2022.09.03
不動産の購入
不動産購入前に作成したいライフプランの意味と重要性とは?
マイホームを購入したいと思ったとき、まず何をしたらいいかご存じでしょうか。
不動産会社に問い合わせてカタログをもらったり、インターネットで物件情報を探したり、住宅展示場に足を運んだりといったことをイメージする人もいるかもしれません。
しかし実は、不動産購入を検討し始めたらまず、ライフプランを作成することが非常に重要です。
なぜなら、マイホームの購入は人生で最も資金が必要なライフイベントだからです。
本記事では、不動産を購入する前に取り掛かってほしいライフプラン作成の重要性と、具体的にどのようにライフプランを作成したらいいかについて解説します。
1.ライフプランの意味と重要性
「ライフプラン」は「人生設計」を表す言葉です。今後の人生で実現したい夢や理想とする生活、起こりうるイベントを先に把握しておき、資金計画を立てるために活用します。
人生には「3大支出」と呼ばれる大きな出費が発生するタイミングが3回訪れると言われています。
1つ目は「教育資金」、2つ目は「老後資金」、そして3つ目が「住宅資金」です。特に住宅費用は金額が大きいため、多くの人が住宅ローンを利用して資金調達します。住宅ローンは返済期間が30年以上になることもあり、余裕のある返済計画を立てずに借り入れをしてしまうと、他のライフイベントで大きな出費が発生した場合に、返済不能に陥る可能性も否定できないのです。
こうしたトラブルや、住宅ローンの支払いのために他のライフイベントをあきらめることにならないよう、住宅を購入する前にライフプランを作成することが大切なのです。のちの人生において、どのタイミングでどれくらいの出費が必要になるかを把握・可視化することで、マイホームを購入する際の予算を決めるだけでなく、他のライフイベントのために、あらかじめ必要な資金を確保しておくことができるようになります。
2.ライフプラン作成の相談先は?
ライフプランの作成には家計のシミュレーションが必要なため、ファイナンシャルプランナーに相談するのが一般的です。ファイナンシャルプランナーへは、FP事務所や保険の相談窓口などさまざまなところで相談可能。日本FP協会のホームページには、在籍している事務所の所在地や専門分野などから条件にあったファイナンシャルプランナーを検索できるページがあるため、足を運びやすい事務所や店舗を探してみるといいでしょう。
日本FP協会『相談できるファイナンシャル・プランナーを探す』https://www.jafp.or.jp/confer/search/cfp/ |
また、住宅の購入を考えている場合には、ハウスメーカーや不動産会社に相談するという方法もあります。近年では住宅ローンを活用した住宅購入者向けに、宅地建物取引士とファイナンシャルプランナーの両方の資格を持った担当者が、ライフプランの作成からローンの手続き、物件の購入までトータルでサポートしてくれる不動産会社も登場しています。相談窓口をひとつにまとめることで、スムーズに不動産を購入できることにもつながります。
3.ライフプランの作成手順
マイホームの購入を検討し始める前のライフプラン作成について、具体的にどのような手順を踏むのかを見ていきましょう。
ライフプランを作成する際には、大きく分けて3つの手順を踏みます。
1)ライフイベントをまとめる
2)現在ある現金や資産について把握する
3)現在の収入の状況と将来的に変動する可能性を考える
1つずつ詳しく解説していきます。
1)ライフイベントをまとめる
まずはライフプラン表を作成します。その後の人生で想定されるイベントとそのタイミングの他に、車や住宅の購入といった大きな出費の予定を書き出し、各イベントでどれくらいの費用が必要になるかをまとめていきます。
理想とするライフプランは人それぞれ異なりますが、下記のようなライフイベントが考えられるでしょう。
(1)結婚
(2)出産
(3)子供の進学
(4)住宅購入
(5)退職(老後資金)
それぞれのライフイベントで、どれくらいの出費が発生するかを見ていきましょう。
(1)結婚
結婚が人生で最初の大きなイベントという人も少なくないのではないでしょうか。
結婚にかける費用は、結婚式を挙げるかどうかや、どれくらいの規模で挙式を行うかなど、カップルによってもまちまちです。
総務省統計局が公開している「家計消費状況調査年報」によると、コロナ禍に入る前年である2019年の挙式・披露宴費用全国平均は1世帯当たり1,053万円、コロナ禍である翌年2020年でも474万円となっています。これは挙式や披露宴にかかる費用のほかに、婚約指輪や結婚指輪、新婚旅行や結納にかかる費用も含まれています。2人で負担するとはいえ、人生の一大イベントに多くの費用をかけるカップルも多くいるため、しっかりと資金計画を立てておくと安心です。
