2022.05.16
不動産の購入
不動産会社に支払う仲介手数料とは?賃貸と売買における相場や上限について徹底解説
家を借りたり土地建物を購入したりする際に、不動産会社に支払う「仲介手数料」。不動産取引における慣習として、なんとなく支払っているという人も少なくないと思いますが、そもそもどうして仲介手数料が必要なのでしょうか。
仲介手数料は、不動産会社が賃貸や売買の契約締結までサポートしたことに対する報酬の意味合いがあります。不動産会社が受け取れる仲介手数料の金額は、賃貸と売買の場合で計算方法が異なり、上限金額も法律により定められています。しかしながら、相場を知らずに取引を進めてしまうと、本来なら支払う必要のない金額を請求される可能性もあるため注意が必要です。
不動産取引では多額の費用が発生するため、仲介手数料を減額してもらうことで、トータルの費用を抑えることが可能です。ただし、マナーに配慮せず、むやみやたらに交渉を行ってしまうと、結果的に希望する条件の取引ができない場合もあります。仲介手数料を抑えたうえで契約を締結したい場合は、仲介手数料を半額や無料としている不動産会社を活用するのも一つの選択肢です。
仲介手数料を支払う意味と含まれる費用
不動産会社に支払う仲介手数料には、具体的にどのような費用が含まれており、どのタイミングで支払うものなのかについて解説します。
仲介手数料は営業活動に対する成功報酬
「仲介手数料」とは、不動産会社が行った営業活動に対する「成功報酬」の意味を持ちます。
家を借りる際や、不要になった不動産を売買する際には、不動産会社に依頼をするというのが一般的です。
依頼を受けた不動産会社は、お客さんの希望に合った部屋を探したり、売り出す物件のチラシを作成して広告を打ったりと、成約に向けてさまざまな営業活動をします。
そしてお客さんが無事に部屋を借りられたり、不動産の売主・買主が見つかって契約が成立したりした場合に、不動産会社に対して「仲介手数料」が支払われます。
仲介手数料に含まれるその他の費用
仲介手数料には、営業活動への成功報酬の他にもさまざまな費用が含まれます。
たとえば契約条件の調整。賃貸の場合は大家さんとお客さん、売買の場合は売主と買主の間に立って、家賃や売買価格といった契約条件の交渉・調整を行います。契約時に必要な書類を作成したり、契約から引き渡しまでの間に必要な事務手続きを行ったりするのも不動産会社の仕事です。
こうした「不動産の引き渡しまでに必要な営業活動や事務作業」に対する手数料も、仲介手数料の中に含まれています。
仲介手数料の支払いのタイミング
仲介手数料は「契約が成立したときに支払う」のが一般的です。その理由は、先述のとおり、仲介手数料は「不動産取引が成立したことに対する成功報酬」の意味を持つからです。
つまり、不動産会社に対して部屋探しや売買の依頼をしても、結果的に契約が成立しなかった場合には、仲介手数料は発生しないということになります。
賃貸の場合は、契約時に敷金・礼金・初月賃料などを契約金として支払います。仲介手数料も合わせて支払うことがほとんどです。
売買の場合は2パターンあります。1つは物件の引き渡し時に全額を支払う方法。もう1つは、売買契約締結時と引き渡し時の2回に分けて支払う方法です。どちらのパターンをとるかは不動産会社によって異なります。しかしながら、不動産売買は契約を締結すれば終了というわけではなく、締結から引き渡しまでに不動産会社がするべき事務手続きが残っています。最後までしっかりと仕事をしてもらうためにも、仲介手数料の支払いは2回に分けることをおすすめします。
また、仲介手数料はほとんどの場合で現金払いを求められます。特に売買の場合は取引金額が大きいことから、仲介手数料も高額になるため、まとめて引き出そうと思ったら上限いっぱいで引き出せないという可能性も。直前に慌てることのないよう、スケジュールに余裕を持って準備するようにしましょう。
仲介手数料の相場・上限・計算方法
仲介手数料の相場・上限・計算方法は、賃貸の場合と売買の場合で異なります。
1)賃貸の場合
賃貸の場合、不動産会社が受け取れる仲介手数料の上限額は、合計で「賃料の1ヶ月分+消費税」と定められています。
賃貸物件の仲介において、依頼主(お客さん)と大家さんの間に不動産会社が1社しか入っていない場合は、不動産会社は依頼主と大家さんの双方に仲介手数料を請求できます。この状態を「両手仲介」といい、双方から受け取れる合計額の上限が「賃料の1ヶ月分+消費税」ということになります。
それに対して、依頼主と大家さんの間に不動産会社が2社入っているケースもあります。一方の不動産会社は借主側、もう一方の不動産会社は大家側の交渉や手続きを行う仲介の形で、「片手仲介」という呼び方をします。片手仲介の場合、不動産会社が仲介手数料を請求できるのは、自社が担当する依頼主または大家さんのいずれか一方のみで、「賃料の1ヶ月分+消費税」を上限として請求可能です。
