婦2人でローンを組むという選択肢があります。
夫婦2人で組む買い替えローンのタイプは2種類。1つは夫婦2人がそれぞれローンを組む「ペアローン」、もう1つは2人の収入を合算して、1本のローン契約を結ぶ「連帯債務型」です。
申込者1人で組む住宅ローンと比較して、2人の収入を合算して審査が行われるぶん、審査に通りやすく、借入金額も大きくできる可能性があります。
2)不動産会社に金融機関を紹介してもらう
売買仲介を請け負っている不動産会社のなかには、買い替えローンを取り扱っている金融機関を紹介してくれる業者もあります。
買い替えローンの申し込みは、自宅の売却金額が確定する前に行うため、最終的な売却金額が上下することも少なくありません。また、買い替えローンを利用するためには、旧居の売却のタイミングと、新居への入居のタイミングを揃える必要があるため、仲介に入る不動産会社の力を上手に活用する必要があります。
ただし、不動産会社で紹介してもらえる金融機関の買い替えローンが、必ずしもお得かというとそうとは限りません。どの買い替えローンを利用すべきかは、申込者によって異なるため、自分で探した金融機関のプランのほうが適している可能性もあります。
最終的にどの金融機関を利用するかは、慎重に比較したうえで決めるようにしましょう。
3)転職してすぐの買い替えは避ける
買い替えローンに限らず、住宅ローンの審査では、申込者の収入や資産状況だけでなく、勤務先や勤続年数も判断基準になります。住宅ローンはほかのローンと比較して、特に返済期間が長いことから、安定した収入を得ているかが重要なのです。
たとえ収入アップのための転職だったとしても、転職直後に買い替えローンの審査を受けると、収入の安定性の面で不安要素があるため、審査に落ちる可能性が高まります。
転職を検討しているようであれば、新居を購入して融資が実行されてからがおすすめ。どうしても転職後に審査を受けなければならない場合は、可能な限り期間を空けるようにしましょう。
4)新居の資産価値にこだわる
買い替えローンの審査時には、申込者の与信だけでなく、新しく購入する不動産の資産価値も考慮されます。
その理由は、住宅ローンは不動産を担保にして融資を行うためです。担保になった不動産は、万が一契約者が返済不能に陥った際に、裁判所により競売にかけられ、得られた売却金額をローン返済に充てることになります。
つまり、新居の資産価値が高ければ高いほど、審査に通る可能性が高くなるということです。
ただし、資産価値の高い不動産はそのぶん購入金額も高くなるため、高額な不動産に手を出してしまうと、かえって審査が通りにくくなってしまいます。物件を決定する際は、自分の返済能力と資産価値のバランスを見極めることが大切です。
3.買い替えローンを利用する際の注意点
買い替えローンを上手に利用することで、自宅の売却と新居の購入を同時に叶えられますが、利用時には注意しておきたいポイントがあります。
1)買い替えローンの返済が苦しくなる可能性もある
買い替えローンでは、新居の購入費用に加え、自宅売却後に残る住宅ローン残債の金額も上乗せして融資を受けることになります。通常の住宅ローンよりも借入金額が多くなるぶん、月々の返済金額が増えるという点は、理解しておかなくてはなりません。
買い替えローンの契約時点で、安定した収入があり健康な人の場合であっても、将来的に一時的に収入が減ったり、怪我や病気により収入が途絶えてしまったりすることも考えられます。万が一のために残しておくべき資金まで、買い替えローンの返済に充ててしまうと、最終的に返済自体が難しくなる可能性も否定できません。
返済計画を立てる際には、上記のような突然の出費以外にも、予定している大きなライフイベント(結婚・出産・進学・退職など)での支出も考慮したうえで、余裕をもって返済できる範囲の借入を行いましょう。
2)同じ銀行では住み替えローンを組めない
マイホーム購入時に住宅ローンを組んだ金融機関で、買い替えローンの取り扱いをしている場合でも、同じ銀行では再度ローンを組めないのが一般的です。
金融機関や住宅ローン金利の利率によっては、交渉することで同じ銀行内で買い替えローンを組める場合もあります。しかし、超低金利の状態が続く現在の日本においては、同じ銀行内で借換えを行っても、銀行側にメリットがないため、申し出ても断られるケースは少なくありません。
こうした理由から、買い替えローンを利用する場合は、最初のローンとは別の金融機関に申し込む必要があります。ローン契約にかかる事務手数料や保証料といった諸費用がかかったり、必要書類の準備や審査に時間がかかったりするため、買い替えローンを検討する場合は、こうした費用や手間も考慮しておくことが大切です。
4.買い替えローンの審査に通らなかったときの対処法
上記のような対策を講じていても、審査落ちする可能性も十分に高いといえる買い替えローン。しかし、一度審査に落ちたからといって、すぐに諦める必要はありません。
ここでは買い替えローンの審査に落ちてしまったときにできる対策と、買い替えローンを利用せずに新しく不動産を購入する方法を紹介します。
1)つなぎ融資を使う
新居の購入を先行して進める場合、「つなぎ融資」を受けるという選択肢もあります。
