2023.01.14
不動産の購入
住宅取得資金に対する贈与税は?わかりやすく解説【2022年以降】
マイホーム購入の際、両親や祖父母から資金援助を受けるケースはよくありますが、金額によっては身内からもらうお金であっても贈与税が課されます。
「もらった金額がいくらまでなら非課税になるんだろう?」
「贈与税がかかる場合、その金額を知りたい」
「贈与税の節約方法ってあるの?」
贈与を受けるにあたってこのような疑問を持つ人が多いです。
本記事では、住宅取得資金に対する贈与税のボーダーラインと、非課税特例を受けるための条件や必要書類を解説しつつ、注意点についてもまとめました。
法律的な言い回しをなるべく避けてわかりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
住宅取得資金と贈与税の予備知識
住宅取得資金と贈与税の関係を理解するためには、関係する法律用語の理解が必須です。ここでは最低限覚えておくべき用語を4つだけ確認しておきましょう。
・贈与:お金や物を他の人にあげること。
・贈与税:個人から、贈与によって財産を取得した場合にかかる税金。
・贈与者:財産をあげた人のこと。(ここでは住宅取得資金をあげた側の人)
・受贈者:財産を受け取った人のこと。(ここでは資金をもらった側の人)
以降ではこれらの単語を用いて解説していきます。
贈与税を払うのは誰?
贈与税は受贈者(受け取った側)が払うのが原則です。
贈与者(あげた側)が代わりに払うことも可能ですが、その場合は「贈与税を払うためにあげたお金にも贈与税がかかってしまう」という点に注意しましょう。
住宅取得資金に対する贈与税のボーダーライン【2022年以降】
一口に贈与税と言っても、そのお金の用途によってルールは異なります。
ここで解説するのはあくまで用途が「住宅取得資金」の場合ですが、「610万〜1,110万円」が贈与税が課されない金額のボーダーラインとなります。
ただしこの金額は条件によって変動するので、詳しく解説します。
贈与税の基礎控除
贈与税には限度額110万円の基礎控除が設定されており、住宅取得資金にも適用されます。これを踏まえて内訳を見ていきましょう。
住宅取得資金における非課税枠【2022年以降】
贈与した金額が一定の金額を超えると贈与税が課されますが、贈与税がかからない金額の範囲のことを「非課税枠」といいます。言い換えると「非課税枠を超えた金額に対して贈与税が課される」ということになります。
なお、この非課税枠は何度も改正を繰り返しているため、常に一定ではありません。
非課税贈与の限度額は?
上限金額は建物の種別によって上限金額が異なります。
2022年1月〜2023年12月までに贈与されたものに対する非課税枠は、以下のとおりです。
・省エネ住宅:1,000万円
・一般住宅: 500万円
この非課税贈与の限度額と、贈与税の基礎控除110万円を併用した「610万〜1,110万円」が贈与税が課されない金額のボーダーラインとなります。
非課税贈与の限度額は縮小傾向
非課税枠は何度も改正を繰り返していると説明しましたが、限度額は年々縮小傾向にあります。参考までに、実際の数字は以下のとおりです。
・2019年4月〜2020年3月:最大3,000万円
・2020年4月〜2021年12月:最大1,500万円
・2022年1月〜2023年12月:最大1,000万円
細かな条件は省きますが、わずか数年の間に限度額が1/3になっているという事実があります。ここでは今後の見通しについては割愛しますが、このくらいのペースと金額の動きがあるということは知っておきましょう。
非課税贈与の対象外になるもの
住宅取得にかかる費用のうち、非課税贈与の対象外になるものがあります。具体的には以下の費用です。
・住宅取得時の登記費用や手数料など
・家具、家電の代金
・引越し費用
もしこれらのような用途で贈与を受けた場合、非課税贈与が適用されず基礎控除の110万円を超える部分には贈与税が課税されるので注意しましょう。
住宅取得資金贈与の非課税特例を受ける条件