2)売買の場合
売買において不動産会社が受けとれる仲介手数料の金額の上限は、国土交通省によって下記の計算式で算出できるようにされています。
取引物件価格(税抜) | 仲介手数料の上限 |
---|---|
400万円超 | 取引物件価格(税抜)×3%+消費税 |
200万円超~400万円以下 | 取引物件価格(税抜)×4%+消費税 |
200万円以下 | 取引物件価格(税抜)×5%+消費税 |
(参照:国土交通省『宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額』第二 売買又は交換の媒介に関する報酬の額 https://www.mlit.go.jp/common/001307055.pdf)
上記の計算式を使用して仲介手数料を計算する場合、取引物件価格を「200万円以下の部分」「200万円超~400万円以下の部分」「400万円超の部分」に分割して、それぞれ計算する必要があります。しかしながら、この方法は計算が煩雑になってしまい、実用的とは言えません。
そこで実際の現場においては、下記のような「速算法」を利用して計算します。
取引物件価格(税抜) | 仲介手数料の上限 |
---|---|
400万円超 | 取引物件価格(税抜)×3%+6万円+消費税 |
200万円~400万円以下 | 取引物件価格(税抜)×4%+2万円+消費税 |
200万円以下 | 取引物件価格(税抜)×5%+消費税 |
物件価格5,000万円の不動産を購入する場合を例に計算してみましょう。
この場合取引価格=物件価格は400万円以上であるため、上の表に当てはめると、下記のように計算できます。
5,000万円×3%+6万円+消費税 =156万円+消費税15万6000円 =171万6000円(税込) |
速算法を利用すれば物件取引価格を分割せずに計算できます。不動産会社に仲介を依頼する前に、おおよその仲介手数料の金額を知っておきたい場合は、速算法で計算することをおすすめします。
なお、売買における仲介手数料の上限額は、両手仲介・片手仲介どちらの場合でも「一方に」請求できる金額です。
3)売却価格が低い場合には特例も
売買においては、2018年に施行された「空き家等の売買又は交換の媒介における特例」に当てはまる場合、上記の計算式で求められる金額より多くの金額を請求できる場合があります。
適用されるのは売買価格が400万円以下で、通常の不動産取引と比較して現地調査等の費用が必要になる場合。不動産会社は売主からの承諾と合意を得たうえで、それらの費用を仲介手数料に上乗せする形で、合計で最大18万円+消費税を受け取れるようになりました。
この改正は、近年問題となっている「空き家問題」の解消を目的としています。特に地方の空き家は長年放置されたことによる状態の劣化や、現地調査のための調査費や交通費が余計にかかることから、不動産会社が積極的に仲介したがらないという問題がありました。そのため国土交通省は、仲介手数料の上限を緩和することにより、不動産会社に対して積極的に空き家を取り扱うことを促し、空き家の利用や流通量増加が促進されることを期待しています。
なお、この仲介手数料の緩和は「売主側」のみで、買主側の仲介手数料には従来通りの計算式が適用されます。
(参照:国土交通省『宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買に関して受けることができる報酬の額』第七 空き家等の売買又は交換に媒介における特例 https://www.mlit.go.jp/common/001307055.pdf)
仲介手数料は安くできる?値引きしたい
不動産取引は多くのお金が必要になります。そのため、できる限りトータルの費用を抑えようと「仲介手数料を値引きもしくは無料にできないか」と考える人も少なくないでしょう。
1)仲介手数料は交渉OK
仲介手数料の金額は、賃貸・売買を問わず交渉可能です。
不動産取引の現場では、国土交通省が定めている仲介手数料の上限額を請求するのが慣例とされています。そのため、広告に「仲介手数料半額」などの記載があったり、依頼者側から特別な申し出があったりする場合以外は、不動産会社は受け取れる仲介手数料の上限金額を提示してきます。
しかし、実は不動産取引における仲介手数料には下限値が定められていません。そのため、依頼主と不動産会社との間で合意があれば、減額しても問題ないということなのです。
ただし、交渉の余地があるかどうかは、両手仲介と片手仲介のどちらにあたるのかによっても異なります。両手仲介の場合は、不動産屋は依頼主と大家さん、売主と買主の双方から仲介手数料を受け取れるため、値引き交渉に応じてもらえる可能性が高い傾向にあります。一方で片手仲介の場合は、交渉の難易度がやや上がるということを押さえておきましょう。
2)仲介手数料は交渉しないほうがいい場合もある?
