2022.12.26
土地の購入
【土地購入の落とし穴】注意点や覚えておきたい法律を解説!
土地購入では、小さな見落としが大きなトラブルに発展することは少なくありません。
マイホームに夢を膨らませて土地を購入したにもかかわらず「思わぬトラブルで余計なお金と労力がかかってしまった…」と出鼻をくじかれてはもったいないです。
土地購入は多くの法律が絡むため、馴染みのない人には難しく感じるかもしれませんが、1つずつ理解していくことが大切です。
この記事では、土地購入におけるタイミング別の注意点や、覚えておきたい法律について解説します。
ちょっとした注意や知識で防げるトラブルは多いので、この記事でポイントを押さえてから土地購入に動き出しましょう。
【不動産屋に行く前に】土地の条件を決める際の注意点
土地購入の相談で不動産屋に行く前に、土地の希望条件を決めましょう。
土地の希望条件を決める際の注意点は以下の3つです。
・行政サービス
・住環境
・購入時の税金
不動産屋は、顧客の希望条件に基づいて土地を探してくれます。
スムーズな土地探しのためには、不動産屋に行く前に、現実的かつ家庭に適した希望条件を固めておくことが大切です。
3つの注意点を、それぞれ見ていきましょう。
行政サービスによって生活が変わる
利用できる行政サービスによって、生活スタイルや毎月の支出額が変わります。
行政サービスの内容は住む街によって大きく異なるため、行政サービスに着目して街を選ぶことが大切です。
主な行政サービスは以下のとおりです。
・水道料金
・ごみ処理
・子育て支援
・医療費や介護の助成金
・図書館や公民館、公園などの公共施設
特に子育てを予定している家庭の場合は、子供の数や年齢などによってサービス内容が変わることもあるため、対象範囲や期間まで調べましょう。
行政サービスの内容は、各自治体のホームページから調べることができます。
住環境は未来を想像する
住環境はライフプランや老後などの未来を想像しながら考えることが大切です。
住環境によっては、今は良くても将来的に困る可能性があります。
坂道が多い土地の場合…
・子供を自転車で送り迎えする際の負担が大きい
・足腰が弱ってくると近所に出かけるのも一苦労
・場所によっては雨水が溜まりやすい
駅からの距離が遠い土地の場合…
・電車での通勤や通学が大変
・車を手放した際の移動が不便
・スーパーや保育園などの施設が駅の近くに集まっていて移動時間がかかる
10年後や20年後、その先はどのような生活スタイルになっているのか、家族と具体的に考えたうえで住環境の条件を固めましょう。
購入予算は税金を考慮する
土地購入の予算は、土地の購入代金だけでなく税金の額も含めて考えることが大切です。
金額が大きい土地は、そのぶん税金もかかるため、税金を考慮せずに予算を立ててしまうと後から予算オーバーになってしまうことがあります。
土地の購入時にかかる税金は以下の4つです。
・印紙税
・不動産取得税
・登録免許税
・固定資産税
それぞれの税率は土地の購入時期やエリア、家の購入によって変わります。
国税庁のホームページなどを参考に税率を計算し、予算に組み込んでください。
税率の計算が難しい場合は、不動産屋に相談しても良いでしょう。
【これだけは覚えておきたい】土地に関わる法律や定め
不動産屋に土地を紹介してもらう前に、土地購入で重要な以下6つの法律や定めを覚えておきましょう。
・用途地域
・北側斜線制限
・道路斜線制限
・接道義務
・建ぺい率
・容積率
土地購入では、建築基準法など多くの法律が関わります。
専門用語が多く言い回しも独特なため、馴染みのない人にとっては難しく感じてしまうものです。
しかし「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないためには、知識を付けておくことが大切です。
最低限覚えておきたい法律や定めを1つずつ解説していきます。
エリアによって建てられる家が変わる【用途地域】
用途地域とは、土地のエリアによって建物の種類や規模など、様々な建築条件を定めるものです。
都市計画法という法律に基づいており、土地の使い道ごとに13のエリアに分けられています。
用途地域の13のエリアと主な建築物は以下のとおりです。
・「第一種低層住居専用地域」:低層住宅
・「第二種低層住居専用地域」:低層住宅・コンビニなどの小さな店
・「第一種中高層住居専用地域」:中高層住宅・学校・病院
・「第二種中高層住居専用地域」:中高層住宅・中規模な商業施設・事務所
・「第一種住居地域」:中高層住宅・大規模な商業施設・ホテル
