2022.12.30
不動産の購入
建ぺい率とは?その詳細や注意点について詳しく解説!!
「建ぺい率」という言葉をご存じでしょうか?住宅等の建屋建築する際、聞かれたことがある人も多いのではないでしょうか?
また土地利用制限には「建ぺい率」だけでなく、「容積率」や「用途地域」などのなじみのない用語も含まれるため、専門機関などに問い合わせする人が増えているとの話があります。
そこで本記事では、土地を検討されている人向けに「建ぺい率」「容積率」および「建ぺい率と容積率の計算方法」を分かりやすく解説します。
建ぺい率について知りたい人やこれから建屋建設を検討されている人はこの記事を参考にしていただければ幸いです。
建ぺい率とは何か?
建ぺい率とは、「敷地面積(土地面積)に対する建物面積(建物を真上から見たときの面積)の割合」を指します。建築基準法53条に定められた、建物の大きさを一定の割合に制限するために定められた規則です。
土地を購入して建物を建てる場合、「建ぺい率」と「容積率」によって建物の最大規模があらかじめ決まっているため、敷地内であれば自由に建築できるわけではありません。指定建ぺい率や容積率を超える建物は、違法建築物として罰則の対象となり、売りに出す際にも不利な条件となります。
ちなみに、「建ぺい率」と「建蔽率」は同じ意味です。今では「蔽」の漢字は常用漢字として認知されているため、「建蔽率」と表記するケースも増えつつあります。
容積率との違いは?
建ぺい率と共によく聞く言葉が「容積率」です。建ぺい率とどう違うのでしょうか?
容積率とは、「その土地に建てることができる建物の延べ床面積」のことです。都市計画により、延べ床面積は用途面積あたり50~1300%の範囲に制限されており、建物前面道路の幅員が狭い場合はさらに制限されます。
多くの場合、分譲地の広告には建ぺい率50%、容積率100%と記載されています。一般的に、容積率が高いほど延べ床面積が広くなり、高層階の建物が建てられます。
建ぺい率で制限されるエリアは?
建ぺい率は、建築基準法の団体規制に該当する規制です。
建築基準法は、大きく「単体規定」と「集団規定」の2つに分かれます。単体規制とは、全国一律の規定です。一方、集団規定は「都市計画区域」「準都市計画区域」内のみに適用される規制です。
ここで2つの地域「都市計画地域」と「準都市計画区域」について解説します。
「都市計画区域」とは、総合都市として総合的に整備・整備・保全する必要がある区域です。一定以上の人が住んでいる地域は、主に都市計画区域に該当します。
「準都市計画区域内」とは、都市計画区域に相当する区域を指し、乱開発を防止する目的で指定された区域です。
尚、これら2つ以外の区域は、一般に「都市計画区域外」と呼ばれます。
実は日本の70%以上はこの都市計画区域外であり、一括規制が適用される都市計画区域および準都市計画区域は、国土の3割以下しかありません。都市計画区域外とは、都市計画区域および準都市計画区域以外の区域です。
例えば、農林水産業が盛んな地域では、そもそも建ぺい率が明記されていない地域も多数あります。
建ぺい率の制限を受ける理由
一部エリアとはいえ、建屋建設にとって厳しい制限となる「建ぺい率」ですが、それではなぜこのような制限を設けることになったのでしょうか?
