2023.02.14
土地の購入
【土地権利】所有権と借地権はどう違うの?購入時におすすめなのはどっち?
戸建て物件のパンフレット広告などに、土地の権利形態は「所有権のみ」と記載されているのを見たことがある人もいるでしょう。
不動産を購入するのが初めての人にとって馴染みのない文言のため、「どのような意味なの?」「所有権のみは良いことなの?」などと分からないことが多いと思います。しかし、分からないからと放置していると後悔してしまうかもしれません。
土地や戸建ての購入で注意すべき点は、立地や周辺環境だけではなく、どのような権利が付いているのかも確認する必要があるということです。
そこで本記事では、土地の所有権と借地権の基本的な内容や、メリットとデメリットについて紹介します。
土地の所有権とは?
土地の権利形態に、「所有権のみ」と表記されていることがあります。土地購入の経験は一生のうち何度も経験するものではないため、見慣れない文言を見てもピンとこないのではないでしょうか。ここではまず、所有権の基本的な内容について説明します。
土地の所有権
所有権とは「自由に所有物を使用、収益、処分ができる権利のこと」とされ、民法206条に定められています。そのため土地の所有権とは、所有者が土地を自由に利用できるという意味のことです。
具体的には、自分で家を建てて使用したり、他人に売ってお金を得たりすることができます。他人に占拠された場合には、返還請求や妨害排除の請求も可能です。建築基準法や都市計画法などの法令の制限に反しなければ、地上だけでなく地下も利用できます。所有権は土地や建物など不動産だけに該当するものではなく、物であれば対象です。
土地の所有権者は法令の制限に反しない限り、自由に利用できることが分かりました。では、具体的にどのような法令によって制限されるのかを見ていきましょう。
土地の所有権が制限される法令
土地の所有権が制限される法令は、以下が挙げられます。
・建築基準法
・農地法
・国土利用計画法
・都市計画法
・土地区画整理法
建築基準法
建物を建てる際に最低限守るべき基準を定めた法律です。敷地や道路、用途、建ぺい率、容積率などの基準を示しています。
農地法
土地利用の調整や優良農地の確保、耕作者の地位の安定などを図ることを目的とした法律です。農地を売ったり買ったりする際は、農業委員会の許可が必要になります。
国土利用計画法
国土の利用や保全を推進することを目的として「土地取引の規制に関する措置」を定めた法律です。そのため、一定の土地取引について都道府県知事に届け出が必要であり、地価の上昇のおそれがあるときには、土地売買等の契約に関する勧告を受けることがあります。
都市計画法
快適に生活できる環境づくりを目的として、街づくりのルールを定めた法律です。都市を住居系、商業系、工業系に区分し、用途地域として定めています。どの用途地域に属するかによって、建ぺい率、容積率、高さ制限の内容が違うので注意が必要です。
土地区画整理法
土地や公共施設などの有効利用を目的として、公共施設の整備改善や道路新設などの手続きを定めた法律です。区画整理地内は所有権が定まっていない場合が多く、事業完了まで所有権が認められないものもあります。そのため抵当権を設定できず、住宅ローンが組めません。
宅地造成規制法
宅地造成による崖崩れや土砂の流出による災害を防止するための法律です。土地が宅地造成工事規制区域内にある場合、造成工事の実施前に都道府県知事の許可を受けなければなりません。造成工事の内容は、切土・盛土などで傾斜のある土地を平らにするなどです。
戸建ての権利は土地・建物それぞれ
戸建てを購入する際は、土地と建物の権利が別々に扱われるので、土地と建物それぞれが権利を取得することになります。その際に注意したいのが「借地権」です。借地権付き建物という文言で販売され、土地の使用権は借地権、建物は所有権で購入することになります。契約期間や更新期間、その他規制による制限が多いため、正しく理解しなければトラブルに発展するおそれが高いです。
購入後のトラブルを避けるために、借地権について解説します。
もう1つの権利形態である借地権とは?