・「第二種住居地域」:中高層住宅・カラオケ屋・パチンコ屋
・「準住居地域」:国道や幹線道路沿いの中高層住宅・自動車修理工場・映画館
・「田園住居地域」:低層住宅・農産物直売所・農家レストラン
・「近隣商業地域」:大規模な商業施設・自動車修理工場・映画館
・「商業地域」:百貨店・銀行
・「準工業地域」:工場・ホテル・ボーリング場
・「工業地域」:工場・高層マンション
・「工業専用地域」:工場
上から下に行くほど、建築可能な施設の種類や面積が増えていき、街が賑やかになるようなイメージです。
低層住宅とは、高くても3階建てほどの一軒家やマンションのことなので、閑静な住宅街に住みたい場合は「低層住宅専用地域」を選ぶと良いでしょう。
用途地域は住環境に直結するため、希望に合った用途地域にある土地を選ぶことが大切です。
家の高さが決まる【北側斜線制限】と【道路斜線制限】
北側斜線制限と道路斜線制限は、家を建てる際の高さを制限する法律です。
建築基準法に基づいて定められています。
まず北側斜線制限は、北側にある隣の家の日当たりを確保するために、家の北側に面した部分に斜めの高さ制限がかかります。
屋根が斜めになっているデザインの家は、北側斜線制限により屋根の北側を低くしているケースが多く見られます。
一方で道路斜線制限は、道路の日当たりや風通しを確保するために、道路に面した部分に斜めの高さ制限がかかります。
高さ制限がかかることで、2階の面積が1階よりも小さくなる可能性があります。
土地を購入して家を建てるのであれば、北側斜線制限や道路斜線制限を加味したうえで間取りを考えましょう。
土地と道路は離せない【接道義務】
家を建てる土地は、建築基準法上の道路に2m以上接している必要があります。
これを接道義務と言います。
建築基準法上の道路とは、基本的に幅が4m以上ある道路のことです。
土地に接する道路の幅が4m未満の場合には、土地を後ろに下げて4m分の幅を確保しなければなりません。
土地を後ろに下げることを、セットバックと言います。
セットバックが必要な場合、家を建てられる面積が小さくなってしまうデメリットがあります。
土地に接する道路について、図面には「道路」としか書かれていないことが多いです。
接道義務を果たしている道路なのか、セットバックが必要なのかを不動産屋に必ず確認しましょう。
家の大きさが決まる【建ぺい率】【容積率】
建ぺい率と容積率によって、建てられる家の大きさが決まります。
建ぺい率とは、土地の中で家を建てられるスペースの割合のことです。
例えば建ぺい率が50%の場合、家を建てられるスペースは土地の大きさの半分までということになります。
また容積率とは、土地の大きさに対する延べ床面積の割合のことです。
延べ床面積はすべての階の床面積の合計なので、1階が100㎡で2階も100㎡の場合、延べ床面積は200㎡となります。
延床面積が200㎡の家を100㎡の土地に建てた場合、容積率は200%となります。
建ぺい率と容積率は建築基準法によって定められており、用途地域や周辺環境によって上限が変わります。
土地に余白を持たせることで、日当たりや風通しの確保、防火対策などの役割を担っています。
【土地見学に行く前に】不動産屋で確認するべき注意点
不動産屋で土地を紹介してもらう際には、土地の見学に行く前に、以下の3点について確認しましょう。
・ハザードマップ
・土地の形
・建築協定
これらは図面やグーグルマップ、不動産屋から確認できます。
土地購入は早いもの勝ちなので、可能な限り無駄な時間を省くことが大切です。
土地の見学に行く前に注意点を確認しておくことで「せっかく見学に来たのに、そもそも条件に合っていなかった…」という無駄足を防ぐことができます。
不動産屋で確認するべき3つの注意点を、それぞれ見ていきましょう。
ハザードマップで土地の危険度を知る
ハザードマップとは、大雨や洪水、地震などの自然災害における土地の危険度を地図上で表したものです。
各市区町村のハザードマップは、国土交通省のホームページから確認することができます。
ハザードマップは以下の種類があり、災害時に起こりうる被害ごとに作られています。
・洪水ハザードマップ
・内水ハザードマップ
・ため池ハザードマップ
・高潮ハザードマップ
・津波ハザードマップ
・土砂災害ハザードマップ
・火山ハザードマップ
・地震危険度マップ
近年は大雨による川の氾濫で家が流されてしまったり、地震による土地の液状化で家が傾いてしまったりと、土地や家への被害が後を絶ちません。