非課税特例を受けるためには、以下3つの分野で設定されている条件を満たす必要があります。
1.贈与するタイミングや申告の条件
2.贈与者、受贈者に関する条件
3.購入する物件に関する条件
条件を満たしていない場合は特例の対象外となってしまうので、ここはしっかり理解しておきましょう。
贈与するタイミングや申告の条件
3つの分野でこれが一番重要な条件です。
・贈与を受けた日が「居住開始前」であること
・贈与を受けた日の翌年3月15日までに本人が居住を開始すること
※「入居見込み」の場合、最長で翌年12月31日までに居住を開始すればOK
・贈与を受けた日の翌年3月15日までに贈与税の申告をすること
贈与税の申告は「申告しているかどうか」が重要なため、0円でも良いので必ず申告しましょう。
贈与するタイミングを誤ると、それだけで非課税特例を受ける条件から外れてしまう場合があるので、特に注意が必要です。
贈与者・受贈者の条件
非課税特例には、贈与者と受贈者それぞれに条件が設定されています。
・贈与者の条件
− 受贈者の直系尊属(両親・祖父母・曽祖父母など)
義父母・叔父叔母などは直系ではないので対象外
・受贈者の条件
− 贈与を受ける年の1月1日時点で18歳以上であること
− 贈与を受ける時点で日本国内に住所があること
− 贈与を受ける年の合計所得が2,000万円以下であること
ただし、床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下であれば良い
− 配偶者や親族など、特別な関係がある人から贈与された建物でないこと
購入する物件の条件
購入する物件の属性や種別にも条件が設定されています。
・日本国内にある住宅用の建物であること(土地も含む)
・登記簿上の床面積(マンションは専有面積)が40㎡以上240㎡以下であり、1/2以上が自分の居住用であること
・建物が次のいずれかに該当すること
− 新築住宅
− 1982年(昭和57年)1月1日以降に建てられた中古住宅
− 1982年1月1日以前に建てられた中古住宅の場合は、耐震性が証明できるもの
このように、住宅資金贈与の非課税特例を受けるためには様々な条件が設定されています。国税庁のWebサイトにも同様の記載があるので、あわせて参考にしてください。
参考:国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」
住宅取得資金贈与の非課税特例を受けるための手続き
非課税特例を受けるためには贈与税の申告が必要です。ここからは準備すべき書類などについて解説します。
贈与税の申告
贈与税は、贈与を受けた翌年の2月1日〜3月15日までの期間に申告する必要があります。(住宅取得資金贈与の非課税特例を受けなくても申告が必要)
非課税特例を受けるための必要書類
非課税特例を受けるための必要書類は以下の4つです。
・贈与税申告書:国税庁のWebサイトから作成可能
・戸籍謄本:贈与者と受贈者の関係がわかるもの
・源泉徴収票:合計所得が2,000万円(または1,000万円)以下であることを証明するため
・登記事項証明書:購入する建物や土地の詳細がわかるもの
この他、贈与を受けた翌年の3月15日までに居住が開始できない場合は、その事情を記載した書面も必要となります。
なお、贈与税は確定申告などに利用するe-Taxから申告することも可能です。
詳しくは納税地の税務署へ
基本的な必要書類は決まっていますが、地域によっては登記事項証明書の代わりに住宅性能証明書などでも良いといったケースがあります。
各地域によって細かな点が異なる可能性があるので、所轄税務署に確認することをおすすめします。
住宅資金贈与の非課税特例に関する注意点
次に、住宅資金贈与の非課税特例を受けるにあたっての注意点を解説します。
贈与を受けるタイミング
非課税特例を受けたい場合、贈与を受けるタイミングがシビアなので慎重に設定しましょう。よくある失敗例を紹介します。
・贈与を受ける日は「居住開始前」でなければならない
住み始めた後にローン返済に充てるためのお金を受け取った場合は、非課税特例の対象外となります。
