2023.02.01
不動産の購入
借地権付き建物とは?メリットやデメリットについて解説!
不動産における土地や建物に対する権利として、所有権や分譲マンションなどに用いられる区分所有権、そして借地権があります。
賃貸アパートやマンションのように賃料を支払うことをイメージする借地権ですが、一般的には馴染みの薄い権利です。
本稿では借地権付き建物について、取引における注意事項や基礎知識、メリットやデメリットについて解説します。
不動産購入を検討している人は借地権付き建物について確認して選択肢のひとつに、借地権付き建物を所有し売却検討している人は売却にお役立てください。
借地権付き建物とは?住宅に用いられる3種類の借地権
借地権付き建物の前に、借地権について解説します。
住宅の不動産取引にて取り扱われる借地権は3種類、定期借地権と普通借地権、旧借地権があります。
それぞれどのような権利なのか確認してみましょう。
そもそも借地権とは
借地権とは期間を定め土地を借りて使用する権利のことで、期間内には毎月の賃料を土地の所有者に対して支払います。その土地に建物を建てた場合、建物の所有権は借地人(土地を借りた人)にありますが、土地の所有権は移転しません。
さらに建てた建物には以下の制限がかかります。
・建物を無断で売却できない
・特約を定めた場合、増改築や建て替えには土地所有者の承諾が必要
基本的に期間満了後は建物を解体し土地を返還しますが、借地権の種類によっては借地権の更新が可能で、更新しない際にも建物を土地所有者に買い取ってもらうことがあります。
定期借地権
定期借地権とは平成4年8月に施行された「借地借家法」により定められた権利で、契約期間の満了によって借地関係が終了し、その後の更新はありません。
定期借地権には種類があり、期間が満了したら所有者が建物を解体し更地に戻して返却するのが一般定期借地権で、期間は50年以上で設定します。
建物譲渡特約付借地権は土地所有者が建物を買い取ることをあらかじめ約束し、30年以上の期間が経過したら建物を買い取り、借地権は消滅します。
事業用借地権は期間が10年から20年以内、事業のためだけに利用できる土地なので、住宅用に供することはできません。
一般的な住宅を取得するためならば、一般定期借地権について知っておくだけで十分と言えます。
普通借地権
普通借地権も定期借地権と同様に平成4年8月に施行されたもので、条件を満たせば借地契約の更新が可能なところが定期借地権と異なるところです。
借地人は契約の更新を申し出ることが可能で、土地所有者は正当な事由がなければ契約の更新を拒めません。
正当な事由とは以下の3つで、借地借家法の第6条に明記があります。
・土地所有者が自分自身で土地を使用したい場合
・土地の借地権契約を締結したときの状況と借地の利用状況を比べた場合に、明らかに変わっていると認められたとき
・所有者から借地人に対し、立退料の支払いや代替え土地を提供したとき
しかし、正当な事由と認められるためのハードルは高く、裁判に発展することもあります。
契約期間は30年間以上、期間を定めていない借地権契約ならば30年の契約期間に設定されます。
契約更新後の契約期間は1回目の更新は20年、2回目の更新は10年と定められていますが、当事者同士での合意があればそれより長く設定することも可能です。
更新時には所有者に対し更新料を支払い、更新しない場合には地主に対して建物の買い取り請求することが可能です。
旧借地権
現在では新たに旧借地権の契約ができませんが、現在進行形で借地権として世に多く残っているために解説します。
旧借地権では契約期間を定めたかどうか、どのような建物が建っているかで契約期間が変わるのです。
木造の建物が建っている場合、契約期間を定めていれば契約は20年以上、更新後の契約期間も20年以上で設定されます。契約期間を定めていなければ契約は30年、更新後の契約期間は20年とされ、鉄筋造や鉄筋コンクリート造の建物も同様な形式で期間が設定されます。
旧借地権のポイントとして、借地人の権利が非常に強いことです。
借地人は契約の更新、建物を建て直すことでの期間延長、期間満了時の建物買取を地主に求められ、地主は正当な事由がなければ断れません。ほぼ半永久的に借地権を更新できることが問題になっています。契約更新の際に更新料を支払うことは、普通借地権と同様です。
