2022.06.13
不動産の購入
不動産に関する相談先はどこ?悩みやトラブル別の解決法を解説
不動産に関する悩みやトラブルは多岐にわたるため、いざという時に誰に相談すればいいのかわからない、という人も多いのではないでしょうか。
部屋を借りていて近隣住民とトラブルになったとき、最初に連絡するのは管理会社でしょう。しかし、管理会社が適切な対応をしてくれない場合や、管理会社が働きかけてくれても解決されない場合は、弁護士をはじめとした専門家の力を借りる必要があるかもしれません。
両親が高齢になったことにより不動産の相続を受ける可能性が出てきた場合は、自分で法務局に手続きに行くこともできますが、司法書士に任せたほうが手間や労力を省けるかもしれません。
本記事では不動産に関する悩みやトラブルの内容ごとに、いざという場合にどこに相談すればいいのかについて解説します。
1.不動産の契約に関しての相談
部屋を借りる際や土地建物を購入する際にトラブルが起きた場合は、仲介をしている不動産会社が加入している協会に相談するようにしましょう。
不動産会社が加入する協会は「宅地建物取引業協会」と「不動産保証協会」の2種類のうちいずれかです。それぞれ相談窓口が設置されているため、トラブルが発生してからはもちろん、契約前に不動産会社の対応や提示された契約内容に違和感を感じた場合にも利用可能です。
(1)不動産無料相談所/宅地建物取引業協会
宅地建物取引業協会が設けている「不動産無料相談所」は、宅地建物取引業協会に加入している不動産会社と、一般消費者との間で発生したトラブルや苦情を解決することを目的としています。不動産会社の店舗事務所やホームページに貼られているハトのマークが目印です。
専門の相談員が不動産取引に関する相談に幅広く対応してくれるため、「取引の内容や仲介業者の対応に不安がある」という場合に活用できます。
不動産無料相談所は全国47都道府県に設置されており、各都道府県の相談所一覧は下記URLから確認が可能です。
【全宅連『都道府県宅建協会・不動産無料相談所一覧』】
https://www.zentaku.or.jp/association_list/
都道府県によって対応している相談日時が異なるので、事前に電話で確認しておくのをおすすめします。
(2)不動産保証協会の地方本部
不動産保証協会に加入している不動産会社との取引の場合は、不動産保証協会の各地方本部に相談してみましょう。
加入している不動産会社は、店舗やホームページに貼られているウサギのマークが目印です。
不動産保証協会の地方本部では、一般消費者から問い合わせのあった相談内容に応じて、「取引相談委員会」を通じた問題・苦情解決のための協議斡旋などをしてもらえます。
【参照:(公社)全日本不動産協会『苦情の解決業務』】
https://www.fudousanhosho.or.jp/admission/complaint/
全国にある不動産保証協会の地方本部一覧は、下記URLからご確認いただけます。
【(公社)全日本不動産協会『地方本部一覧』】
https://www.zennichi.or.jp/about/address/chihou/
(3)法的にトラブル解決をしたいなら弁護士に相談
不動産取引においてトラブルが発生したら、関係する協会に相談することが第一歩です。しかしながら、協会はトラブル解決を専門にしているわけではありません。また、中立な立場からの対応しかできないということもあり、十分なサポートを受けられない可能性もあります。
法律的に解決したい場合や、自分の主張を汲み取ってもらったうえで問題解決をしたい場合には、弁護士に相談するのが確実です。弁護士に相談する場合は、不動産トラブルに関しての経験豊富な弁護士を探すと、よりスムーズな問題解決が可能です。
2.賃貸物件についての相談
賃貸物件についての相談で特に多いのは、下記の項目です。
・入居中に起きた室内での水漏れや設備の故障
・転貸(また貸し)
・他の住民とのトラブル
・退去時の敷金返還や原状回復費用
それぞれの相談先と、解決できない場合の対処法について解説します。
1)入居中のトラブルは管理会社または大家さんに相談
賃貸アパート・マンションを借りている時に起きたトラブルは、まずは管理会社か大家さんに相談しましょう。
賃貸物件で特に相談の多い内容は「水漏れや設備の故障」「転貸(また貸し)」「他の住民とのトラブル」の3つです。いずれも自分だけで解決しようとする人も少なくありませんが、管理会社や大家さんに相談が必要な理由について解説します。
・水漏れや設備の故障
水漏れが起きたり設備が故障した場合には、「このくらいなら困らないから」と放置せずに、できるだけ早く相談することをおすすめします。
特に水漏れが発生した場合は、放置しておくと床や壁のカビ・シミの原因になり、退去時に原状回復費用(補修費用)を請求される可能性が高くなります。また他の部屋にまで水が漏れだしてしまうと、想像以上に被害が大きくなってしまう場合もあるのです。
一般的な賃貸借契約書にも、室内の設備の故障や破損が発生した場合は、すぐに連絡するように定められているため、必ず管理会社か大家さんに連絡するようにしましょう。
・転貸(また貸し)
「転貸」とは、契約時に約束した入居者以外の人に部屋を貸すことです。一般的な賃貸借契約の場合、部屋を第三者へ転貸することを禁止する文言が記載されています。
