2024.09.16
不動産ニュース
管理適正化へ指針等改定
国土交通省は6月7日、マンション管理(以下、管理)に関連する複数のガイドライン等の策定、改正を行い、詳細を公表しました。管理組合の適切な運営や長寿命化の実践といった管理の適正化へ向け、同省の有識者会議で検討した成果を明文化しました。同日公表したのは、既存の指針を再構成する形での「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」策定と、適切な修繕積立金の確保に向けた「長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」及び「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の改定、“2つの老い”への対応を図る「マンション標準管理規約」の改正です。
新たに策定された「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」は、従来の「外部専門家の活用ガイドライン」(17年策定)を基に内容を刷新したものです。
「管理者」を外部に委託する場合、以前は主にマンション管理士などの専門家が想定されていましたが、近年は役員の担い手不足などから管理業者が管理者となる事例が拡大。管理業者による管理者方式は、一定のニーズやメリットはあるものの、「区分所有者の医師から離れた不適切な管理、管理組合と管理業者との利益相反の発生」(国交省)など、区分所有者にとって不利益が生じる恐れがあります。
そこで同省は23年10月、有識者によるワーキンググループ(WG)を設置し、外部に管理者を委託する際の留意事項等を整理。区分所有者以外の者が管理者に就任する方式を「外部管理者方式」と定義すると共に、「管理業者管理者方式」は「外部管理者方式」の形態の一つと位置付け、既存の指針に独立した「管理業者管理者方式」の章を設けました。
新たな指針では、「管理業者管理者方式」を導入する場合のプロセスや説明のあり方などについて、必要な規定を整備。国として、「管理業者管理者方式」の望ましい活用に向けた考え方を示しました。
「長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」及び「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」改正では、大規模修繕工事の適切な実施へ向け、WGの議論を基に、修繕積立金の安定的な確保を促すための基準を示しました。
要点は、修繕積立金の段階増額積み立て方式における月当たりの徴収金額の引き上げ幅です。均等積み立て方式を基準とした場合に「計画の初期額は基準額の0.6倍以上、計画の最終額は基準額の1.1倍以内」が適切との考え方を、両指針に明記しました。この場合、最終額は初期額の約1.83倍が上限となります。
同省は前提として、「均等積み立て方式が望ましい」との見解を示しています。他方、分譲時に提示する費用を抑えるために段階増額積み立て方式が採用され、予定通りに徴収額を引き上げられず修繕積立金が不足するリスクが指摘されていました。そこで同省は、実現性のある基準を示すことで修繕積立金引き上げの早期完了を促し、マンションの長寿命化につなげたい考えです。
各指針と併せて、「マンション標準管理規約」も改正しました。建物の高経年化と居住者の高齢化という“2つの老い”への対応が主眼です。同規約と併せ、管理計画認定制度に関しても検討していたWGの取りまとめを反映しました。
具体的な改正項目としては、区分所有者の高齢化や代替わりを想定し、組合員・居住者名簿の作成・更新に関する仕組みや、所在等が判明しない区分所有者への対応に関する規定を整備。適正な修繕と管理を維持するため、修繕積立金の変更予定等の可視化、総会・理事会資料等の保管についても記載しました。更に社会環境の変化を踏まえ、EV(電気自動車)充電設備の設置推進等に向けたコメント拡充も行いました。
今回策定、改正された指針等は、いずれも同省のホームページで閲覧できます。