2022.06.24
不動産の購入
不動産購入時の資金計画の立て方とは?正しい手順と失敗しない方法
「不動産を購入する前に、入念な資金計画を立てましょう」という話を聞いたことがあるでしょうか。
不動産購入における「資金計画」とは、住宅を購入するために必要になる費用の総額を算出し、それを捻出する方法や返済計画をあらかじめ決めておくことを言います。購入する不動産の予算を立てるだけでなく、中長期的な収入や支出を算出して計画を立てることで、不動産購入時にかかる費用を無理なく支払え、将来的にライフプランが変化した場合にも対応できるようになるのです。
しかしながら、具体的にどのような手順で資金計画を立てればいいのか、誰に相談すれば自身に合った資金計画を立てられるのかを知らないまま、住宅を購入し住宅ローンを組んでしまっている人もいるというのが実情です。
そこで本記事では、不動産購入時の資金計画の立て方や、資金計画を立てる際の注意点について詳しく解説します。
1.資金計画が大切な理由
不動産を購入する際の資金計画が重要である理由は、不動産購入時だけでなく、入居した後もゆとりのある幸せな暮らしを送るためです。
不動産購入にかかる費用はとても高額なため、一括での支払ではなく住宅ローンを活用して購入する人がほとんどです。住宅ローンの返済期間は長い人で35年にもなり、人生の半分近くを住宅ローンの返済に費やすことになります。
しかしながら、ローンの返済中に仕事が変わって収入が減ってしまったり、子供が増えたり車を購入したりと、収入の変化や大きな出費が発生することも少なくなく、住宅ローンの返済に苦労する家庭も少なくありません。住宅ローンは途中で返済を止められないため、計画的な借り入れを行わないと、生活に支障をきたす可能性が高いだけでなく、老後資金のための貯蓄ができないというリスクも伴います。
また、不動産を購入する際には、不動産の購入金額のほかにも多くの費用がかかります。それらを把握できていないまま売買を進めてしまうと、取っておくべき貯蓄を切り崩さなくてはいけなくなったり、希望していた不動産を購入できず、物件の選定からやり直さなくてはいけなくなったりします。
不動産購入前に入念に資金計画を立てておくことで、生活資金に余裕を持って売買を行え、将来的に大きな出費が発生した場合も、問題なく住宅ローンを返済し続けることが可能になります。
2.資金計画を立てる手順
不動産を購入する際に、購入したい物件が決まってから資金計画を立てるという人が多くいます。しかしながら、不動産の価格に合わせて資金計画を立ててしまうと、自身の支払能力に合わない返済プランを立ててしまったり、不動産の購入代金以外にかかる費用が勘定に入っていなかったりと、思ったようにいかないケースは少なくありません。
そのため、無理なく不動産売買を進めるためには、以下のような順序で資金計画を立てることをおすすめします。
(1)現在使える資金を把握する(自己資金と住宅資金)
(2)毎月の返済可能額を把握する
(3)不動産購入に必要な資金を把握する
順番に詳しく解説します。
(1)現在使える資金を把握する(自己資金と住宅資金)
資金計画を立てるうえでまず必要になるのが、現在持っている資金(自己資金)の額と、そのうち不動産の購入に使える資金(住宅資金)を把握することです。
自己資金には、手持ちの現金・預金・貯金・定期預金のほかに、両親から援助を受ける場合はその金額も含まれます。また、不動産を買い替える場合は、ほかの不動産の売却益を加える場合もあります。
これらすべてを住宅資金にするわけではなく、将来のためにいくらかの資金は残しておきましょう。
まずは生活予備費。万が一失業や病気により収入がなくなってしまった際に、手元に現金がなくては生活ができません。この万が一のために残しておくお金のことを「生活予備費」と呼び、会社員の人であれば生活費の3~6ヶ月分、自営業の人であれば最低でも6ヶ月分を準備しておくことをおすすめします。子育て世帯の場合は、将来将来かかる教育資金を取っておいたり、車の購入資金・維持費も考慮しておいたりする必要があります。
【住宅資金=自己資金-生活予備費】ということを押さえておきましょう。
また、住宅購入時に活用できる支援制度についても知っておくことをおすすめします。
国土交通省により提供されている支援策は下記のとおりです。
支援策 | 内容 |
---|---|
住宅ローン減税 | 住宅ローンの控除期間が13年間 |
すまい給付金 | 収入に応じて最大50万円を給付 |
住宅取得等のための資金に係る 贈与税非課税措置 |
贈与税非課税枠は最大1,500万円 |
