2022.12.26
不動産の購入
用途地域とは?土地や家を探すときに重要な知識
用途地域と聞いても、はてなが頭に浮かぶ人が多いでしょう。土地や家を探すとき、建物を建てる際に重要なのが用途地域です。用途地域を理解していないと、建てたい建物が建てられなかったり理想の住環境とかけ離れてしまう可能性があります。土地や家を買ったりした後で後悔するのは遅いです。将来後悔しないためには、用途地域の知識を深める必要があります。用途地域に関わることで失敗しないようにするため、この記事では用途地域について一覧表を交えながら詳しく解説していきます。
用途地域の目的とは?
用途地域の目的は「住みやすい街づくりをする」です。住みやすい街づくりをするため、用途に応じて13地域に分け、13地域一つひとつに建築できる建物などの大きさや建物の種類を制限しています。
商業施設や工場が乱立してしまう
用途地域の制限がないと、好きな場所に建てたい建物を建築できてしまいます。たとえば、閑静な住宅地にいきなり大きな工場が建てられるなどです。高層ビルや工場、商業施設、風俗店などが乱立すると治安が悪くなり住み心地が悪くなります。住みやすい街づくりを追求するために、用途地域が設けられています。
用途地域が指定されていない地域もある
用途地域は、すべての土地に指定されているわけではありません。指定されていない土地も存在します。用途地域が指定されていない地域を非線引き白地地域と呼ぶのが一般的です。非線引き白地地域に用途制限をもたらす目的で、特定用途制限地域を指定することができます。
用途地域は大きく分けて3つからなる
用途地域は大きく分けて「住居系」と「商業系」、「工業系」の3つからなります。これから3つに分類した一覧表をそれぞれ解説していきます。
住居系(8種類)
第一種低層住居専用地域 |
第二種低層住居専用地域 |
第一種中高層住居専用地域 |
第二種中高層住居専用地域 |
第一種住居地域 |
第二種住居地域 |
準住居地域 |
田園住居地域 |
住宅を建てる予定がある人や土地を探している人が注目すべきは住居
系です。住居系のなかでもっとも制限が厳しいのが、第一種低層住居専用地域になります。上から順番に制限が緩和され、住居系のなかでもっとも制限が緩いのが準住居地域です。田園住居地域は2018年に新しく追加された用途地域で、建物を建てる際は第二種低層住居専用地域と同じ制限になります。
商業系(2種類)
近隣商業地域 |
商業地域 |
商業系は住宅を建てることはできますが、騒がしい環境なのであまり向いていません。
工業系(3種類)
準工業地域 |
工業地域 |
工業専用地域 |
準工業地域・工業地域は住宅を建てることはできますが、環境面や健康面を考えると向いていません。工業専用地域は住居を建てることが不可となっています。
【用途地域一覧】13種類の特徴
13種類の用途地域は、それぞれ建ぺい率や容積率、建てられる建築物の種類などの制限が設けられています。一つひとつがどのような特徴を持っているかみていきましょう。
※これから記載する建ぺい率と容積率は地域によって割合が異なります。
※これから記載する容積率は都市計画法で定められた割合のことです。
※容積率は建物の前面道路の幅で計算が変わるので注意してください
補足
建ぺい率とは? 敷地の面積に対してどのくらいの大きさの建物を建てられるかが建ぺい率です。平面的な広さを制限します。低い建ぺい率の制限は、隣 地と間隔を取ることができ窮屈さがありません。一方、高い建ぺい率の制限は敷地いっぱいに建物を建てることが可能です。 |
容積率とは?