大きくは災害対策や環境保護によるものが大きいようです。ここでは建ぺい率が設けられている理由について解説しましょう。
防災対策
一つ目は防災対策の観点です。
関東大震災や阪神・淡路大震災では、主に火災が原因で被害を受けました。都市部などの人口密集地では、多くの人が住めるように建物が密集しています。建物が密集していると、出火時に延焼しやすく、避難経路の確保が難しくなります。
このため建ぺい率による制限を設けることで、建物間の距離が確保され、緊急時の安全が確保されるわけです。
景観保護
建ぺい率による制限は、防火、通風、採光を確保し、美観を保つ役割を果たします。
例えば、みんなが土地の大きさと同じ大きさの家を建てたら、街はとても窮屈に見えるでしょう。実際、建ぺい率のおかげで、建物が大きく目立つことなく、地域の景観美が守られています。建ぺい率は、各自治体が地域の都市計画を策定し、計画に沿って都市を発展させることができるように設定されています。
日当たり等の環境保全
建ぺい率は日照・通風などの環境保全にも一役買っています。
建物の建ぺい率に応じて建物の大きさを制限することで、建物と建物の間に適切な隙間を作り、最低限の通風と日照を確保しています。風通しや日当たりの良さは暗黙のルールで確保できますが、暗黙のルールである以上対処できません。
建ぺい率はこれを法律で明確に規定したものであり、これにより私たちは平等に快適な生活環境を保てるわけです。
建ぺい率・容積率の算出方法
都市の災害対策、環境保護を目的として制定されている建ぺい率ですが、具体的な算出方法はどのようにすればよいのでしょうか?
ここでは建ぺい率、容積率の計算方法について解説します。
建ぺい率の計算方法
建ぺい率の計算式は以下のとおりです。
建ぺい率(%)=建屋面積÷敷地面積×100
建屋面積は、建物の水平投影面積を意味します。2階建て以上の家がある場合は、各階の中で最もフロア面積の大きい場所を選んでください。
計算事例ですが、敷地面積が100平方メートル、建物面積が40平方メートルの場合、建ぺい率は40%となります。
見方を変えれば、敷地面積100平方メートルの土地の建ぺい率が60%だとすると、その土地には60平方メートルまでの建物を建てることが可能です。
容積率の計算方法
次に容積率の計算方法です。算出方法は以下のように非常に簡単です。
容積率(%)=延床面積÷敷地面積×100
例えば、敷地面積120平方メートルの土地に延床面積240平方メートルの家を建てた場合、容積率は200%になります。2階建ての家を建てる場合、1階が80平方メートル、2階が70平方メートルのイメージです。
また、用途面積ごとに定められた容積率がそのまま適用されるわけではなく、土地に面する前面道路の幅員による「前面道路制限」がありますのでご注意ください。
敷地前の道路幅員が12m未満の場合は、道路幅員に係数0.4を乗じた容積率と所定の容積率との小さいほうが容積率となります。
建ぺい率と容積率の注意点
先に建ぺい率と容積率について詳しく解説しました。それではこれを守らず建設した場合、どのようなことになるのでしょうか?
また、建ぺい率や容積率を計算するうえで、注意すべき点もあります。これらの点について詳しく解説します。
守らないと違法建築となってしまう
それでは建ぺい率を守らなかった場合、どのような問題になるのでしょうか?
