2022.12.26
土地の購入
土地を購入したときには確定申告する必要ってあるの?
土地を売却した場合はほぼ必ず確定申告をする必要があります。
それでは土地を購入した場合は確定申告をする必要があるのでしょうか。
実は土地を購入するときには確定申告をする必要はありません。
ただし、土地を購入したときに確定申告をしたほうが良い場合があります。
確定申告をしたほうが良い場合は、土地を購入してすぐに新築住宅を建てるケースです。
本記事では、確定申告とは何か、土地購入したときに確定申告が不要な理由、どのようなときに確定申告をしたほうが良いのかなどを解説します。
確定申告とは
確定申告とは、1月1日~12月31日までの1年間に得た所得を翌年2月16日~3月15日までに申告する制度です。
確定申告で所得を申告することにより、所得税など各種税金の税額を確定するために行います。
確定申告をしなければならない人は次のとおりです。
●給与の収入金額が2,000万円を超えている人
●給与を2か所以上から受けている人
●給与所得と退職所得以外の所得金額が20万円を超えている人など
なお、土地を売却した場合は確定申告がほぼ必ず必要になります。
その理由は次のとおりです。
●土地を売却したときに譲渡所得が出てしまうから(譲渡所得が20万円を超えると確定申告が必要)
●譲渡損失が出た場合繰り越しの特例が利用できるから
つまり、土地を売却し譲渡所得が出た場合はほぼ確定申告をしなければならない、損失がでたら特例を利用できるという2つの理由により、確定申告をほぼしないといけないことになります。
土地購入するだけなら確定申告は不要
確定申告は基本的に収入があったことを申告し、所得税などを確定するために必要な制度です。
そのため、所得を得るわけではない土地の購入に関しては確定申告をする必要はありません。
しかし、土地購入した場合に確定申告をしたほうが良いケースも存在します。
それは確定申告をしなければ減税されない減税措置である住宅ローン控除を利用する場合です。
住宅ローン控除の概要
住宅ローン控除とは自宅となる住宅を住宅ローンを借り入れて購入した場合、住宅ローンの年末残高に対して0.7%分の所得税控除を一定期間受けることができる減税措置です。
住宅ローン控除を受けるときにはさまざまな適用要件をクリアする必要があります。
また、住宅ローンは建築する建物の環境性能や入居時期によって控除される税額が変わります。
住宅ローンの適用要件
住宅ローンの適用要件は細かく決まっており、条件を満たす必要があります。
住宅ローンの適用要件は次のとおりです。
【新築住宅の適用要件】
●住宅ローン控除を受けようとする人が、住宅の引渡し日か住宅工事の完了から6ヶ月以内に住み始めること
●住宅ローン控除を受ける人の年の合計所得金額が2,000万円以下であること
●対象となる住宅の床面積が50㎡以上で、床面積の2分の1以上が自身の居住用であること
●※合計所得金額1,000万円以下で、2023年末までに建築確認を受けた新築住宅の場合に関しては住宅の床面積が40㎡以上50㎡未満でも 適用可能
●対象となる住宅に対して10年以上借入期間がある住宅ローンがあること
●自宅として住み始めた年とその年前後2年を合わせた計5年の間に、居住用財産の譲渡による長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けていないこと
住宅ローン控除は一定条件を満たすことにより、土地購入のために借りたローンについても適用することができます。
土地購入のために借りたローンで住宅ローン控除を利用する条件は次のとおりです。
【土地を先行して購入する場合の適用要件】
●新築住宅の適用要件を満たすこと
●土地購入から2年以内に購入した土地に住宅ローンを利用した建築した住宅を建てること
●土地や建物のための住宅金融支援機構などから借り入れた金銭を使い住宅の新築着工後に受けたローン
●建築条件付き土地を購入してから3ヶ月以内に建築請負工事契約を締結した場合
●建築条件付き土地を購入し地方公共団体などからの借入金を新築する前に受けたローン
このように土地を先行して購入する場合でも住宅ローン控除の適用要件を満たすことができます。
そのため、土地を購入する場合でも確定申告が必要になるわけです。
住宅ローン控除期間や控除可能上限金額
住宅ローン控除は建築する建物の環境性能や入居時期によって控除できる期間や控除できる金額が異なります。