2人以上で同じ部屋に住む場合、2人で住むことを貸主に伝えたうえで契約していれば問題ありません。しかし、1人で住むことを約束した部屋の一部を第三者に貸してしまうと、転貸に該当し、契約違反として最悪の場合退去させられることになりかねません。
転貸する場合は貸主からの承諾を得る必要があるため、ルームシェアなどでどうしても転貸したいという場合は、まずは管理会社に相談するようにしましょう。
・他の住民とのトラブル
賃貸アパート・マンションでは、さまざまな職業・年齢・生活リズムの人が集まって暮らしています。そのため、共用部の使い方やゴミ出しルールが守られなかったり、生活音・騒音が気になったりといったトラブルは、避けて通れないといっても過言ではありません。
当事者間で解決しようとして、直接注意したり不満を言いに行ったりする人もいますが、感情的になってしまって余計に話がこじれてしまう可能性もあります。
そのため、他の住民とのトラブル解決のためには、まずは物件の管理会社に連絡して、間に入ってもらうようにするのをおすすめします。
2)退去時のトラブルは専門の相談窓口へ
賃貸物件を退去する際に起こるトラブルで多いのは、敷金の返還と原状回復費用についてです。
賃貸借契約書において、退去する際に室内を元の状態に戻す「原状回復費用」を借主が負担するように定められるのが一般的です。「元の状態」とは「新品の状態」ということではなく、借主が入居した時の状態のことを指します。つまり、入居した時にすでにあった傷や汚れに対する修繕費用などは負担する必要はありません。
ところが、なかには入居前からあった傷の補修費用やリフォーム費用、高額なハウスクリーニング費用を請求されるなどして、本来返ってくるはずの敷金が返ってこないというトラブルも少なくないのが実情です。
不必要な退去費用の請求を受けないためには、まずは賃貸借契約書の内容を確認する必要があります。契約書には、退去時の修繕・修復費用について、貸主と借主がそれぞれどこの範囲まで負担すべきなのかということが定められています。
原状回復費用の負担割合は、原則として賃貸借契約書の取り決めに沿って決定されますが、条文が曖昧な場合や、契約締結時の取り決め自体に問題があるケースもあります。そのようなときは、国土交通省が公開している『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』も参考にしながら、貸主と話し合いのうえ、最終的な費用の負担割合を決めるようにしましょう。
【国土交通省『「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について』】
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html
【国土交通省『「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改定版)のダウンロード』】
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000021.html
それでも折り合いがつかない場合は、第三者に相談するのをおすすめします。
宅地建物取引業免許の統括をしている国土交通省をはじめ、不動産取引に関する紛争や、賃貸物件におけるトラブル解決を専門とする窓口もあります。
相談先は1つである必要はないため、適切な判断や対応をしてもらえるところを探すようにしましょう。
【国土交通省『都道府県に関する窓口』】
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bf_000019.html
国土交通省に宅地建物取引業免許登録を行っている業者を管轄する、都道府県ごとの部署です。
【一般社団法人不動産適正取引推進機構】
https://www.retio.or.jp/consul/index.html
不動産取引に関するトラブルの相談窓口です。
紛争の内容によっては、弁護士や不動産取引の専門家のサポートを受けることも可能です。
【公益財団法人日本賃貸住宅管理協会】
https://www.jpm.jp/consultation/
居住用賃貸物件の取引・管理に関する相談窓口です。
3.不動産売買についての相談
不動産売買は取引金額が高額なため、契約締結から引き渡しまでを慎重に行う人も多いでしょう。
ここでは
1)購入した不動産に瑕疵があった場合
2)不動産の価値を知りたい場合
の2つのケースについて解説します。
1)購入した不動産に瑕疵があった場合は弁護士に相談
購入した不動産に瑕疵(かし)が見つかった場合は、瑕疵が発覚してから1年以内に売主に通知します。その際に相談すべきは弁護士です。
不動産の瑕疵とは、売買契約時には気づかなかった損傷や欠陥のことをいいます。建物の場合は雨漏りやシロアリの被害、土地の場合は地盤沈下や土壌汚染などが該当し、不動産の引き渡し後にこれらが発覚した場合は、修繕費などを売主が負担する必要があります。これを「契約不適合責任」といいます。