敷地面積に対して何階の建物を建てられるかを表したのが容積率です。低い容積率の制限だと低層階しか建てられません。一方、高い容積率の制限だと高層階まで建築が可能です。 |
【住居系】第一種低層住居専用地域
用途地域のなかでもっとも厳しい制限が設けられているのが、第一種低層住居専用地域です。低層住宅専用のため、建物の高さは10mもしくは12m以下(地域による)までに制限されています。戸建てだけでなく、10mまたは12m以下の低層アパートや低層マンションを建てることも可能です。他にも小学校や中学校、寺院、診療所などを建てることができます。一方、お店を建てる場合は床面積が50㎡以下に制限されます。50㎡以下では、コンビニやスーパーマーケットなどは建てられません。しかし、小規模なカフェなどの飲食店やクリーニング店などは建てられます。静かな場所で過ごしたい人に向いている地域です。
建ぺい率 30%~60% 容積率 50%~200% |
【住居系】第二種低層住居専用地域
高さ制限など基本は第一種低層住居専用地域と一緒です。しかし、建てられる建築物の床面積が第一種低層住居専用地域より広くなります。最大で150㎡まで可能です。床面積が150㎡まで広がると、コンビニや飲食店などが建てられます。静かな場所と買い物に困らない便利さの両方を求めている人に向いている地域です。
建ぺい率 30%~60% 容積率 50%~200% |
【住居系】第一種中高層住居専用地域
高さの高い建物を建ててよくなるのが第一種中高層住居専用地域です。高さ制限がなくなりますが日影規制が入ります。小学校と中学校に加えて幼稚園や高校、大学などの教育施設や病院、図書館などを建てることが可能です。また、建てることが可能なお店の範囲が2階建て以下かつ床面積が500㎡以下になるため、中規模の飲食店を建てることが可能です。3階建て以上のマンションが建てられるため、分譲マンションに住みたい人や買い物と飲食店に困らない便利さを求めている人に適しています。
建ぺい率 30%~60% 容積率 100%~500% |
【住居系】第二種中高層住居専用地域
基本的な部分は第一種中高層住居専用地域と同じです。建築が可能なお店の範囲が2階以下かつ床面積が1500㎡以下になります。また、第二種中高層住居専用地域から事務所を建てることが可能です。中規模な商業施設が増え買い物が便利になるため、買い物の便利さを低層住宅専用地域より求める人や事務所を作りたい法人に適しています。
建ぺい率 30%~60% 容積率 100%~500% |
【住居系】第一種住居地域
高さ制限がなく日影制限があるのは第一種中高層住居専用地域と同じです。建てることが可能なお店は、床面積が3000㎡以下に広がります。階数制限はありません。建築可能な建物の種類は、第二種中高層住居専用地域で可能な建物に加えて床面積が3000㎡以下のホテルや旅館、ボーリング場、ゴルフ練習場などが建てられます。商業施設が多くなるため、静かな住宅街より生活の便利さを重要視したい人に最適です。
建ぺい率 50%~80% 容積率 100%~500% |
【住居系】第二種住居地域
基本的な制限は第一種住居地域と同じです。建築が可能な建物は床面積が10000㎡以下になります。第一種住居地域で建てられる建物に加えて、床面積が10000㎡以下のカラオケボックスやパチンコ店などを建てることが可能です。第一種住居地域よりにぎやかになるため、休日を住む場所の近くで楽しみたい人に向いている地域になります。
建ぺい率 50%~80% 容積率 100%~500% |
【住居系】準住居地域
国道や幹線道路と住居をバランスよく保つ地域が準居住地域です。準居住地域は、国道や幹線道路沿いの地域が多く選ばれています。車庫や倉庫、作業場の面積が150㎡以下の自動車修理工場、客席部分と用途に使用する部分が200㎡未満の映画館やナイトクラブなどを建てることが可能です。準居住地域になると大型の建物を建てることができるようになります。車を利用することが多い人や運搬の多い業種の法人に向いている地域です。
建ぺい率 50%~80% 容積率 100%~500% |
【住居系】田園住居地域
2019年4月から追加されたのが田園住居地域です。農業と住宅をバランスよく保つのを目的としています。制限は第一種低層住宅専用地域に似ており、住宅のほかにも幼稚園から大学までの教育施設や病院、寺院、神社、図書館を建てることが可能です。加えて、2階建て以下かつ床面積が500㎡以下の農産物を取り扱う直売所や農家が運営するレストラン、農産物を保管したり農業に使用する資材の倉庫を建てることができます。農地を利用して農業をしたい人や農産直売所などで働いている人に最適です。