グリーン住宅ポイント制度 | 新築最大40万円相当、リフォーム最大30万円相当。 新たなポイント制度を創設。 |
(参考:国土交通省『住宅取得に係る経済対策について』https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr4_000079.html)
特に、親族から住宅取得にかかる資金の援助を受ける場合には、上記の表のうち「住宅取得等のための資金に係る贈与税非課税措置」の適用を受けるかどうか確認が必要です。この非課税制度は適用要件が細かく定められており、さらに必要書類を添付したうえで贈与税の申告義務があります。知らずにいると思いがけない額の税金を納めることになってしまうため、あらかじめ適用要件や非課税限度額を調べておくことをおすすめします。
(2)毎月の返済可能額を把握する(住宅ローン借入金額)
住宅ローンを利用して不動産を購入する場合は、毎月いくらであれば無理なく返済し続けられるかを把握しておくことが大切です。現在賃貸物件に居住している人は現在の家賃、買い替えの場合は現在組んでいる住宅ローンの月々の返済額を参考にするのが一般的です。
ここで重要なのが、住宅関連の支払負担額は、収入の25%以内に押さえておくこと。この住宅関連の支払負担額には住宅ローンの返済額のほかに、通信費や固定資産税、修繕費(マンションの場合は管理費や修繕積立金)といった定期的に支払い・納付が発生する費用も計算に入れておきましょう。
(3)不動産購入に必要な資金を把握する
自己資金額と月々の返済可能額を把握できてから、実際に購入する不動産の価格を決定します。
不動産を購入する際に必要になる費用は「物件の価格+諸費用(税金+諸経費)」で、これらを(1)で算出した「住宅資金」に、(2)で算出した「住宅ローン借入金額」を加えた金額でまかないます。
物件の価格+諸費用(税金+諸経費)=住宅資金+住宅ローン借入金額 |
不動産を購入する際は、物件の購入代金以外にも多くの諸費用がかかります。大まかに見ていきましょう。
・不動産購入にかかる諸費用
手付金 | 売買契約締結前に支払う |
仲介手数料 | 売買契約が成立した際に、不動産会社に支払う手数料 |
火災保険料 | 購入した物件で加入する保険の保険料 |
収入印紙税 | 不動産売買契約書や、金銭消費貸借契約書に貼る印紙代 |
登録免許税 | 不動産を取得し、登記する際に収める税金 |
固定資産税・ 都市計画税精算金 |
固定資産税・都市計画税:土地や建物の所有者に対し、毎年課税される税金。 毎年1日1日時点の所有者が納税するため、年の途中に購入した場合は、 買主負担分を日割り計算して支払います。 |
管理費用等精算金 (マンションの場合) |
マンションの管理や修繕に使用される、管理費・修繕積立金を 売主が前もって支払っている場合に、買主負担分を日割り計算して支払います。 |
このほかにも、不動産登記を司法書士に依頼する場合は、司法書士への依頼料が必要になります。
・住宅ローンにかかる諸費用
事務手数料 | 住宅ローン契約締結にかかる手数料 |
保証料 | 保証会社に支払う保証委託料 |
団体信用生命保険加入料 | 住宅ローン借入のために加入する生命保険の保険料 |
・購入後にかかる諸費用
不動産取得税 | 不動産の取得者に対して課税される税金。 税務署へ直接申告するか、不動産取得後に送られてくる納税通知書により納めます。 |
引っ越し費用 | 新しい家具の購入代金や、中古物件に入居する前の ハウスクリーニング代も計算に入れましょう。 |
リフォーム・ 増改築費用 |
中古住宅購入をする場合で、リフォームや増改築を必要とする際にかかる費用 |
不動産購入時にかかる諸費用の目安は、新築の場合は不動産価格の3~7%、中古の場合は6~10%です。
(4)頭金の支払によって返済額負担額が減る
「頭金」とは、住宅ローンを利用して不動産を購入する際に、最初に現金でまとめて支払うお金のことを指します。
以前は物件価格の80%程度を融資限度額とする金融機関が多かったため、物件価格の20%ほどの資金を準備してから購入するのが一般的でした。最近では、物件価格に足して90%以上の融資を受けられる金融機関も多く、住宅金融支援機構が提供する住宅ローン「フラット35」においては、100%融資を受けられるケースも出てきました。こうした流れから、住宅購入時に準備する自己資金額が減り、頭金がなくても不動産を購入できるようになってきています。
しかし、自己資金額・月々の返済可能額・不動産購入にかかる費用を把握したうえで、まだ住宅資金に余裕がある場合は、頭金を支払ったうえで不動産を購入することをおすすめします。