借地権付き建物のメリット・デメリット
不動産購入のために物件を探していると、借地権付きの建物や、借地権を購入し建物を建てる、数少ないながらも借地権付きマンションというものもあります。
借地権付きの建物を購入しようとしたとき、どのようなメリットとデメリットがあるのか解説します。
【メリット】固定資産税がかからない
借地権付き建物は建物を所有していても土地を所有していないため、土地分の固定資産税や都市計画税などの税金が課税されません。建物を新築した際には建物分の不動産取得税が課税されます。
建物には固定資産税や都市計画税が課税されるため納税義務がありますが、経年とともに固定資産税評価額が下がるので、税負担は少ないものになります。
【メリット】購入価格が安い
借地権付き建物は購入価格が安いこともメリットです。
地域性やニーズによって相場が変わりますが、借地権は近隣の土地相場に比べて6割から8割程度の販売価格なので、不動産購入費用を大幅に引き下げられます。
【メリット】更新できれば借り続けられる
借地権には期限がありますが、普通借地権では土地所有者の承諾が得られれば更新できます。
契約期間も30年以上の長期間なので、長い期間土地を利用できると言えます。
土地所有者は正当な事由がなければ借地権の更新を拒めません。
正当な事由とは、建物の老朽化が進み居住に適していないことや、建物を使用していない事実があるなどです。新築して30年経過しても通常通り建物を使用しているならば、更新を拒まれる正当な事由には該当しません。
それでも更新を拒む場合には、土地所有者は借地人に対し多額の立ち退き料を支払う必要があります。
したがって、土地所有者にとって借地権を解除することは難しいので、普通借地権ならば更新して土地を利用し続けることもできます。
【デメリット】地代がかかる
借地権は賃貸物件の家賃と同じように、毎月地代を土地所有者に納める必要があります。地代の目安は土地の固定資産税と都市計画税の2倍から3倍程度です。
仮に土地の固定資産税と都市計画税が年間15万円かかるとしたら、3倍で年間45万円、毎月37,500円の地代です。
借地権を購入し、住宅ローンを借りて建物を建てて毎月返済、それに地代も加えると土地を購入したほうが安くなるケースも想定されます。土地を長期間継続して使用する予定ならば、資金計画も綿密に検討する必要があります。
【デメリット】リフォーム時に地主の許可が必要
借地権の契約では建物の利用方法が細かく定められていることがあり、大規模なリフォームを契約で禁止している契約も少なくありません。
その場合、リフォーム工事を無許可で進めると契約違反とみなされ、借地権の契約を解約されてしまう可能性もあります。
リフォーム工事が必要な場合には土地所有者の許可を取る必要がありますが、許可を得られないこともあり、場合によっては所有者に承諾料を支払うケースも考えられます。
借地権では建物に対する自由度は限られているのです。
【デメリット】融資が断られることもある
住宅ローンの融資を借りて建物を建築する場合、金融機関は建物だけの担保評価で融資判断をしなければなりません。
そうすると担保評価が足りないために融資が減額されることや、融資が受けられないこともあります。
勤務先や収入など本人の属性により住宅ローンを借りられることもありますが、土地付き建物の購入に比べ、融資が出にくいことを踏まえなければなりません。
借地権付きマンションのメリット・デメリット
借地権付きマンションのメリット・デメリットは借地権のものと大きく変わりませんが、マンションならではのメリット・デメリットがあります。
メリットとして、借地権付きマンションは一般的なマンションと差別化を図るために比較的広い部屋の物件が多いです。
また、立地が良い物件が多いこともメリットです。
土地所有者は立地が良い土地は手放したくはないけれども、有効活用する方法を検討しています。
将来的に土地が手元に戻る借地権が望ましいと考える土地所有者もいるため、借地権付きマンションは立地が良いことが多いです。