「つなぎ融資」とは、旧居の買い手が見つかるまでの間、つなぎとして借り入れられる融資制度のことを指します。買い替えローンを利用せずに新居を購入すると、新居の住宅ローンはスタートしているのに、旧居のローンも残っている、いわゆる「ダブルローン」状態になります。
ダブルローン状態では月々の返済額が多くなってしまい、家計が大きく圧迫されます。つなぎ融資を利用することで、このダブルローン期間の負担を減らすことが可能になるのです。
利用する流れとしては、まずはつなぎ融資を受けて新居を購入し、旧居が売れたタイミングで、売却金によって融資額を一括返済するというもの。一般的に融資期間は6ヶ月~1年以内です。
つなぎ融資を利用する際の注意点は大きく分けて2つ。
1つ目は金利が買い替えローンよりも高く設定されているのに加え、事務手数料や保証料といった費用が発生する点。
そしてもう1つは、多くの場合で買取保証制度とセットになっている点です。買取保証制度というのは、つなぎ融資の期間が終了しても、旧居の買い手が決まらなかった場合に、不動産会社が物件の査定額の80%程度で買い取る、というものです。
デメリットも考慮したうえで、利用するかどうかを慎重に判断することが大切です。
2)ダブルローン
つなぎ融資を利用せずに新居を購入する場合、旧居の住宅ローンはそのままに、並行して新居のぶんの住宅ローンも借りる「ダブルローン」という選択肢もあります。
ダブルローンにする場合は、本当に毎月返済できるのか、完済できるのかを慎重にシミュレーションすることが重要。返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)や預貯金に余裕がある場合は問題ありませんが、ダブルローンを利用することで月々の返済額が倍近くになるため、家計が圧迫されやすいだけでなく、当然金融機関による審査も厳しくなります。
返済不能に陥って新居を手放すことになってしまっては本末転倒。よほど資金計画に余裕がある場合のみ、利用を検討しましょう。
3)複数社に査定依頼を出す
買い替えローンの審査が通らない理由のひとつとして、借入金額が多いことも考えられます。借入金額を減らすことができれば審査に通る可能性があがりますが、これには売却する不動産の査定金額が大きくかかわってきます。
買い替えローンの借入金額を決める際、すでに借りている住宅ローンの残債から、不動産の売却予定額を差し引いて、残った金額を新居の購入金額に上乗せします。売却金額が多ければ多いほど、借入金額を減らせるという仕組みです。
住み替えを検討している人のなかには、自宅の査定を1社にしか依頼していない場合も少なくありません。しかし実は、不動産査定には明確な基準がありません。査定する不動産会社によって、異なる金額が提示されることも少なくなく、場合によっては数百万円の差が出ることもあるのです。
1社のみに査定を依頼していると、不動産本来の価値を正しく評価してもらえていない可能性があります。複数社に査定依頼を出すことで、所有する不動産の市場相場を知ることもできるため、購入希望者から値下げ交渉をされた際にも、対等に取引を進められます。
不動産会社を利用する場合、売買契約締結までは手数料などの費用はかからないことがほとんどです。最初のうちは複数社に査定依頼を出し、納得のいく価格で売却してくれる不動産会社を選びましょう。
4)ほかの金融機関に申し込む場合は期間を空けて
どうしても買い替えローンを利用して新居を購入したい場合は、審査落ちしてすぐにほかの金融機関に申し込むことは避けましょう。
その理由は、金融機関に買い替えローンの申し込みをすると、その時点で信用情報機関にローンへ申し込んだことが記載されるためです。信用情報機関に登録された情報は、ほかの金融機関が審査を行う際に参照されるもので、「ほかの金融機関で審査落ちした」ということが知られてしまいます。つまり、買い替えローンの審査に落ちてすぐ、ほかの金融機関に申し込むと、さらに審査が厳しくなる可能性があるのです。
ローンへの申し込み履歴は6ヶ月間登録されることになっています。ほかの金融機関に申し込んで審査を受ける場合は、前回の申込から6ヶ月以上空けることをおすすめします。
買い替えローン利用時は不動産会社に相談
買い替えローンは通常の住宅ローンと比較して、審査内容を慎重に判断されます。そのため、あらかじめ入念に準備をしておかなくては、審査落ちしてしまう可能性があるだけでなく、売却活動や新居購入のスケジュールにも大きく影響することになりかねません。
買い替えローンを利用して新居を購入したい場合は、まずは売買専門の不動産会社に相談しましょう。そこで自宅を正しく査定してもらい、どのくらい住宅ローンの残債が残る可能性があり、いくらの融資を受ける必要があるのか、買い替えローンの審査に通るにはどのような物件を選ぶべきかを判断していきます。
近年では、宅地建物取引士だけでなく、お金の専門家であるファイナンシャルプランナーが在籍する不動産会社もあります。特に、買い替えローンを利用すると、通常の住宅ローンと比較して返済金額が多くなったり、返済期間が長くなったりするため、ファイナンシャルプランナーの力を借りて、ライフプランや資金計画を立て直すことも重要です。
納得のいく条件で自宅を売却し、無理のない返済計画を立てるためにも、不動産のことからお金のことまで、親身になってアドバイスしてもらえる不動産会社を探しましょう。