(参照:総務省統計局 家計消費状況調査年報令和3年『時系列表 特定の商品・サービスの1世帯当たり1ヶ月間の支出(二人以上の世帯)』https://www.stat.go.jp/data/joukyou/2021ar/index.html)
(2)出産
出産のためにかかる費用は、入院費や分娩料のほかにも、さまざまな諸費用が発生することも頭に入れておく必要があります。
厚生労働省保険局から配布されている資料によると、2021年度の出産費用の全国平均は、公的病院の場合で45.2万円・全施設だと46.7万円で、年間平均1%前後増加していることがわかります。
(参照:厚生労働省保険局『出産費用の実態把握に関する調査研究(令和3年度)の結果等について』 p.3 https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000977521.pdf)
上記の費用は、健康保険料による給付金でほとんどまかなうことが可能です。しかし出産後に必要になるおむつ代やミルク代、産休・育休取得による一時的な収入の減少も考慮しておくことが大切です。
(3)子供の進学
人生の3大支出のうちの1つ「教育資金」は、子供を公立に通わせるか私立に通わせるかによって、必要な金額が大きく変わります。子供が生まれたときは公立に通わせたいと思っていても、子供の将来性を考慮して私立進学へ変更することも珍しくないため、先を見越した資金計画を立てておくことが重要です。
文部科学省が公表している「子供の学習費調査」によると、幼稚園3歳から高校3年生までの15年間の学習費総額の全国平均は、すべて公立に通わせた場合で541万円、すべて私立に通わせた場合で1,830万円。ここに大学や短期大学にも通わせるとするとさらに学費が必要になり、特に入学時に入学金・教材費といった多くの費用が発生します。そのため教育資金に関しては、子供が生まれたときから計画的に貯蓄しておくようにしましょう。
(参照:文部科学省『平成30年度子供の学習費調査の結果について』
p.4 https://www.mext.go.jp/content/20191212-mxt_chousa01-000003123_01.pdf)
(4)住宅購入
冒頭でも解説したとおり、マイホームの購入費用はライフイベントにおいて最も大きな出費を伴います。そのためゆくゆくマイホームを購入する予定がある場合は、できるだけ早めに費用の全体像をつかんでおくと安心です。
全期間固定金利の住宅ローン『フラット35』を取り扱う住宅金融支援機構の調査によると、マイホーム取得にかかった資金の2021年度の全国平均は、新築マンションの場合で4,528万円、土地付注文住宅(新築戸建)の場合で4,455万円、建売住宅の場合で3,605万円となっています。不動産を購入する際、ほとんどの場合で住宅ローンを利用して、毎月一定の金額を返済していくことになります。しかし返済期間が30年以上に及ぶことも少なくなく、その間に収入の変動が起きたり、収入が途絶えたりして、返済が滞ってしまう世態があるということも事実です。
住宅ローンの返済ができなくなると、最悪の場合マイホームを手放さなくてはいけなくなってしまいます。滞りなく住宅ローンを完済するためにも、のちに解説する資金計画を入念に立てておくようにしましょう。
(参照:住宅金融支援機構『2021年度 フラット35利用者調査』p.10 https://www.jhf.go.jp/files/400361622.pdf)
(5)退職(老後資金)
人生の3大支出の最後の1つ、退職後の「老後資金」は、人生100年時代と呼ばれる現代においては無視できない重要な課題です。
2013年に改定された「高年齢者雇用安定法」により、2025年4月から企業は65歳までの雇用確保が義務とされるようになりました。さらに少子高齢化が進んでいること、老後に受け取れる年金の額が減少していることを受け、2021年4月1日施行の改正「高年齢者雇用安定法」により、65歳から70歳までに関しても、雇用機会を確保する努力義務が企業に求められています。
しかし、「働く場所がある=収入が保証されている」ということではありません。健康状態などの理由により退職したのちは、それまでの貯蓄や年金で生活しなくてはいけないため、1ヶ月あたりの生活費がどれくらい必要かを知っておく必要があります。
総務省の統計局が公開しているデータによると、2021年における1世帯(2人以上)あたりの消費支出額(生活費)は、60~69歳の世帯の場合で288,312円、70歳以上の世帯の場合で226,383円という結果が出ています。