【商業系】近隣商業地域
商業の発達を促し近隣住民の日用品の買い物をしやすくした地域が近隣商業地域です。店舗や事務所、カラオケボックスや映画館などの床面積の制限がなくなり、さまざまな建物が建てられるようになります。また、危険性がなく地域の環境を悪化させる恐れのない床面積が150㎡以下の工場や、床面積が300㎡以下の自動車修理工場も建てることが可能です。ただし、ナイトクラブやキャバレーなどは建てることができません。住居地域に比べて騒がしさが一段と増すため、百貨店やモール、飲食店に勤める人や仕事で家にあまりいない人に向いている地域です。
【商業系】商業地域
主要駅の周りに指定されるのが商業施設です。近隣商業地域より制限が緩くなり、百貨店や飲食店、映画館、銀行など大型商業施設が密集します。キャバレーやナイトクラブなどの風俗施設や温泉や銭湯、小規模な工場を建てることが可能です。商業に力を入れている地域なので、住む環境にはあまり向きません。
【工業系】準工業地域
危険性が大きい、もしくは環境に悪影響をもたらす可能性がある工業以外を促進するのが準工業地域です。建築が可能な建物は温泉や銭湯を除き、商業地域で可能な建物を建てることができます。加えて、商業地域より危険性の高い工場や危険物(火薬、石油類、ガス)の貯蔵・処理量が多い工場と倉庫が建築可能です。準工業地域は郊外に多く指定され、日用品を買える商業施設が多くあるため、工場で働く人に向いている地域になります。
【工業系】工業地域
工業を発展させる目的で指定されるのが工業地域です。工場と倉庫の建築制限がなくなります。危険性が大きい、または環境に悪影響をもたらす可能性がある工場や危険物の貯蔵・処理の量が多い施設を建てることが可能です。一方、工業地域は健康に悪影響を及ぼす可能性が高いため、学校や病院、ホテル、旅館などの建築が認められていません。他にも、床面積が10,000㎡超えの店舗や映画館、キャバレーなどが建築できなくなっています。工業地域は湾岸の周辺が選ばれることが多いです。
【工業系】工業専用地域
工業の発展に特化した地域が工業専用地域です。工業地域と同じく工場と倉庫の建築制限がなく、どんな工場や倉庫でも建てることができます。しかし、工業に特化しているため、住宅を建てることができません。また、店舗も物品販売店や飲食店が建てられないなど、工場と倉庫以外の建物の制限が厳しい地域です。
用途地域を調べる方法とは?
用途地域の一覧を調べる方法は主に3つあります。「市区町村のホームページ検索」と「国土数値情報のダウンロード」、「用途地域マップ」です。3つそれぞれどのような特徴があるのかを詳しく解説していきます。
市区町村のホームページ検索
各市区町村のホームページで市区町村ごとの用途地域を調べられます。市区町村が掲載しているので正確な情報かつ最新情報を得られるのがメリットです。掲載方法は市町村それぞれで異なるため、調べたい土地の市区町村のホームページから確認してみてください。
国土数値情報のダウンロード
用途地域の資料を手に入れる際に最適なのが国土数値情報ダウンロードサービスです。用途地域のデータを地域ごとにダウンロードすることが可能です。ダウンロードに手間と時間がかかりますが、正確かつ最新の情報を手に入れることができます。
用途地域マップ
調べたい土地を都道府県から順番に選択するだけで、用途地域を確認できるのが用途地域マップです。検索手順がかんたんなため、用途地域を確認するのにもっとも便利です。用途地域マップは国土交通省政策局の国土数値情報を基に作られていますが、常に最新の情報とは限らないので注意をする必要があります。最新の情報を知りたい場合は、市区町村のホームページか国土交通省政策局の国土数値情報が最適です。
まとめ:用途地域を理解して土地や家の購入、賃貸選びで失敗しないようにしましょう
用途地域は建物を建てる際に大きく関わってきます。間違った用途地域を選んでしまうと、理想の建物を建てられない可能性が高いです。加えて、将来の土地や建物の価値にも影響してきます。土地や家の購入などで失敗しないためにも、用途地域の理解が必要です。また、用途地域は国や市区町村の方針で変更となったり追加される可能性があります。検討している土地や家などがある場合は、最新の情報を得る必要があるでしょう。用途地域を調べるのは少し手間がかかりますが、将来後悔しないためにも時間を惜しまず検索してみてください。