まず建ぺい率や容積率を超えると、違法建築となってしまいます。
新築住宅を建てる際には、着工前に「建築確認申請」の申請が義務付けられており、指定された官公庁や民間の確認検査機関による審査を受けます。これは、建設しようとしている建物が建築基準法や条例に違反していないかを確認するもので、建ぺい率や容積率を超える建物は審査に合格せず、建設することができません。
注意したいのは、リノベーションによる拡張です。増築の延べ床面積が防火区域および準防火区域以外の区域で10㎡以内の場合は確認申請の必要がないため、後々建ぺい率が超えていることが分かり無許可の違法工事となる可能性がありますので注意が必要です。
違法建築ではローンも組めない
違法建築物となると、銀行ローンや住宅ローンの融資が受けられなくなります。これは、違法建築は市場価値がなく流通しにくいため、担保価値がないと判断されるためです。そうならないためにも、事前に規制を確認し、不動産会社や建設会社などの専門家に相談しましょう。
用途地域によって上限が異なる
建ぺい率や容積率が高いほど、敷地内で建物が占める面積の割合が大きくなります。
ただし、日射量や通風、防災などの制限も必要となるため、建築基準法では用途地域や防災地域ごとに上限が定められています。
用途地区とは、計画的に市街地を形成するために、建物面積や用途に一定の制限をかけるためのルールです。住民が自由に建物を建てると、住環境が損なわれ、さまざまな不便やリスクが生じます。 したがって、土地利用区域を定めることにより、都市環境が保護されています。
用途地区は13種類ありますが、大きく分けて住宅用、商業用、工業用の3つに分けられ、建ぺい率はこれらの種類ごとに上限が定められています。お住まいの市区町村の都市計画課で、お住まいの用途地区を確認できます。また、各自治体のホームページでも簡単に情報を確認できるので、必要時は確認しましょう。
2つの地域にまたがる場合
建ぺい率・容積率には各行政機関が上限を定めていますが、1つの敷地が2つの地域にまたがる場合があり、建ぺい率・容積率は地域ごとに異なる場合があります。 その場合、地域ごとの敷地面積の平均値を見る必要があります。 例を見てみましょう。
<例>
●建ぺい率 ●容積率 |
したがって、この100㎡の敷地の容積率は160%となります。
緩和される場合がある
建ぺい率と容積率ですが、条件によって緩和されるケースもあります。
建ぺい率が緩和される場合
一定の条件に合致すれば建ぺい率が緩和されることがあります。
基準として制限なしの場合、所定の建ぺい率は80%、防災区域内の耐火建築物の建ぺい率は100%です。
また、次のいずれかに該当する場合は建ぺい率が10%、両方に該当する場合は20%それぞれ増加となります。
・防火区域にあり、耐火建築物(延焼防止性能が同等以上の建築物を含む)であり、準防火区域あり、準耐火建築物(同等以上の延焼防止性能を有する建築物を含む)である 飛散防止性能)の場合。
・角地が特定行政庁が定める一定の要件を満たしている場合。
※角地の定義は自治体によって異なり、軽減措置の適用条件は条例の影響を受ける場合がありますので必ず窓口でご確認ください。
容積率が緩和される場合
容積率も一定の条件下で緩和される場合があります。
地下室は全体の1/3までであれば容積率の計算から除外できます。また、建物内に駐車場があっても、建物の1/5までなら容積率計算から除外、ロフトなどはそれら階の床面積に対し 1/2は除外出来ます。
また、建物の出ているバルコニー、ベランダ等は外壁から1m以内であれば延床面積に含みません。出窓や吹き抜けも計算に入っていないので、うまく取り入れられれば部屋を広く見せることができます。
建ぺい率、容積率以外にも制限がある
建ぺい率や容積率以外にも、建築制限に関する規制があります。
・絶対高さ制限:主に低層住宅地に適用され、建物の高さを原則として10mまたは12mに制限
・斜線制限:採光と通風を確保するため、隣接する土地や道路、家屋の北側の高さを制限
・日陰規制:周囲の日照を確保するために高さを制限
これら以外にも自治体ごとで制限があるケースがあります。実際の建物は建ぺい率、容積率にこれらの制限を組み合わせて建物の大きさが決まるため、実際には建ぺい率や容積率の割合まで建物を建てることができない場合があります。
まとめ
建ぺい率は防災対策、環境保全のために必要なルールとなっています。非常に窮屈に感じますがこれらを破れば違法建築となり、融資などを受けられないなどペナルティを受けることになりますので注意が必要です。
一方で、一定の条件を満たせば緩和されるケースもあり、これらをうまく活用しより広い建屋設計ができます。
家を建てるときは、設計士や建設会社に依頼することでこれらを考慮した設計・建築ができます。しかし、施主たるもの、これらの制限は理解しておくべきでしょう。
建ぺい率や容積率などさまざまな制約とその内容を理解することで、土地探しから設計・施工まで納得して進められるようになりましょう。