購入した不動産に瑕疵があることが発覚した場合、できる限り早く売主に通知しなくてはいけません。契約不適合責任は、買主が不動産に瑕疵があることを知ってから1年以内に通知する必要があり、この期間を過ぎると売主に対しての権利行使(訴訟を起こしたり、調停の申し立てをしたりすること)ができなくなってしまいます。
そのため、瑕疵が見つかった際には、まず売主に対して「契約不適合の通知」を行わなくてはいけません。
ただし、購入した不動産が契約不適合といえるかの判断や、売主への通知・権利行使を行うためには、法律的な専門知識や経験が不可欠です。無理に一人で手続きをしようとせず、弁護士に相談するか、法テラスの相談窓口に問い合わせてみることをおすすめします。
【日本司法支援センター法テラス『相談をご希望の方へ』】
https://www.houterasu.or.jp/madoguchi_info/index.html
2)不動産の資産価値については、不動産会社か不動産鑑定士に相談
不動産の売却を検討している場合、所有している土地や建物がどれほどの価値があるかを知っておきたいところ。このような場合は、売買を専門とする不動産会社に相談するのをおすすめします。
不動産会社での査定は無料で依頼できるのが一般的です。不動産会社に支払う報酬は、実際に売買契約が締結した際に発生します。依頼する会社によって査定基準が異なることも少なくないため、一度に複数の不動産会社に査定してもらい、その中から仲介してもらう業者を決めるという方法も可能です。
一方で、「不動産鑑定士」という不動産評価の専門家に「鑑定評価」を依頼するという方法もあります。鑑定評価においては、その不動産が持つ本来の経済価値を算出することになります。金融機関が担保にする不動産の価値を算出する際や、不動産会社が仲介に入らない個人売買、裁判の証拠として必要な場合などに利用される方法です。
不動産会社での査定と比較して、鑑定評価の方が正確な不動産の価値を知ることが可能ですが、有料で依頼をすることになるという点を押さえておきましょう。
4.不動産の相続や税金についての相談
土地や建物を所有している人にとって、切っても切り離せないのが相続や税金です。これらは複雑な法律が絡んでいたり、役所への書類提出・各種手続きなどが発生するため、すべて一人で処理するのはとても大変です。
そのため、調べてみてもよくわからないと思ったら、遠慮せずに専門家に相談することをおすすめします。
相続などで所有権(名義)が変更になる場合は司法書士、不動産を取得したときや所有している状態で発生する税金に関しては、税務署か税理士に相談するようにしましょう。
1)相続については司法書士に相談
土地や建物の相続が発生するときの相談先は司法書士です。
不動産を相続すると、「所有権」という不動産の名義を変更するための登記手続きをする必要があります。登記手続きは自分でも行えますが、多くの書類が必要になったり法務局に赴く必要があったりと、時間と手間がかかってしまいます。
また、古い土地の場合は、イレギュラーな手続きが発生することも少なくなく、専門的な知識を持っていないと登記自体が難しくなってしまうのです。
司法書士であれば、こうした難しい手続きにも対応してもらえます。一度司法書士に相談し、相続する不動産の状況を確認してから、実際に手続きの依頼をするかどうかを検討してみてもいいでしょう。
なお、不動産の所有者が亡くなった場合の相続は、相続人を決定するために弁護士の力を借りる必要があるケースもあります。
2)税金については税理士か税務署に相談
不動産に関する税金についての相談は、税理士または税務署が窓口です。
不動産を売却した際は、印紙税や登録免許税のほかに、譲渡所得(不動産売却で生じた利益)に対する税金を納める必要があります。特別控除の対象となる場合もありますが、税額や控除額を自分で正確に計算することは困難なため、税理士の力を借りたほうが確実です。
また、不動産を取得した際にかかる「不動産取得税」は、不動産がある地域を管轄する税事務所または税事務所に、申告・納付する必要があります。一般的には不動産取得後60日以内が申告期限とされていますが、東京や大阪は30日以内とされているため注意が必要です。
管轄の税務署は下記のURLから確認できます。
【国税庁『国税局・税務署を調べる』】
https://www.nta.go.jp/about/organization/access/chizu.htm
不動産についての不安は専門家に相談
不動産は宅地建物取引業法をはじめとした多くの法律が複雑に絡み合っています。現在はそうした複雑な事案についても、インターネット上ですぐに調べられるため、自分だけで解決できるのでは?と考えてしまう人も少なくありません。
しかし実際のところ、間違った知識や先入観のもとで進めてしまうと、かえって状況が悪化してしまったり、逆に損をしてしまったりする可能性もあります。結果的に解決できたとしても、多くの時間や費用がかかってしまい、「やっぱり誰かにお願いすればよかった」と感じる人も多くいます。
不動産に関する不安やトラブルについては、国土交通省や宅地建物取引業協会以外にも、多くの機関が無料相談窓口を設けています。些細なことが後々大きな問題に発展することもある不動産の問題は、無理に自分だけで処理する必要はありません。第三者の声を聞ける窓口を上手に活用しながら、最小限のストレスや手間・費用で解決できる方法を探しましょう。