仲介手数料の金額は交渉可能ですが、実は交渉しないほうがいい場合もあるという点に注意が必要です。
その理由は、不動産会社が営業活動に力を入れなくなる可能性があるためです。
不動産会社が受け取る仲介手数料は、いわば「売り上げ」です。つまり、値下げ交渉をしてくるお客さんよりも、満額支払ってくれるお客さんに営業活動の労力を割いたほうが、会社として得られる利益が大きいということになります。そのため過度に値下げ交渉をしてしまうことで、仲介手数料を満額払っても確実に契約してくれる他のお客さんを優先されてしまう可能性もあるのです。
とは言っても、不動産会社としても契約してもらわないことには売り上げが立ちません。値下げ交渉をするのであればできるだけ早い段階で相談するようにし、不動産会社の交渉力や物件の引き合い状況の様子を見ながら行うようにしましょう。
3)仲介手数料半額または無料の不動産会社に依頼するのもおすすめ
仲介手数料をどうしても削りたいという場合は、最初から「仲介手数料半額」や「仲介手数料無料」のサービスを行っている不動産会社の中から、依頼する業者を選定するという方法もあります。
仲介手数料は上限金額を請求する、というのが以前までの不動産業界の慣習でした。しかし、最近はインターネットやSNSの普及により、以前よりも最新の物件情報を取得したり、売買情報の周知にかかるコストを削減することが可能になりました。そうした不動産会社が負担する経費の変化と価格競争という側面から、仲介手数料の値引きに踏み切る不動産会社が増えているという状況にあるのです。
「仲介手数料無料なんて怪しい!何かサービスに欠陥があるんじゃないの?」と心配になる人もいるかもしれませんが、仲介手数料の金額が下がったからといって、不動産会社が行う業務内容は変わりません。特に売買においては、不動産会社は媒介契約書上で、物件の引き渡しが完了するまでの登記や決済手続きに至るまでの業務を行うよう義務付けられます。
最初から仲介手数料の値引きが行われている不動産会社であれば、「値引き交渉したことによって営業活動を積極的にしてもらえなくなった」ということも避けられます。
仲介手数料にかかる消費税と会計処理時の注意点
不動産の仲介を依頼した際に、仲介手数料に消費税はかかるのか、どの勘定科目に分類すればいいのかについて解説します。
1)仲介手数料に消費税はかかる?
不動産取引における仲介手数料には、消費税がかかります。2019年10月に消費税率が8%から10%に引き上げられたのに伴い、仲介手数料にかかる消費税率も10%になりました。
なお、部屋を借りる際に必要な経費の中には、消費税がかからないものもあるため、あらかじめ見積もりを出してもらうようにすると安心です。
2)仲介手数料の勘定科目
仲介手数料を仕訳する場合の勘定科目は、「支払手数料」と「土地・建物」のいずれかです。
事務所の新設や移転などで部屋を借りる場合や、不動産を売却した際に支払う仲介手数料は「支払手数料」として仕訳します。
一方で不動産を購入した場合の仲介手数料は、土地や建物という資産を得た際の取得原価に加えることになるため、「土地」または「建物」の勘定科目に加算します。
(参考:[経済]簿記勘定科目一覧表(用語集)『仲介手数料の会計・簿記・経理上の取り扱い』https://kanjokamoku.k-solution.info/2013/09/_1_1389.html)
まとめ
仲介手数料は不動産会社にとって大きな収入源であり、満足のいく不動産取引を行う場合には相当の仲介手数料を支払う必要があります。しかしながら、法律で定められた仲介手数料の上限金額や計算方法を知っておくと、実際に契約する際にトータルでいくら支払う必要があるのかを把握できるだけでなく、本来支払わなくてもいい金額の仲介手数料を負担するリスクを抑えることが可能です。
不動産会社に対する仲介手数料の金額交渉は、不動産取引にかかる費用を抑えることにつながりますが、希望の物件を契約できなかったり、条件に合った不動産を紹介してもらえなかったりするリスクもあります。仲介手数料を半額や無料としている不動産会社を上手に活用しながら、目先のお得感に惑わされず、「満足のいく契約ができるか」に重点を置いて検討するようにしましょう。