2023.05.04
不動産の購入
【契約不適合責任】問われるとどうなる?免責や対策も解説!
持ち家の売却を検討する際に「契約不適合責任」という言葉を知り、不安を抱く人は少なくありません。契約不適合責任とは、売買契約の内容と実際の住宅に違いがある場合に問われる、売り手側の責任のことです。
買い手から契約不適合責任を問われると、住宅の修繕や損害賠償が求められてしまいます。
この記事では、契約不適合責任について以下のポイントを解説します。
・責任を問われるケース
・瑕疵担保責任との関係
・責任を問われる期間
・責任を問われた場合どうなるのか
・免責について
・責任を問われないための対策
住宅を売却したあとの予期せぬトラブルを防ぐためにも、知識を付けておきましょう。
契約不適合責任とは
住宅の売却における契約不適合責任とは、名前のとおり「売却した住宅が契約内容と合わない場合の責任」のことです。責任は売り手側が負います。
この章では、契約不適合責任の基礎知識として、以下の3点を解説します。
・責任を問われるケース
・瑕疵担保責任との関係
・責任を問われる期間
1つずつ見ていきましょう。
責任を問われるケース
売却した住宅において、契約不適合責任を問われるケースとしては、以下のようなものが考えられます。
・雨漏りや水漏れがある
・外壁や屋根が壊れている
・シロアリによる被害がある
・柱や基礎の建材が劣化しており、耐久・耐震性に問題がある
・契約書に記載されている面積や仕様が、実物の住宅と違っている
主に住宅の品質や状態について「契約内容と違う」と判断され、責任を問われることが多いです。
瑕疵担保責任との関係
契約不適合責任は、もともと瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)として扱われていました。
2020年4月に民法が改正された際に、責任の内容と名称が変わったのです。
瑕疵担保責任は、住宅に「隠れた瑕疵」があった際に、売り手が責任を問われるものでした。
一方で契約不適合責任は、住宅に「契約内容との相違点」があった際に、売り手が責任を問われます。
瑕疵とは、欠点や欠陥、不具合のことをいいます。
また「隠れた瑕疵」とは、売買契約を結んだ時点で買い手が気付かなかった瑕疵のことです。たとえば屋根に不具合があり、住宅を購入して住み始めてから雨漏りに気付いた場合「隠れた瑕疵」となります。
責任を問われる期間
契約不適合責任において、売り手が責任を問われる期間は「買い手が瑕疵を発見してから1年間」です。買い手側としては、瑕疵を発見したら1年以内に、売り手に契約不適合であることを知らせなければなりません。
ただ売り手と買い手が合意すれば、売買契約時に責任期間(瑕疵の発見から通知までの期間)を自由に定めることも可能です。責任期間として「買い手が瑕疵を発見してから3ヶ月以内に通知すること」と定めるケースが、よく見られます。
契約不適合責任を問われた場合どうなるのか
売却した住宅に対して契約不適合責任を問われた場合、買い手から以下のようなことを求められます。
・履行の追完請求
・代金減額請求
・損害賠償請求
・契約の解除
それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
履行の追完請求
履行の追完請求とは、売買契約の内容と実際の住宅に違いがある場合、買い手が売り手に対して該当箇所の変更を求めることです。「履行」と「追完」には、以下のような意味があります。
・履行:決められたことを実際におこなうこと
・追完:法的に効力が欠けている要素を補うこと
契約内容に合わない部分を直すためには、瑕疵を修繕したり、設備の交換や追加納品をしたりしなければなりません。具体的には、以下のようなことが求められます。
・床や壁の素材が契約内容と違っているため、張り替える
・エアコンなどの設備が契約内容よりも足りないため、追加する
つまり履行の追完請求は、住宅そのものや住宅に付いているものにおいて「契約書に書いてあるとおりにする」ことを請求する、買い手の権利なのです。
民法の条文には、以下のような記載があります(第562条1項より)。
『引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。』
(出典:e-Govポータル)
代金減額請求
代金減額請求とは、買い手が売り手に対して、住宅の価格を安くするように求めることです。
しかし買い手はすでに住宅を購入しているため、購入価格から契約内容と違っている部分を引いた額を返してもらう形になります。
以下のような場合に、買い手は代金減額請求をおこなうことが可能です。
・履行の追完請求をおこなっても、売り手が対応してくれない場合
・契約内容より面積が小さいなど、履行の追完が物理的にできない場合
買い手が請求できる金額は、契約不適合の度合いによって変わります。
民法の条文には、以下のように書いてあります(第563条1項より)。
『買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。』
(出典:e-Govポータル)
損害賠償請求
実際の住宅が契約内容と違うことによって損害が出た場合、買い手は売り手に対して損害賠償を求めることが可能です。たとえば契約内容に無い屋根の欠陥によって雨漏りが発生し、家具が水浸しになってしまった場合、買い手は被害額を請求できます。
損害賠償は、追完や代金減額とあわせて請求するのが一般的です。
ただ買い手が損害賠償を請求できるのは、以下のようなケースに限られます。
・売り手が隠していた瑕疵により損害が出た場合
・売り手の過失により損害が出た場合
