2022.07.19
土地の購入
いい土地が見つからない!土地探しのコツと知っておきたい土地の知識
理想の家づくりは、理想の土地探しから始まります。「いい土地」の条件は、交通の便や周辺施設の充実度、価格の安さなど、土地を探す人によって異なります。「いい土地」を見つけるには、自分がどのような土地を求めているのかを把握し、優先順位をつけることが大切です。
土地を探す方法は大きく分けて4つありますが、不動産会社に依頼して土地探しを行う人が多いでしょう。不動産会社を選ぶ際は、購入を希望するエリアに精通している、土地売買を専門にする業者に依頼するのがおすすめです。ただし、不動産会社に任せきりにするのではなく、建てられる住宅の制限などのルールは大まかに知っておく必要があります。基本的な知識を持った状態で土地を比較することで、購入した後で「建てたい家が建たない」という失敗を防げます。
土地の売買では非常に大きな金額が動くことになるため、売買契約を締結する前に、購入後に想定されるトラブルやイメージとの食い違いを極力なくす工夫をする必要があります。本記事では「建てたい家が建つ」土地の探し方と、購入前に確認しておきたい注意点を解説します。
1.「いい土地」とはどんな土地?
ひとくちに「いい土地」と言ってもその解釈はさまざま。具体的にどのような土地のことを言うのかがわからない、という人もいるのではないでしょうか。
「いい土地」は人によって違う
どのような土地のことを「いい土地」というかは、本人がどのような目的で土地を探しているかによっても変化します。例えばこれから子供が産まれる夫婦の場合は、公園・学校・図書館といった公共施設が多くあり、交通機関が近い土地を「いい土地」と考えるかもしれません。
一方で、大型犬を複数頭買うことが夢で、日当たりが良く広い庭付きの家を建てることを目的としている人の場合は、交通アクセスや周辺施設よりも、面積の割に価格の安い土地のことを「いい土地」と捉える可能性もあります。
どのような家を建てたいかというイメージ次第で「いい土地」の捉え方が異なるため、「自分の目的を達成できる土地」が「いい土地」であると言えます。
「いい土地」が見つからない理由
土地探しを始めたばかりのときは、多くの人がインターネットの不動産情報サイトに希望する条件を入力して探します。しかし、希望する条件に該当する土地の情報がなかなか見つからない、という経験をしたことがある人もいるでしょう。一般の人が「いい土地」をなかなか見つけられない理由は、すべての土地の情報がインターネット上に掲載されるわけではない、という点にあります。
不動産会社は、土地の売主から依頼を受けて買主を探します。条件のいい土地や人気のエリアの土地は、インターネットに掲載する前に、不動産会社が独自に抱える顧客との間で契約まで進むことがほとんどです。独自の顧客に提案しても成約しない=人気のない土地のみ、インターネット上に掲載されるというケースも少なくありません。つまり、一般の人が簡単にアクセスできる土地情報は「売れ残り」である可能性があるのです。
インターネットでの土地情報検索は、同じエリア・類似した条件の土地の過去の成約情報や、土地の相場感を掴むことには大いに役立ちます。しかしながら、土地の購入のために具体的に行動を起こすのであれば、リアルタイムな売買情報を閲覧できる不動産会社の力を借りる必要があります。
2.土地を探す方法
家を建てることを決めたら、まずは土地探しから始めなくてはいけません。購入する土地を探す方法は大きく分けて4つあります。
・不動産会社に依頼する
・自分の足で探す
・インターネットで探す
・ハウスメーカーに依頼する
順番に解説していきます。
1)不動産会社に依頼する
土地探しといえば不動産会社に依頼するもの、というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。不動産会社に土地探しを依頼するメリットは、希望条件に合った土地をスムーズに提案してくれる点。
不動産会社に依頼して土地探しをする場合は、不動産会社選びが非常に重要になってきます。不動産会社のなかには賃貸物件の仲介は得意でも、建物や土地の売買はあまり得意ではないという業者も存在するためです。土地に関する十分な情報を提供してもらうためには、不動産売買を得意・専門としている不動産会社を選ぶようにしましょう。