(参照:『家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)家計の概要』Ⅰ 家計収支の概況(二人以上の世帯)
p.7 https://www.stat.go.jp/data/kakei/2021np/gaikyo/pdf/gk01.pdf)
一方で、日本年金機構が発表している年金額モデルは、平均的な収入で40年間就業した場合の、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む場合で、厚生年金月額219,593円(令和4年度月額)となっています。
令和4年度の時点で、すでに退職後の1ヶ月分の生活費を年金でまかなうことが難しくなっているということがおわかりいただけるかと思います。
(参照:日本年金機構『令和4年4月分からの年金額等について』https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2022/202204/040103.html)
老後の生活に影響を及ぼさないためには、十分な貯蓄をしておくことだけでなく、マイホームを購入する際の融資額や返済計画を無理のない範囲で設定することが大切になります。特に返済期間が60歳を過ぎても続く返済プランの場合、年金以外に収入がないところにローンの返済も加わると、生活費が圧迫されてしまいます。
不動産購入のための資金計画を立てる際には、収入が安定している間だけでなく、収入がなくなった場合でも返済を継続できるかに注視するように心がけましょう。
2)現在ある現金や資産について把握する
ライフプラン表ができ、各ライフイベントで必要な資金額がわかったら、次に手持ち資金や現在の収入を詳細に把握していきます。
手持ち資金に含まれるのは、現金や預金の他に、定期預金・株式・証券、不動産など。マイホームを購入する場合は、手持ち資金の中から手付金や頭金、不動産会社への仲介手数料、住宅ローンを組む際の事務手数料などを支払います。
ここで注意したいのが、不動産購入時に手元にある現金や資産のすべてを、購入費用に加えてしまわないことです。
住宅ローンの返済は30年を超えることも少なくなく、返済期間中に病気やけがにより収入が減ってしまったり、失業によって収入が途絶えてしまったりすることも考えられます。毎月まとまった額の返済があるにもかかわらず、手持ち資金のない状態で収入が減ってしまうと、返済額で家計が圧迫されてしまい、最終的にローンの返済が難しくなってしまう可能性があるのです。
そのため、不動産を購入する際には、まず生活予備費として3ヶ月~6ヶ月分の生活費を手元に残すことを優先します。そのうえで残った現金や預金などを、突発的な出費で困らない範囲で、住宅の購入費用に回すようにしましょう。
3)現在の収入の状況と将来的に変動する可能性を考える
手持ちの現金や資金を把握したら、次に収入の変動について考えます。ここで考慮すべき「収入の変動」には、下記のような項目が含まれます。
・出世や給与増加の可能性
・転職の可能性
・配偶者は働いているか、働き始める予定はあるか
・出産後に働くか、どの雇用体系で働くか
・何歳まで働くか
・年金はいくらもらえそうか
・資産運用によっていくらの収益が見込めそうか
こうした「現在の収入」だけでなく「将来の収入の変動」も把握しておく必要があるのは、マイホーム購入以外のライフイベントも実現しながら、返済期間の長い住宅ローンも確実に返済していくためです。
「借り入れできる住宅ローンの融資額」は、必ずしも「完済できる額」とは限りません。余裕を持った資金計画を立て、理想とするライフプランを実現していくためにも、将来的に世帯収入がどのように変化していくかを考慮してマイホームの購入を進めるようにしましょう。
ライフプランの作成にはファイナンシャルプランナーへの相談がおすすめ
夢のマイホーム購入の第一歩はライフプランの作成で、そのあとに住宅購入のための資金計画に着手することになります。
貯蓄や保険、収入や資産の状況と真正面から向き合う必要があるだけでなく、多くの手間と時間がかかるため、億劫に感じてしまう人も少なくないでしょう。
しかし冒頭で解説したように、人生の3大支出のうちの1つである「住宅購入資金」は、他のライフイベントでの支出とバランスをとり、20年30年先の収入も考慮したうえで検討する必要があります。このステップをないがしろにしてしまうと、将来的に生活費の工面に苦労するだけでなく、せっかく手にしたマイホームを失ってしまう可能性も否定できません。
住宅購入の資金計画を含めたライフプランの作成を希望する場合は、ファイナンシャルプランナーが在籍する不動産会社に依頼してみましょう。相談の際には1社だけにこだわらず、複数の不動産会社に問い合わせることで、最もご自身にあった提案をしてくれる業者を探してみてください。