デメリットは、将来的に建物を解体するための解体積立金が必要になるのでランニングコストが上がることです。借地権の期間が満了すれば住居がなくなるので、新たに住まいを探す必要もあります。
借地権付き建物で起きやすいトラブルとは
借地権付き建物で起きやすいトラブルは借地人と土地所有者との関係によるものがほとんどです。借地権で契約を進めるならば想定されるトラブルなので、事前にトラブル内容を把握しておきましょう。
地代の値上げ要求をされた
更新料や地代の問題は、借地人と土地所有者の間で頻出するトラブルです。契約期間は長期間にわたるため、その間に土地の周辺相場や固定資産税評価額が上昇することもあります。
しかしながら、借地人が土地所有者からの要求を突っぱねると関係が悪化し、更新やリフォームなどの承諾を得られなくなる可能性もあります。まず、土地所有者から提示された値上げ額を吟味し、支払いの可否を検討しましょう。
そのうえで、現在支払っている地代に周辺相場と乖離があるのか、契約当時とどれくらい差があるのかなども調査し、状況を把握することが大切です。自分自身で調べられない場合には、不動産鑑定士に地代の鑑定評価をしてもらい、交渉材料とする方法もあります。
地代の交渉を続け、どうしても借地人と土地所有者との話がまとまらなければ、土地所有者に借地権と建物の買取請求することもひとつの方法です。
リフォームや増改築の承諾を得られない
建物が老朽化した場合には修繕やリフォームを、場合によっては増改築を検討することもありますが、借地権の契約時に特約で定めていれば、土地所有者の許可が必要です。
それでは、建物を維持するため、雨漏りを防止するための外壁の防水や塗り替えについて、土地所有者の承諾が必要なのでしょうか。
このあたりの線引きは非常に曖昧で、壁紙の張替えは良いけれども、外壁塗装は改築と判断することもあり、その解釈は土地所有者の判断です。
増改築を勝手に進め、契約違反と認められた場合、借地権の解約になりかねません。
早めの土地所有者との相談が必要で、増改築の判断を確定できるのならば書類に残すことが必要です。
売却承諾に対して高額な承諾料を請求された
借地権を第三者へ売却しようとし、土地所有者に相談したけれども高額な承諾料を請求されたり、承諾そのものが得られないこともあります。
承諾料は更地価格の10%程度が相場で、その金額を支払うことで解決することが多いですが、土地所有者がそれ以上の承諾料を要求する場合、どうしたら良いのでしょうか。
交渉してお互い納得できる線を探すことが最優先ですが、土地所有者との関係が良好ではない場合や、どうしても話がまとまらない場合には裁判所への申し立てもひとつの方法です。
裁判所に申し立ててトラブルの解決を目指す
増改築の承諾が得られない、借地権売却時の承諾料が高額で納得ができないなど、土地所有者との交渉を経ても話がまとまらない場合があります。
増改築もできなければ、売却して転居することも難しいでしょう。その状況で、まず取り組むことは不動産会社や弁護士などの専門家に相談し、間に立って交渉してもらうことです。
それでも進展しなければ、借地人が裁判所に申し立てます。
こうしたケースで利用される手続きを借地非訟(しゃくちひしょう)と言います。
裁判所が相当と認めれば土地所有者の承諾に代わる許可が認められ、土地所有者の承諾がなくても増改築や売却を行えるようになるのです。
注意点としては、金融機関の融資を受けて増改築しようと検討していた場合、融資条件に土地所有者の承諾書など承諾の証拠を求められることがあります。
借地非訟での裁判所の許可は金融機関が提出を求めている書類には該当しないため、融資を受けられない可能性があることも覚えておきましょう。
まとめ
借地権とは、土地を借りて地代を支払い、期限を定めて土地を利用する権利のことで、その上に建物を建てて居住や事業を営むことなどの目的で借地権を利用します。
土地の固定資産税がかからないことや、安価で長期間にわたり土地を利用できることはメリットですが、毎月の地代がかかることや住宅ローンなどの融資が通りにくいことがデメリットです。
借地権付き建物は土地所有者の許可なく譲渡できないことや、特約によって無許可の増改築は契約違反と定めていることにも注意が必要です。