また、土地を購入する予定の地域をメインに取り扱っている不動産会社であれば、土地のあるエリアの気候や風土・風習、交通についても詳しい可能性が高いです。
2)自分の足で探す
家を建てたいエリアに実際に足を運んで探すという方法もあります。この方法のメリットは、街の雰囲気や交通の便、周辺にどんな施設があるか、夜の人通りなど防犯性はどうかを、直接体感できる点です。空き地や売り地が見つかった場合は、近くの不動産会社に依頼することで、情報をもらったり調べてもらったりできます。
ただし、必ず見つかるわけではないため、場合によっては無駄足になってしまうことも。土地探しに時間や労力をかけたくない場合は、最初から不動産会社に依頼したほうがいいでしょう。
3)インターネットで探す
土地を探し始めたばかりの人が多く利用するのが、インターネットを活用した土地探しです。不動産情報サイトや不動産会社のホームページにアクセスして、希望条件を入力することで、スピーディーかつ手軽に多くの不動産情報を閲覧できるという点がメリットです。
一方デメリットは、インターネット上に掲載されている情報が、必ずしも最新のものとは限らないということ。すでに申込が入っている・契約済みの土地が掲載されたままになっているというケースも少なくないという点に注意が必要です。
4)ハウスメーカーに依頼する
家の設計・建築を依頼するハウスメーカーの候補がすでにある場合は、土地探しも一緒に依頼することも可能な場合があります。
注文住宅を建築する場合は、土地探しと家の設計を同時に進める必要があります。ハウスメーカーに土地探しもあわせて依頼することで、希望の家を建てるためにはどのような条件の土地が必要かをふまえて提案してもらえるというメリットがあります。
ただし、ハウスメーカーに土地探しを依頼する場合は、そのハウスメーカーで家を建てることが前提になります。ハウスメーカーごとに提供している建築プランはさまざまなため、依頼するハウスメーカーも慎重に選ぶようにしましょう。
3.土地探しの前に決めておくべきこと
「どんな土地を購入したいのか」ということを明確に設定しておくことで、膨大にある土地情報の中から自分の希望条件に近いものを見つけやすくなります。
土地を探し始める前に決めておきたいポイントは大きく分けて3つ。
1)エリア
2)予算
3)その他の条件と優先順位
それぞれ解説していきます。
1)エリア
どのエリアの土地を購入するかにより、家を建てたあとの生活だけでなく、土地の購入・マイホームの建築・その後発生する税金など、支払う費用が大きく変化します。
商業施設が多かったり、複数の公共交通機関を利用できるエリアは、生活の便がいい分人気が高いため、土地の購入にかかる費用も高額になります。
一方で、少し郊外の土地であれば、人気エリアよりも安価で購入できることが多くあります。通勤や通学、日用品の購入といった、毎日の生活に欠かせない要素を満たせる条件であれば、人気エリアだけではなく少し離れた場所の土地も検討してみましょう。
2)予算
土地を購入する際には多くの資金が必要なため、確実な資金計画を立て、予算を把握しておくことが重要です。土地の売買代金だけでなく、不動産会社に支払う仲介手数料や登録免許税(所有権移転登記の際に必要)をはじめとした税金、住宅ローンを利用する場合の事務手数料など、さまざまな費用がかかります。
個人でも資金計画を立てることは可能ですが、ファイナンシャルプランナーに相談することで、無理のない予算組みが可能になります。
3)その他の条件と優先順位
理想的な生活にあこがれるあまり、あれもこれもと欲張った条件設定をしてしまう人も少なくありません。しかしながら、条件を細かく設定しすぎると、該当する土地がなかなか見つからず、いつまでたっても土地を購入できないということにもなりかねません。
土地を探すときは、絶対に譲れない条件は何なのかを念頭に、「他の要素を満たしていなくても、この条件がそろっていればOK」という優先順位を作っておくことをおすすめします。