頭金を支払ったうえで不動産を購入するメリットは、大きく分けて下記の3つが挙げられます。
・借入金額が減るため、住宅ローンの審査に通りやすくなる
・住宅ローンの月々の返済負担額が減る
・住宅ローン金利が低くなる場合がある
ただし、あとが楽になるからといって自己資金を必要以上に投入してしまっては、資金計画の意味をなさなくなってしまいます。頭金を支払う場合はあくまでも住宅資金の余力分に留めておき、計画的な返済スケジュールを組むようにしましょう。
(5)不動産を所有することで発生する費用も把握しておく
不動産は購入して終わりというわけではなく、住宅ローン返済以外にもランニングコストが発生します。
例えば固定資産税。土地評価額や建物の種類によって税額が決定され、納税義務があるためランニングコストとして資金計画の中に組み込んでおく必要があります。
さらに住宅ローンに適用される金利の変動も考慮しなくてはいけません。利率はローンを組む金融機関によって異なりますが、変動金利でローンを組んだ場合には特に注意が必要です。変動金利の場合はローンを組んだ際は固定金利よりも利率が低い場合が多いですが、経済状況により金利が上昇し、それに伴って住宅ローン金利も上昇する場合があります。変動金利の利率の見直しにより返済額が増額になり、住宅ローンを返済し続けることが困難になるケースも少なくありません。
3.資金計画で失敗しないためのポイント
不動産の購入やマイホームの建築は、人生で何度も経験することではなく、資金計画を立てること自体が初めてという人がほとんどかと思います。しかしながら、不動産売買には不動産の購入代金以外にも多くのお金が動くため、生涯を通してゆとりのある生活を送るためにも、不動産を購入したことによる失敗のリスクもできる限り取り除きたいところです。
資金計画で失敗しないための重要なポイントとして、「不動産の購入金額以外の費用を事前に把握しておく」ことと、「ファイナンシャルプランナーに相談する」ことの2点が挙げられます。
これまで解説してきた資金計画を立てる手順と合わせて、しっかりと押さえておきましょう。
1)不動産の購入金額以外の費用を事前に把握しておく
不動産を購入したことを後悔する人のなかには、不動産自体の金額だけしか頭になく、住宅ローンを組むための事務手数料や金利、引っ越し費用や税金などを考慮していなかったケースが目立ちます。
しかし、すでに解説したとおり不動産購入時にかかる諸費用(税金+諸経費)も安くなく、例えば3,000万円の新築物件を購入する場合、諸費用は90万~270万円にものぼります。これらもしっかりと計算に入れておかなければ、家計を圧迫しかねないのです。
不動産の購入を検討する際には、毎月の住宅ローンの返済額だけでなく、定期的に支払いが発生する費用にはどのようなものがあるかもしっかりと把握しておくようにしましょう。
2)ファイナンシャルプランナーに相談する
不動産を購入する人の多くが、購入資金についての相談を不動産会社にします。しかし、不動産売買を専門にする不動産会社の多くは、「資金計算」はしてくれても「資金計画」まではしてくれません。
「資金計算」では、不動産を購入する前後にかかる費用を短期的に算出することは可能です。ところが「資金計算」だけでは、将来ライフイベントが発生したときのことを考慮した中長期的な返済プランを立てることはできません。
そうした収入の変化やライフプランに合った資金計画を立てるためには、ファイナンシャルプランナーに相談に行くことをおすすめします。ファイナンシャルプランナー事務所はもちろんのこと、最近ではファイナンシャルプランナーが在籍する不動産会社もあります。不動産購入の相談とあわせて、ライフプランニングのアドバイスも受けられるため、トータルでサポートを受けたいという人におすすめです。
まとめ
不動産購入のために立てる資金計画において大切なのは「長期的な視野を持つ」ということです。
今現在多くの資金があっても、将来的に子供が増えたり大きな買い物をしたりしたときに、住宅ローンの返済につまずいてしまっては「ゆとりのある暮らし」は送れないと言えます。逆に不動産購入時に将来を見据えた資金計画を立てていれば、住宅ローンの返済に家計を圧迫されることなく生活でき、老後資金に不安を抱くリスクも減らすことが可能です。
資金計画をしっかりと立てるためには、不動産会社だけでなくファイナンシャルプランナーの力も借りるのがおすすめです。目の前の不動産購入だけに注目せず、20年後30年後も踏まえた、余裕のある資金計画を立てるようにしましょう。