環境性能などによる住宅ローン控除の内容の違いを表にまとめました。
住宅ローン控除の控除期間や控除可能上限金額の違い
住宅新旧等 | 住宅環境性能等 | 借入限度額 | 控除期間 | 控除割合 | |
令和4・5年入居 | 令和6・7年入居 | ||||
新築住宅 買取再販 |
長期優良住宅 低炭素住宅 |
5,000万円 | 4,500万円 | 13年間 | 0.7% |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 | |||
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 | |||
その他住宅 | 3,000万円 | 0円 | |||
既存住宅 | 長期優良住宅 低炭素住宅 ZEH水準省エネ住宅 省エネ基準適合住宅 |
3,000万円 | 10年間 | ||
その他住宅 | 2,000万円 |
例えば、建築する住宅が長期優良住宅・低炭素住宅、入居が令和5年で住宅ローン年末残高が5,000万円の場合
5,000万円 × 0.7% = 35万円(所得税控除額)
この場合は年末残高5,000万円ある年の所得税が35万円控除されます。
もう1つシミュレーションをしてみましょう。
省エネ基準適合住宅を建築、令和6年に入居し年末残高が5,000万円ある場合
省エネ基準適合住宅で、入居年が令和6年になる場合は年末残高3,000万円までしか認められないため、年末残高が5,000万円でも3,000万円として計算します。
3,000万円× 0.7% = 21万円(所得税控除額)
このように建築する建物の環境性能や入居時期によって、1年間の所得税控除額が大きく変わります。
住宅ローン控除の申請方法や申請書類
住宅ローン控除を受けるときには毎年確定申告をする必要があります。
なお、確定申告をする要件を満たしていない給与所得者は2回目以降の確定申告を勤務先で行うことが可能です。
しかし、個人事業主など毎年確定申告しなければならない人は、確定申告で住宅ローン控除の手続きをする必要があります。
ここからは住宅ローン控除の申請方法や申請書類を紹介していきます。
住宅ローン控除の申請方法
住宅ローン控除を確定申告で申請するときには、次のような流れで申請をします。
⒈住宅借入金等特別控除額計算証明書の記入など作成
⒉確定申告書の記入など作成
⒊確定申告書の提出
⒋還付金振込
住宅ローン控除の申請書類
住宅ローン控除を申請するときは確定申告と年末調整で必要な書類が変わります。
ここからは住宅ローン控除を申請するときの確定申告で必要な書類と年末調整で必要な書類とに分けて紹介します。
確定申告時に必要な書類
確定申告で住宅ローン控除を申請するときの書類は次のとおりです。
なお、この必要書類は給与所得者が1回目の住宅ローン控除申請をするときに必要な書類です。
●確定申告書AまたはB
●住宅借入金等特別控除額の計算明細書
●本人確認書類の写し
●建物・土地の全部事項証明書(登記簿謄本)
●建物・土地の不動産売買契約書や請負契約書の写し
●源泉徴収票
●住宅ローンの借入金年末残高証明書
●特例住宅の証明書類
年末調整で必要な書類
給与所得者が年末調整で住宅ローン控除申請をするときに必要な書類は次のとおりです。
●給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書兼住宅借入金等特別控除計算明細書
●住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
各種申告をすると還付金として所得税控除額が指定口座に振り込みされます。
所得税控除額が振り込みされるのは確定申告や年末調整をしてから1ヶ月~2ヶ月後くらいになります。
なお、給与所得者でも1回目の住宅ローン控除は、確定申告で申請をする必要があります。
住宅ローン控除の申請を忘れた場合
住宅ローン控除を申請するときには確定申告で申請する必要がありますが、確定申告をするのを忘れてしまう人もいます。
この忘れたというのには、確定申告自体忘れた場合と確定申告はしたが住宅ローン控除申請をし忘れたという2つのパターンに分かれます。
ここからは確定申告自体忘れた場合と確定申告はしたが住宅ローン控除申請をし忘れた場合に分けて解説します。
確定申告自体し忘れた場合
住宅ローンを借りて不動産を購入した年に確定申告自体をし忘れた場合、翌年の確定申告で住宅ローン控除を申請することができます。