4.土地探しの前に知っておきたい知識
不動産会社に依頼して土地探しをする場合であっても、不動産会社に任せきりにするのではなく、自分の希望する家を建てるためにはどのような土地が必要なのかを把握しておくと失敗が少なくなります。
土地の用途地域
土地の「用途地域」とは、建物の用途によってエリアを分けるために定められているものです。
低層住宅を建てるための地域である「第一種低層住居専用地域」や、中高層住宅(マンションなど)以外に病院や大学も建設できる「第一種中高層住居専用地域」、銀行・映画館・百貨店などを建てられる「商業地域」など13の種類に分類され、それぞれ建てられる建物の用途や規模が決まっています。
購入する土地の周辺に静かな環境を求めるのか、にぎやかな環境を求めるのかなどによって、どの用途地域の土地を検討する必要があるのかが変わってきます。アクセスや価格だけを見て決めてしまうと、生活環境に満足のいかない結果になってしまう可能性も多いに考えられるのです。
土地の募集資料には用途地域に関する記載もあるため、どの地域に該当するのかを把握しておくようにしましょう。
建蔽率(けんぺいりつ)と容積率(ようせきりつ)
土地には用途地域ごとに定められた「建蔽率」と「容積率」という2つの規定があり、その範囲に収まる面積の建物でないと建てられません。そのため、「少し小さい土地だけど、立地も形もいいし、土地いっぱいに家を建てれば大丈夫だろう」という発想から購入するのは危険です。
「建蔽率」とは、敷地面積に占める建物部分の面積(多くの場合で1階部分の面積)の割合を指します。例えば敷地面積が60坪・建蔽率が60%の土地の場合、建築できる建物の1階部分の面積は、最大でも36坪ということになります。敷地いっぱいに建物を建ててしまうと、隣の建物との隙間がなくなってしまい、生活環境が悪くなるだけでなく火事の延焼の可能性が高まるリスクもあるのです。
一方「容積率」とは、敷地面積に対して建てられる、建物の総面積(延べ床面積)の割合のことを指します。容積率は100%以上に設定されている土地もあります。
建蔽率と容積率を正しく理解していないと、土地を購入していざ家の設計をしようとしても、必要に合った面積の家が建たない可能性もあるため注意が必要です。
建築制限
建蔽率や容積率は、敷地面積に対して建てられる家の大きさを制限するものですが、土地に対して設定されている建築制限は他にもあります。
第一種・第二種低層住居専用地域には「絶対高さ制限」というものがあり、10mまたは12mを超える高さの建物を建築することはできません。同じく建物の高さを制限する「斜線制限」は、隣の土地や隣接する道路への採光を確保するために定められている制限です。
建物を建てる場合は、土地が道路にどの程度接しているかにも注意する必要があります。現在の建築基準法においては、建物を建てる土地は、幅4m以上の道路に2m以上接していなくてはいけません。
建築制限は土地によって異なり、すべてを自分で確認することは困難です。そのため、仲介に入る不動産会社だけでなく、家を建てるハウスメーカーや工務店などに対しても、自分が希望する建物を建てられるかを調べてもらうと安心です。
角地(かどち)と中地(なかち)
土地を探していると、交差する2つの道路に接している「角地」と、三方が囲まれている「中地」という2種類の土地に出会います。それぞれが持つメリットとデメリットを把握しておきましょう。
角地 | メリット | ・開放感がある ・玄関や駐車場の向きを選択できる ・人目につきやすく防犯性が高い |
デメリット | ・価格がやや高い傾向にある ・人目につきやすいためプライバシーが気になる場合がある ・中地と比較して人通りや車の往来が多い |
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中地 | メリット | ・角地よりも価格が安い傾向にある ・プライバシーを守りやすい |
デメリット | ・角地よりも防犯性が低い場合がある ・玄関や駐車場の向きが制限される ・角地よりも開放感が少ない |
家全体の開放感、防犯性、価格など、何を優先するかによってもどちらを選ぶべきかが異なるということを押さえておきましょう。