借地権とは、土地の所有者から借りることができる権利です。借地権を取得することで、その土地の上に家を建築できます。そのため、地上に建っている家の所有者と土地の所有者が異なるのが特徴です。ここからは、借地権の特徴や3つの種類について解説します。
借地権の特徴
借地権の土地ではあくまで土地を借りているだけなので、自由に土地を貸したり売却したりすることはできません。
また、借地権が設定されている土地上に家を建てたあと、転勤や住み替えなどの事情で家を売却したいと考えても、土地の所有者からの承諾がないと難しいです。
さらに、家の増改築についても土地所有者に無断で行うことはできません。増築は床面積を増やすことや、敷地内に他の建物を建築することが該当し、改築は家を壊して建て直すことが該当します。
老朽化した部分を修繕するような軽いリフォームであれば問題ありませんが、土地を借りる時に契約した内容と異なる目的で工事を行う場合は、承諾が必要です。なお、承諾が得られたとしても土地所有者に別途承諾料などを支払う可能性があります。
借地権が設定された土地に家を建てる場合は、借地料を毎月支払わなければいけません。借りている間はずっと支払いが発生するので、注意が必要です。一方、土地所有者が支払う土地にかかる税金は支払わなくて済みます。
借地権には種類があり、購入を検討している土地が借地権の場合は、その種類について知っておくとよいです。しかし内容がやや難しいので、メリットとデメリットだけ知りたい人は軽く流してください。
借地権の種類
借地権の設定された土地は土地と建物の所有者が異なるため、権利関係が複雑です。そこで、借地借家法という法律で借地権を「旧借地権」、「普通借地権」、「定期借地権」の3つに分けています。
さっそく詳しく見ていきましょう。
旧借地権
旧借地権は、現在の借地借家法が制定されるより前の法律をベースとした借地権です。そのため、1992年7月31日より前に借地権付きの土地を購入した場合は、旧借地権が適用されます。
旧借地権の契約期間は、期間の定めがない木造で30年、鉄骨や鉄筋コンクリート造の建物で60年となっており、期間の定めがある場合は木造で20年以上、鉄骨や鉄筋コンクリート造の建物で30年以上と存続期間が定められていました。
賃借人保護が重視されているため、土地所有者が返してほしい場合でも正当な理由が認められない場合は、更新拒絶や明け渡し請求はできないとされています。つまり旧借地権は、契約終了後も更新により土地を借りることが可能であり、借りている側に有利な権利でした。
期間の定めなし | 期間の定めあり | |||
---|---|---|---|---|
契約時 | 更新時 | 契約時 | 更新時 | |
木造 | 60年 | 30年 | 30年以上 | 30年以上 |
鉄骨・鉄筋コンクリート造 | 30年 | 20年 | 20年以上 | 20年以上 |
普通借地権
普通借地権は、1992年8月から施行された借地借家法をベースとした借地権で定期借地権に該当しないものです。契約期間は30年以上で、期間の定めがない場合は30年になります。借地権と同様に更新でき、1回目の更新で20年以上、2回目以降は10年以上です。旧借地権との違いは、建物の種類による契約期間の差がなくなったことにあります。
土地所有者は正当な理由がない限り更新拒絶や明け渡し請求は、旧借地権同様にできません。ただし、正当な事由の内容がある程度明確化されたことや、立ち退き料の支払いによって更新を拒否できるようになり、従来よりも容易に土地所有者が土地を取り戻せるようになりました。
普通借地権 | |
---|---|
更新 | あり |
期間 | 30年、契約で30年超えも可能 |
目的 | 制限なし |
手続き | 書面は必ずしも必要ではない |
定期借地権
定期借地権は、普通借地権と同様に新しく施行された借地借家法をベースとした借地権です。土地所有者が土地をなかなか取り戻せない問題を見直し、安心して貸せるように創設されています。種類は、一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権の3つです。一般定期借地権は50年以上の契約期間で契約できますが、更新はなく、契約期間が過ぎたら更地にして土地所有者に返還しなければなりません。
定期借地権 | |||
---|---|---|---|
一般定期借地権 | 事業用定期借地権 | 建物譲渡特約付借地権 | |
更新 | なし | なし | なし |
期間 | 50年以上 | 10年以上50年未満 | 30年以上 |
目的 | 制限なし | 事業用建物のみ | 制限なし |
手続き | 公正証書等の書面 | 公正証書 | 物を土地所有者が譲り受ける旨の特約 |
所有権で土地を購入するメリットとデメリット
ここまで、所有権と借地権の基本的な内容を解説しました。両方の具体的なメリットとデメリットを把握して、土地購入の際にどちらが良いのか判断するための参考にしてください。
メリット
所有権で土地を購入するメリットは、以下の4点です。
・自分の資産になる
・借地料が不要
・法令による制限の範囲内で自由に増改築が可能
・売却や賃貸が自由
所有権のある土地を購入するメリットは、自由に利用できる点です。家を建てる場合、法令上の制限の範囲内で好きなデザイン・間取りで建築することができます。建物の構造変更も建て替えも容易です。借地権と異なり自分が所有者になるので、毎月の借地料の支払いや更新料は不要です。長期的な目線でみたときに、借地料の有無は無視できない金額になります。