もし確定申告自体忘れても不動産を購入してから5年の間であれば遡って適用されます。
また、2年目以降の年末調整で住宅ローン控除申請を忘れてしまった場合、年末調整に間に合う時間がまだ残っていれば、会社に再度年末調整の手続きを取ってもらうことで住宅ローン控除が利用できます。
また、会社が手続きを拒んだり、年末調整の期間がなかったりしたとしても、確定申告で住宅ローン控除を申請することで住宅ローン控除が利用可能です。
確定申告はしたが住宅ローン控除申請をし忘れた場合
確定申告をしたが住宅ローン控除の申請をし忘れた場合には、原則、もう住宅ローン控除を利用することはできなくなります。
確定申告では納め過ぎていている税金を還付してもらうなどの更正の請求をすることが可能ですが、住宅ローン控除の申請を忘れたという忘れたという行為には更正は認められていません。
そのため、税務署に確定申告をしたが住宅ローン控除の申請をし忘れたと申し出ても、その申し出が通る可能性は低いと考えられます。
確定申告をするときに住宅ローン控除の申請をしないと大事になる可能性があるため注意が必要です。
住宅ローン控除利用の注意点
住宅ローン控除を利用するときには知っておけなければならない注意点があります。
ここからは住宅ローン控除を利用するときの注意点を紹介します。
所得税を控除しきれない場合がある
住宅ローン控除を利用すると所得税控除されますが、人によっては所得税控除額が所得税額より多くなり所得税を控除しきれないケースがあります。
所得税から控除しきれない場合、住民税から一定金額控除されますが、住民税からも控除しきれない場合は住宅ローン控除が無駄になってしまいます。
特に所得税額控除が認められているふるさと納税を行う場合は注意が必要です。
ふるさと納税を行ったときの所得税控除は、住宅ローン控除の所得税控除より優先的に適用されるため、住宅ローン控除の所得税控除が無駄になる可能性が発生します。
繰上返済のタイミングが難しい
住宅ローン控除は年末残高の金額で所得税控除額が決まります。
そのため、住宅ローンを繰上返済してしまうと年末残高が少なくなるため所得税額控除が少なくなってしまいます。
しかし、繰上返済を行うと住宅ローン期間短縮などで支払わないといけない利息額が減ります。
そのため、住宅ローン控除をそのまま続けたほうがお得になるのか、繰上返済をしたほうがお得になるのか判断に迷うことがあります。
住宅ローン控除と繰上返済、どちらがお得になるのかは金融機関の担当者に確認したほうが良いでしょう。
住宅ローン控除要件の数字に注意
住宅ローン控除の適用を受ける要件にはさまざまな数字があります。
例えば、適用される住宅の面積は50㎡以上(場合によって40㎡以上)とありますが、この面積の数字は登記簿面積(内法面積)です。
不動産概要などのパンフレットに記載されている面積は壁芯面積で、内法面積より面積が大きくなります。
そのため、壁芯面積で50㎡であれば、内法面積で表現すると50㎡を切ってしまいます。
この場合は住宅ローン控除を適用することはできません。
また、住宅ローン控除を適用するためには10年以上の借入期間を設けなければなりません。
しかし、現金が多くある場合、10年未満で住宅ローンを借りてしまうこともあります。
この場合も住宅ローン適用要件を満たさなくなるため、住宅ローン控除が利用できなくなります。
このように住宅ローン控除の適用要件である数字を正確に把握しておかないと、住宅ローン控除が適用されない可能性が生まれてしまうため注意が必要です。
まとめ
土地を購入する場合には、基本的に確定申告をする必要はありません。
確定申告はその年にあった所得を確定し、所得税などの税金額を確定するために申告するもので、土地購入をしても所得は増えないからです。
しかし、住宅ローン控除のように、利用条件に確定申告をすることが必要な制度を利用する場合には確定申告を行わなければなりません。
住宅ローン控除は年末調整で行うと思い込んでいる人は注意が必要です。
住宅ローン控除を年末調整で行うことができるのは、確定申告をする必要がない給与所得者が2回目以降の住宅ローン控除申請をするときだけです。
1回目の住宅ローン控除申請はすべての人が確定申告にて申請する必要があります。
土地を購入したときに住宅ローン控除を適用する場合は、通常の住宅ローン控除より適用要件が厳しくなるため、ハウスメーカーなどの専門家に住宅ローン控除が適用できるか確認するのが良いでしょう。