5.土地を決める際のチェックポイント
購入する土地を決める際は、価格や募集資料上の面積だけを見ず、「希望する家が建つか」ということを前提に検討します。その際に特に注意して確認したいポイントは以下の4つです。
・土地の形
・周囲との高低差
・境界線
・災害リスク
インターネット上や募集資料だけでは確認できない要素もあるため、不動産会社の力も借りながら必ずチェックしておきましょう。
土地の形
土地の形は、家を設計する際の自由度に大きく影響します。正方形や長方形の土地は、敷地面積を最大限に活用でき、家の自由度が高いため人気があります。
一方で三角形や台形のような形の土地は、家を設計する際に制約がかかってしまうだけでなく、庭や駐車場も作りにくいという側面があります。いびつな形の土地は比較的安価で売りに出されている場合も多いですが、場合によっては、希望する形や面積の家が建たないということも考えられるという点に注意が必要です。
周囲との高低差
周りの道路や土地との間に高低差がある土地を購入すると、追加工事が必要になる可能性があります。
周囲よりも低い位置にある土地の場合は、大雨のときなどに水が流れ込んでくる可能性があります。その場合は購入した土地に盛土工事を行い、周囲の土地や道路と同じ高さにする必要があります。
逆に周囲より高い位置にある土地の場合は、そのまま家を建てると土地が崩れてしまう可能性があるため、土を留めておくための擁壁工事が必要になるケースもあります。
高低差のある土地の購入を検討するのであれば、追加工事の必要性だけでなく、家を建てたあとに不便を感じないか・リスクがないかを確認しておくようにしましょう。
境界線
隣の土地との境界線は、必ず明確にした状態で購入・引き渡しを受けるようにしましょう。土地の境界線が不明確な状態で購入してしまうと、住宅ローンを組めなかったり、境界をめぐって隣地所有者とのトラブルに発展したりといったリスクがあります。
土地の境界線を確認するためには、地面に埋め込まれている境界標を探すほか、売主が確定測量図を保有しているかを確認する方法もあります。
災害リスク
土地を購入する際は、どのような災害が予測され、過去にどのような被害が出たことがあるかを必ず確認しておきましょう。市区町村のホームページでは窓口では、洪水や土砂崩れなどの災害に関するハザードマップが公開されており、一般の人でも閲覧できます。不動産会社が仲介する場合は、売買契約前に行う重要事項説明の時に説明義務がありますが、そこで初めて災害リスクを知り「リスクが高いのであれば最初から検討しなかった」となってしまっては、それまでの時間と労力が無駄になってしまいます。
災害リスクの低い土地に家を建てるためにも、魅力的な土地を見つけたら、できるだけ早い段階でハザードマップを確認し、万が一災害が起きた場合に予測される被害の程度も把握しておくといいでしょう。
6.土地探しの注意点
誰もが最初はインターネットや不動産会社からもらった募集資料を基に、土地を比較検討しますが、購入を決める前には必ず現地に足を運び、実際に自分の目で確かめるようにしましょう。募集資料上では条件がよく、希望の家が建ちそうだと思っても、実際に現地に足を運んでみるとイメージと違ったということも少なくないのです。
特に土地を取り巻く環境は要チェック。土地の目の前の電柱がゴミ捨て場になっていたり、前の道路の交通量が多く子育てするには危険を感じたり、近くで高い建物の建設が始まっていたりといった情報は、実際に現地を見た人でしか体感できません。
不動産会社による現地の見学の機会もありますが、可能であれば曜日や時間帯を変えて、数回に分けて見に行くことをおすすめします。
まとめ
理想の家を建てるためには、土地探しを慎重に行う必要があります。多くの人が不動産会社に依頼し、条件に合った土地を紹介してもらいますが、土地に関する制限やチェックポイントをあらかじめ知っておくことで、スムーズで失敗のない土地購入につながります。
自身がイメージする「いい土地」を明確にし、優先順位をつけたうえで、インターネットや不動産会社・ハウスメーカーを上手に活用しながら、理想とする土地探しを実現してください。