この場合は「贈与のタイミングが遅かった」という失敗例です。
・贈与を受けた日の翌年3月15日までに本人が居住を開始しなければならない
新居を新築するケースで、土地を買った時点でお金を受け取ったが、完成が遅れてしまい翌年3月15日までに居住が開始できなかった場合、非課税特例の対象外となります。
この場合は「贈与のタイミングが早すぎた」という失敗例です。
・贈与を受けた日の翌年3月15日までに贈与税の申告をしなければならない
贈与税の申告を失念して、受け取りの翌年3月15日が過ぎてしまった場合でも、非課税特例の対象外となります。
このように、非課税特例を受けたければ「早すぎず、遅すぎないタイミングでお金を受け取ること」に加えて、「忘れずに期日までに申告をすること」が非常に重要です。
3月15日が一つの区切りとなるため、年末以降の贈与には時間的余裕が少なく、特に注意が必要です。
必要書類の準備に時間がかかる
非課税特例を受けるための必要書類は市町村役場(役所)でなければ取得できないものも含まれているため、準備にはある程度の時間がかかります。
万が一これらの書類が揃わずに3月15日を1日でも過ぎてしまうと、その時点で特例を受けることができなくなってしまいます。
書類の準備にかかる時間も想定して、余裕を持って手続きに臨みましょう。
土地だけの取得は対象外
非課税特例の対象は「受贈者が取得した建物とその敷地」です。
たとえば、妻が親から贈与を受けて土地を購入し、夫が住宅ローンを組んでその土地に新築の建物を建てた場合は特例の対象外となります。
贈与者が複数の場合
贈与者が複数人いる場合はどのような計算になるでしょうか。具体例で解説します。
・省エネ住宅を新築し、受贈者本人が所有
・受贈者の父から1,500万円の贈与
・受贈者の祖父から1,500万円の贈与
上記のケースでは、このようになります。
・省エネ住宅なので非課税枠は1,000万円
・贈与税の基礎控除で110万円
・2人合わせて贈与額は3,000万円
・3,000万円−1,110万円=1890万円
この場合は非課税枠を超過している1,890万円に対して贈与税が課されます。
上記と同じシチュエーションで、夫婦がペアローンで建物を購入し、それぞれの親から贈与を受けるケースもあります。この場合もシミュレーションしてみましょう。
・省エネ住宅を新築し、夫婦で所有
・夫の父から1,500万円の贈与
・妻の父から1,500万円の贈与
建物は変わらず1軒ですが、2名それぞれが所有者となるため、以下のようになります。
・省エネ住宅なので非課税枠は1,000万円
・贈与税の基礎控除で110万円
・夫:1,500万円−1,110万円=390万円
・妻:1,500万円−1,110万円=390万円
最初のケースと贈与総額は同じですが、非課税枠を超過した780万円に対して贈与税が課されるということになります。
贈与契約書を作っておく
ここまでに解説したとおり、住宅資金贈与の非課税特例を受けるためには、贈与を受けた日にちと金額が重要となります。さらにこの情報を第三者に証明する必要があるので、証明する手段として「贈与契約書」を作っておくのがおすすめです。
また、現金手渡しでは証跡が残らず後から苦労する可能性もあります。銀行振込で受け取るなどして、お金の受け渡しを証明できる工夫をしておくと良いでしょう。
まとめ
最後に本記事の要点をまとめます。
・原則、贈与税を払うのは受贈者(受け取った側)
・住宅取得資金の贈与税には、基礎控除「110万円」が適用される
・この他に「非課税枠」があり、最大で「1,000万円」
・受贈者1人につき、最大で「1,110万円」が非課税のボーダーライン
・非課税特例は「受贈者が所有する建物とその敷地」にのみ適用される
・非課税特例を受けるためには、贈与税の申告など様々な条件がある
・特に「贈与を受けるタイミング」には十分気を付ける
住宅取得資金の贈与税における法律は頻繁に改正されているため、その都度確認が必要です。また非課税枠は年々減額傾向にあることも知っておくべきです。
本記事を参考に適切な行動をし、非課税特例を活用して贈与税を節約しましょう。