さらに所有権は、不動産として資産価値が高いことも所有権の魅力です。そのため、住宅ローンの審査にも通りやすくなります。
デメリット
所有権で土地を購入するデメリットは、以下の2点です。
・借地権よりも購入費用が高い
・納税が必要
土地所有権は、借地権よりも価格の高いケースが多いです。また、固定資産税や都市計画税がかかるので、維持費がどのくらいになるのか調べておくと良いです。
借地権で土地を購入するメリットとデメリット
続いて、借地権で土地を購入するメリットとデメリットを紹介します。
メリット
借地権で土地を購入するメリットは、以下の2点です。
・所有権よりも購入費用が安い
・土地にかかる税金の支払い義務がない
繰り返しになりますが、所有権の土地を購入するよりも借地権の土地を購入するほうが安いです。土地の所有者ではないので、固定資産税や都市計画税などの納税義務もありません。ただし、家にかかる税金は入居者負担です。
デメリット
借地権で土地を購入するデメリットは、以下の4点です。
・自由に利用できない
・借地料がかかる
・更新料がかかる
・資産価値が低い
借地権の土地は制限が多く、土地所有者の承諾がなければ、自由に売ったり貸したりすることはできません。増改築の際も、承諾が必要です。また、毎月借地料の支払いが必要であり、更新時期には更新料が発生するので、住み続けている間はこれらの支出が負担になります。さらに定期借地権であれば、更新することはできないので注意が必要です。不動産としての資産価値が低いため、住宅ローンを組めない場合もあります。
予算の都合上、割安の不動産を購入したい場合はおすすめですが、将来的に自由に家の建て替えや売却、賃貸を検討しているのであれば所有権付きの土地が良いです。
土地の所有者移転登記の必要性と手続き方法
所有権付きの土地を購入したら、所有権移転登記を行う必要があります。ここからは、登記の必要性や手続きについて紹介します。
登記の必要性
所有権移転登記は、購入した不動産の所有者が自分であることを証明するために必要な手続きです。万が一手続きをせずに放置していると、せっかく購入した土地の所有権を第三者に主張されてしまうといったトラブルが起こりかねません。また、所有権を証明できなければ、売却することも賃貸に出すことも難しくなります。所有者が誰なのか分からない不動産を購入するのは、買い手にとってリスクを伴うからです。
所有権移転登記をしないデメリットはそれだけではなく、住宅ローンを組むこともできません。登記をせずにいることのメリットは何もないので、安全な不動産取引を行うためにも知識を備えておくことが大切です。
名義変更に必要な書類を用意する
不動産取引では、決済引渡し完了後に登記手続きを行います。正確には不動産会社が提携している司法書士が実際の手続きを行うことになりますが、売主と買主の双方に準備すべき書類があります。
売主が準備する書類
書類 | 取得場所 |
---|---|
登記識別情報または登記済証 | 登記時に法務局が発行 |
固定資産税評価証明書 | 市区町村役場 |
印鑑証明書と実印 | 市区町村役場 |
住民票 | 市区町村役場 |
本人確認書類 | 免許証やマイナンバーカードなど |
買主が準備する書類
書類 | 取得場所 |
---|---|
印鑑証明書と実印 | 市区町村役場 |
住民票 | 市区町村役場 |
本人確認書類 | 免許証やマイナンバーカードなど |
所有権移転に必要な費用
所有権移転登記に必要な費用は、以下の2つです。
・登録免許税
・司法書士報酬
登録免許税は、登記手続きを行う際に納める国税です。土地と建物の両方を登記するのであれば、それぞれ登録免許税を支払う必要があります。登録免許税の計算方法は、固定資産税評価額×2%です。ただし軽減措置があるので、要件を満たせば納税額を抑えることができます。
先述しましたが登記手続きは自分で行うのではなく、司法書士の代行が一般的です。司法書士報酬の金額は大体5〜10万円です。
マンション購入時の所有権は?
ここまでは土地や戸建ての所有権について説明してきましたが、マンションの所有権についても簡単に解説します。マンションは部屋だけの権利ではなく、実は3つの権利を取得することが可能です。
区分所有権
区分所有権とは自分が購入した部屋(専有部分)の権利のことで、自由に使用できるのはもちろんですが、リフォームをすることも可能です。専有部分の所有者を区分所有者といいます。
共有部分の持分権
共有部分とは廊下・階段・エントランス・エレベーターなど、マンションに暮らす人たちが利用する部分のことです。マンションの専有部分を購入した全員が、共有部分に対する持分権を保有します。
敷地権
敷地権とは、専有部分を購入した人が持つマンションが建っている土地に関する権利のことです。マンションを購入すると、その土地の権利は別の誰かが持っていると勘違いされることがありますが、マンションを購入した全員が持分割合に応じて土地の権利も持っています。
よく調べてから土地購入の検討を
所有権付きの土地は、購入後も自分の意思で自由に売却したり、賃貸に出したりすることが可能です。もう一方の権利である借地権は、借地料や更新料を支払うデメリットはありますが、所有権付きの土地を購入するより安くなります。自由に家を建て利用したい場合は所有権、好立地な場所に格安で住みたい場合は借地権を選ぶと良いです。
土地や戸建てを購入する際は、どのような権利が付いているのか確認することは重要です。よく分からないまま購入した結果、後悔することのないように気をつけてください。