過失とは「注意していれば防げたにもかかわらず、注意を怠ったことで発生してしまった過ち」のことです。
履行の追完や代金減額については、売り手に過失がなくても請求できます。
そのため損害賠償請求は、追完や代金減額に比べて重たいものだと言えます。
民法の条文は、以下のとおりです(第415条1項より)。
『債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。』
(出典:e-Govポータル)
契約の解除
売り手が履行の追完請求を受け入れない、または追完ができない場合、買い手は売買契約そのものを解除することができます。売買契約を解除することで、住宅を購入した際の代金を売り手に返してもらうのです。
ただ契約不適合の度合いが軽い場合、契約の解除ができないケースもあります。
その場合は、ほかの救済措置を受けることになります。
民法の条文は、以下のとおりです(第541条より)。
『当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。』
(出典:e-Govポータル)
契約不適合責任における免責とは
免責とは「本来であれば負うべき責任が許される」ということです。
契約不適合責任では、売買契約の契約書に記載された免責事項については、責任を問われません。
この章では、免責について以下の2点を解説します。
・免責事項の例
・免責が認められないケース
それぞれ見ていきましょう。
免責事項の例
免責を有効にするためには、売買契約の契約書に特約として、免責事項を載せる必要があります。
具体的には、以下のような内容です。
免責事項の例①:
「売り手は買い手に対して、一切の契約不適合責任を負わないものとする」
この場合、買い手は契約不適合を理由に、追完や損害賠償などを求めることができません。
築年数が古く経年劣化が見られる住宅の売買契約で、よくある内容です。
免責事項の例②:
「売り手は買い手に対して、建物の主要部分における腐食のみ責任を負う」
このように、契約不適合があった場合に責任を負う範囲を限定するケースもあります。
免責事項の例③:
「売り手が買い手に対して負う契約不適合責任は、追完に限るものとする」
この場合、買い手は追完以外の請求ができません。
契約不適合における買い手の権利が限定されるのです。
免責事項は、買い手と売り手が合意したうえで契約書に記載しなければなりません。
免責事項の内容が買い手にとって不利であるほど、売却価格が下がったり、買い手が付きづらくなったりする傾向にあります。契約不適合により修繕などが必要になった場合、その費用が自己負担になるリスクが高いためです。
免責が認められないケース
以下のような場合、契約書に免責事項を載せていたとしても、免責が認められません。
・売り手が買い手に対して、契約不適合の部分を隠していた場合
・売り手の過失によって、契約不適合が生じた場合
認められない理由は、いずれも売り手側の誠実さが欠けているためです。
契約不適合責任を問われないための対策
住宅を売却する際には、契約不適合責任を問われないための対策として、以下のポイントを押さえておくことが大切です。
・住宅の状態を確認しておく
・買い手への事前説明を丁寧におこなう
・住宅に瑕疵がある場合は、売買契約書に記載しておく
それぞれ詳しく見ていきましょう。
住宅の状態を確認しておく
住宅を売却する前に、状態を確認しておくことが大切です。
住宅には、知らない間に傷や欠陥が生じていることがあります。
状態を確認しておくことで、売買契約を結ぶ前に買い手に正確な情報を伝えられるため、契約不適合責任を問われないための対策として有効です。
住宅の状態を確認する際には「インスペクション」を活用しましょう。
インスペクションとは、専門の検査員(建築士)が住宅の状態を調査してくれるもので「住宅診断」とも呼ばれています。柱や梁など、普段は見えないような構造部分も調べてくれるため、欠陥が見つかりやすくなります。
買い手への事前説明を丁寧におこなう
契約不適合責任を問われないようにするためには、買い手への事前説明を丁寧におこなうことも大切です。売買契約を結ぶ前に、住宅の状態について調査結果を踏まえて説明しておきましょう。
住宅の購入後に考えられるトラブルについても、あわせて伝えることが大切です。
住宅に瑕疵がある場合は、売買契約書に記載しておく
インスペクションの結果、瑕疵が見つかった場合は売買契約書に記載しておきましょう。
中古住宅には、傷や欠陥などの瑕疵があるものです。
水道の配管や冷暖房設備についても、築年数が経てば不具合が出てきます。
既存の瑕疵について買い手に伝えていたにもかかわらず、契約不適合責任を問われてしまうケースがあります。
そのため、買い手への事前説明に加えて、契約書に瑕疵がある旨を記載しておくことが大切です。
口頭で伝えただけだと「本当に伝えたかどうか」で揉めてしまうこともあります。
まとめ【契約不適合責任への理解と対策が大切】
契約不適合責任とは、売買契約の内容と売却した住宅に違いがある場合に、売り手側に問われる責任のことです。買い手から契約不適合責任を問われた売り手は、修繕や損害賠償などの請求に応じなければなりません。
契約不適合における責任期間は、買い手が瑕疵を発見してから1年以内です。
ただ、売買契約書に記載された免責事項については、責任が許されます。
住宅を売却する際には、以下のポイントに気を付けましょう。
・住宅の状態を正しく把握する
・瑕疵がある場合は買い手に説明のうえ、契約書に記載する
・契約書の内容と、実際の住宅の情報に相違が無いか確認する
住宅の仲介を依頼する不動産会社にも相談しながら、トラブルが起きないように対策することが大切です。