有事に対する不安を取り除くためにも、気になる土地を見つけたらハザードマップを確認しましょう。
土地の形
土地の形にも注意が必要なので、確認しておきましょう。
いびつな形や三角形の土地の場合、以下のようなリスクがあります。
・家を建てる際にハウスメーカーの規格に合わず、追加費用がかかる
・利用できないデッドスペースが生まれ、そのぶんの土地代が無駄になる
・デメリットが多いことから、土地を売却する際の評価が低くなる
いびつな土地は購入価格が低い傾向にあるため魅力を感じるかもしれませんが、生活のしやすさや総費用を考慮すると、一般的な四角い形の土地が無難です。
建築協定
建築協定とは、美しい街づくりや住みやすさの向上などを目的として、地域で定められているルールや制限のことです。
内容によっては、家のデザインの希望を諦めざるを得ないケースもあるため注意しましょう。
建築協定のルールや制限には、以下のような項目が多く見られます。
・家の外壁の色やデザイン
・家の高さ
・屋根の形
・塀の種類
・建ぺい率
・容積率
建築協定は法律を緩和するような定めはできないため、建築基準法などよりも厳しいルールや制限が課されます。
土地を購入してから窮屈に感じることがないように、事前に内容を理解しておくことが大切です。
【土地を実際に確認する】見学時の注意点
図面やグーグルマップ上で問題がなく、希望条件に合っている土地が見つかったら、現地まで見学に行きます。
土地を実際に見学する際の注意点は以下のとおりです。
・境界杭の有無
・土地の高さ
・消火栓の位置
・周辺環境
図面には書かれていない落とし穴を見逃さないように、自分の目で注意点を確認しましょう。
境界杭がご近所トラブルの火種になる
まずは隣の土地との境界を示す境界杭(きょうかいぐい)の有無を確認しましょう。
境界杭が無い場合は、以下のような手間が増える可能性があります。
・「どこまでが自分の土地か」という論点で隣人と揉める
・隣人と話し合ったうえで専門業者に依頼して、境界杭を設置する
境界杭はこのようなものが多いです。
上記の画像とは異なる見た目をしている可能性もあるため、見当たらない場合は不動産屋に確認しましょう。
低い土地には水が流れ込んでくる
土地の高さにも注意が必要です。
周りに比べて土地が低い場合は、以下のようなデメリットが考えられます。
・水はけが悪く、湿気や水が溜まりやすい
・雨水が流れてくる
・日当たりが悪い
さらにハザードマップ上で水害の危険度が高い土地の場合、水が溜まりやすいことから深刻な被害を引き起こす可能性もあります。
土地を底上げして周りの高さに合わせる方法もありますが、追加で工事費用がかかるため予算の見直しが必要です。
周りの土地を見て、高さを比較しておきましょう。
消火栓の位置が駐車スペースを決める
消火活動の際に水を供給する消火栓の位置によって、土地の駐車可能なスペースが決まります。
道路交通法の定めで、消火活動の際に妨げにならないように、消火栓から5mの範囲は駐車禁止とされています。
消火栓は基本的に動かせないため、駐車場を作る予定の場所から5m以内に消火栓がある場合は、駐車場をずらさなければなりません。
消火栓の位置によっては、そもそも土地に駐車場を作れない可能性もあるので、注意して見ておきましょう。
最寄り駅から歩いて周辺環境を確かめる
最寄り駅から土地まで、車を使わず実際に歩いてみることで、周辺環境を正しく確かめることができます。
特に以下のポイントは、生活への影響が大きいためよく見ておきましょう。
・交通量
・人通り
・騒音
・電車が通る時の音
・信号や踏切の待ち時間
・坂道の多さや傾斜
・土地周辺の電柱やごみ置き場の位置
曜日や時間を変えて、周辺環境を再度確認することも大切です。
日中は賑わっていても夜は人通りや街灯が少ないなど、環境への印象が大きく変わることもあります。
まとめ【知識と注意でトラブルを防ぐ】
土地購入は決めることや考えることが多いため、小さな見落としによりトラブルが発生することも少なくありません。
不動産屋に任せきりにするのではなく、法律など最低限の知識を付けたうえで、自分主体の土地購入にすることが大切です。
不動産屋に行く前後や土地の見学時など、それぞれのタイミングごとに自分の目で注意点を確認することで、トラブルを防ぎスムーズに土地を購入できます。
注意点を確認する際に疑問が生じた場合は、納得できるまで不動産屋に確認してください。
土地購入は人生で一度きりの人がほとんどです。
わからないことや不安なことを1つずつ確実に解消していくことで、後悔しない土地購入にしましょう。